「失礼する」
【紺青冬樹】コンジョウフユキ
ミュータント。熱を上下させる事が出来、高熱で溶かしたり逆に冷凍保存したりと、応用が利く。ただし熱に耐性があるわけではなく、自分の能力で自分が被害に遭う事も。二つ名は『氷熱師』
結構熱い性格で行動力があり、運動ならヤマト以外には勝てると自負する、自他共に認めている運動馬鹿。が、最近はそれを発揮出来る状況が無い。
あまり目立つ機会は無いがゲームには並々ならぬこだわりがあり、自宅にはバーチャルゲームなどの専用設備まである。ヤマトにゲームをプレゼントした張本人でもある。
勉学以外なら本人のスペックは高いのだが、ヤマトにパシられたり大事な場面でズッコケて台無しにしたり(作者に設定を間違えられたり)と、とにかく不遇。
余談だが、彼の家での地位はロボット、人工知能を含めても最も低い。
突然だが、ミュータント同士が喧嘩をするとどうなる? 答えてみてくれ。
…………ふむ、まあ何となく予想していた答えだ。数人は予想の斜め上だがな。
まあ、引き伸ばしても意味は無い。とっとと答えに行こう。
「でえええぇぇぇっ!? やめろやめろ! こっちに飛び火してんだよ馬鹿野郎!」
「だあァ! 外野は黙ってやがれ! 俺達の問題なんだ!」
「お前に共感するのは心底吐き気がするが、全くもってその通りだ。外野は黙って離れていろ」
「先生! せ〜ん〜せ〜い〜!」
まあ、大惨事になるわけだな。こんにちは諸君、『傍観者』だ。『旅行者』の印象はどうだったかな?
一応、彼はいつも居るべき場所があるんだよ。そもそも、彼はミュータントではないらしいしね。何だったかな? 確か妖怪、妖の類だった筈だ。このご時世に珍しい物だよ。
ま、今その話は良い。一応最初の質問を始めた理由を説明させてもらうよ。アレについてはいつか話そう。
「通れないね」
《そろそろ時間なのですが……》
「教室はこの先だよ」
《回り道という案は不採用ですか》
黒江ヤマト、彼の視点の先に件の大喧嘩があるのだ。なんとここは狭い廊下の為、流れ弾の如く飛んでくる炎と強風で、反対側の目視も難しい。
何故ヤマトが無傷かは何となく察して頂けるだろう。ミュータントの能力で常識を逸脱した動体視力と反応速度で、全て避けているだけだ。途中まで一緒に居た冬樹は避けれずに手を少々火傷した為、少し前に進行方向と反対の位置にある保健室に向かった。
さて、とりあえずヤマトはこの先に行きたいのだが、目の前の状況を見ると難しいと思う。遠回りすれば目的の所に行けなくもないが、どうやらヤマトはそのつもりが無いようだ。
……どうする?
「せいっ」
助走をつけて無理矢理突破。速度が出ていたので風が発生し、炎を退けてくれたのでヤマトはほぼ無傷だ。途中で何かにぶつかったがどうでも良いだろう。
《……まあ、分かってました》
その後、何事も無かったように歩いていった。後ろで既に喧嘩が静まっているので、別に突破しないで待ってても良かっただろうに……
いや、待て。もしかしたら、ヤマトが突破したからこそ静まっているのかもしれない。もしかして、さっきぶつかったのは……
さて、無事? に席についてゲームを始められたヤマト。見回してみて、見える知り合いは近衛翠だけだ。知り合いと言うべきかは謎だが……
その内教師が現れ、連絡の途中で冬樹が帰ってきた。火傷は何故かすっかり治っており、勉強に支障は無いとの事だ。良かった良かった。
「さて、授業開始の前に恒例行事を始めよう」
教師がヤマトを見る。
「そのゲームはなんだ、黒江」
「脳トレが駄目なので、今回は推理ゲームにしました」
「だからと言ってなんだ。通常の授業に推理は必要無い」
アウト。
「では、授業を始める。各自端末を用意しろ」
授業開始、退屈なのでバッサリカットする。
冒頭の出来事は結構噂になったらしく、後で当事者である二人組とヤマトは帰り際に事情を聞かれた。無論廊下で暴力を振りまいた二人組は拳骨より痛い親の説教が待っていたそうだが……
冬樹は大した事が無かったので帰され、ヤマトは「わざわざ突っ込むなど阿呆」と言われてから帰らされた。教師の顔が心底疲れていたように見えたが、やはりヤマトの相手は疲れるのだろう。
というわけで、家に帰ってきたヤマト。
「ヤッホー」
エリーが居たのはまあ予想出来た。
「すまない、邪魔している」
友人が居たのは予想外だが。しかも肩に鳥が乗っている。
「……どなた?」
《秋宮桔梗さんです。エリーさんのご友人ですが、ヤマトと直接会うのは初めてのはずです》
「秋宮桔梗だ。よろしく頼むぞ、黒江」
「あ、名前は私が教えたんだよ」
ああそうかい、と呟くヤマト。桔梗と言う女性は、ヤマトの移動の邪魔にならぬように場所を移動した。鳥が何気にバランスをとるようにしていたのが愉快だった。ボールに乗せてみたら楽しそうだな、と考えたが……流石に怒られるので自重する。
《しかし、今日はどうしてここに?》
「エリーに誘われた。ただそれだけだが、エリーの話に何回も出て来たお前に興味があった」
「だから来た、と。生憎だけど何もないよ」
「持て成しも無いのか?」
《すみません。あれば出すのですが、余裕が全く無いので……》
結構切り詰めているのだが、それでも他者に何かを渡す余裕なんてない。ゲームは毎日しているので、電気代がかかりそうと思うだろう? 残念、今は自家発電の時代なのさ。
「む、それは悪い事をしたかな? 次からは何か手土産を用意するよ」
「お気遣い無く」
「あ、ヤマトが要らないなら私が貰おうかな?」
「部屋の主への手土産を友人に渡してどうする」
呆れ顔。鳥も何故か妙な目でエリーを見つめていたが、人の言葉を理解していたりするのか?
「……その鳥は?」
「私の友達さ。名前は無いが、可愛い奴だよ」
友達と言われたその鳥は、少し周りを見回してからヤマトの方を向き、短く一鳴き。
「こんにちは、だとさ」
「え? あ、こんにちは」
エリーが何故かクスクス笑っている。何が愉快なのかは知らないが、とりあえず放置。甕覗が勉強を開始すると言うので、その場を甕覗に任せて自分の部屋に行った。
いつも通りゲームをしていると、不意に部屋がノックされる。
「どうぞ」
「失礼する」
初対面で間違い無いはずの桔梗が、何故かヤマトの部屋に。部屋の場所は甕覗に聞いたのだろうが、来る理由が分からない。
「何か用?」
「ああ、大した事ではないから安心してくれ」
そう言う時に限って、さらりと重要な事が言われる事多々あり。油断はせずに聞けよ。なんて言ってもヤマトに聞こえるわけではなく……
「ま、早めに済ませてね」
「そうするよ」
適当な場所に座り、肩の鳥の物であろう餌を手の平に乗せる。それを確認した鳥も場所を肩から移し、餌をついばみ始める。ヤマトの目の前で食事をされているが、特に零さないなら気にしないらしい。やがて桔梗が口を開く。
「お前は、何故外国人を許容しているんだ? 私が知っている奴らは皆、エリーを迫害していたのだが」
「逆に聞くけど、何で聞くのさ」
「私がエリーの友人だからだ。友人を守るのは友人の役目ではないか?」
少々の沈黙。やがてヤマトが口を開けた。
「まだ知り合ったばかりだから、言う理由は無いかな」
ごもっとも。
「でも、外国人が嫌いな理由は無いよ。これでいい?」
「……それが聞ければ充分だよ」
桔梗が立ち上がる。
「急な質問で悪かった。今日はもう失礼するよ」
「あ、じゃあ質問するけど良いかな」
ヤマトが背中を向ける桔梗に問う。
「その鳥、どこで見つけたの?」
「……怪我をしていたから保護した。そうしたら懐かれたのさ」
「そう」
程なくして、ホログラムで登場した甕覗により桔梗が帰った事を聞いたヤマト。何とも変わった人物だったが、ヤマト自身が変わっているので特に気にもならず。
《あ、エリーさんも帰りましたよ》
「……早いな」
まあ、そんな事でも一切気にしないのがヤマトだが……
「じゃ、今日はもう寝るよ」
《了解しました。お休みなさい》
……おや、かなり早いがもう寝るらしい。仕方無いので、私も今日は寝る事にするよ。少し疲れているのでね……
以前携帯のメールに貯めた小説を二作同時進行なんて試した事があったが、執筆速度に変化が無かったという不思議な出来事があった空椿です。三作になると流石に分かりませんが。
秋宮桔梗さんの登場です。エリーの友達として登場しましたが、だからといってエリーが居ないと登場しないわけではありません。彼女は今後も登場します。
ヤマトと同じく南柊に通ってますが、一応先輩なのでヤマト達と出会う事はあまりありません。あと、肩の鳥はインコを想像して頂ければ良いでしょう。喋りませんよ?
さぁて、次はどんな人を追加しようかな? 私のキャラ設定は本当に際限なく出て来るので、こういう場面では困らなくて良いですね。代わりに設定をよく忘れて空気キャラ化しまうんですが。メモ癖、頑張って付けます。
皆様の暴走劇参加のまとめですが、十話か十五話の投稿に合わせて活動報告に書かせて頂きます。意見が来るかと言われれば多分来ないと返せますが、一応……
いや、『参加するよ!』って言ってくれる人が居れば歓迎しますけどね? まだほとんどそんな声ありませんが……ね。
ま、来るまで気長に待ちます。待つのは苦手ですが……
では、今回はこれにて。次回をお楽しみに!