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「……よし」

【エリー・クロムイエロー】


 ノーマル。外国人の子供で気が強く、他者の迫害に負けずに暮らしている。母は居らず義父と二人暮らし。養子。

 本来の親が迫害からエリーを遠ざける為に、当時唯一信頼出来た現在の父に預けられ、少し環境は良くなったらしい。エリーの名が相当気に入っており、自己紹介や名前を記名する場面でも「エリー」としか書かず、一部機械には『エリー・エリー』として認識されてしまっている。一応、その場合は訂正している。


 外国人の為に学校などに通えないが、ほぼ毎日ヤマトの家に転がり込み、甕覗に勉強を教えてもらってその代わりをしている。非常に柔軟性の優れた頭をしており、連想ゲームをさせると止まらない。なぞなぞが好き。

 冬樹にライバル心に近い敵意を持っている。


 そのまま一泊したヤマト。起きて少しした後、持ってきた携帯に移動してきた甕覗からエリーが帰った事を聞いた。

 でも、せっかくなので今日一日は紺青家のお世話になる事にした。どうせヤマトの部屋には誰も居ないから、全く問題は無い。

 現在時刻は登校直前だ。基本的に学校に荷物のほとんどを置いたままであるヤマトの特徴的な所持品は、愛用のパーカーと三台になったゲーム機だけだ。ゲーム機専用鞄まである力の入れようだ。

 対する冬樹は色々持っている。授業に必要な端末、早弁の為の手作り弁当、昼食時の為の人口知能さんの弁当、暇な時に遊ぶ為のゲーム機、道具諸々。そして真新しい携帯。

 とにかく言いたいのは、「お前ら二人の力の入れ方は間違っている」という事だ。私は直接言えないのだが。

 そんな二人に付き添うように一緒に靴を履いている人物が二人。それは冬樹の両親だ。


「皆、忘れ物は無い?」


「無い」

「ゲームだけだし大丈夫」

「…………うむ」


 冬樹の家は共働きの為、昼は揃って居ない。父は無口だが堅実で目立たぬ慈愛があり、母はさり気ない気遣いで家を支える。そんな冬樹の母はそれ故精神的に脆いのだが、冬樹の家にいるロボットがそれをアシストしている。そんな家を、一人の人口知能が支えている。

 父母の名は言わないが、ロボットの名は『濃藍』、人口知能は『猩々緋』と言う。ただ、猩々緋は少しばかり性格に難があった。


「行って来ます」


「はい〜、怪我に気を付けて下さいね〜」


《毎度のんびりした話し方ね。もう少し早く喋ってくれないとイライラしますわ》


 濃藍の口調は伸びる。そんなゆっくりとした話し方を、猩々緋はあまり好いていない。高圧的な態度をしながら濃藍に言った。


「と〜、言われましても〜……」


「猩々緋、ヤマト君の前だ」


《……後で話しましょう》


「分かりました〜」


「……悪いな、朝から」


「別に?」


 ……紺青家も、個性的な面子が揃っているようで。







 猩々緋は家、冬樹の携帯、冬樹父の家庭用携帯の三ヶ所を基本的な居場所としている。今は冬樹の携帯で……


《冬樹、また黒江ヤマトにゲームを勝ったのですか? 私の資金管理に面倒な横槍を入れないでほしいのですが》


《まぁまぁ猩々緋さん。まだ子供ですし》


《子供だからこそ間違った育て方をしたくは無いのですよ。それすらも察せないとは、旧式の人口知能は可哀想ですわね》


《……ううむ、やはり私は嫌われてますね》


 旧式の機械、古臭い物を否定する考えがかなり顕著で、甕覗をそんな理由で下に見ている。

 それと、誰に対しても高圧的なのを抜きにすれば、紺青家の将来を案じていたり何気に放っておけない気質だったりと良い性格をしている。アクが強いと言うべきか……?


「猩々緋、甕覗はヤマトの」


《分かっていますわ。だから今はもう何も言いません》


「……甕覗を悪く言わないでよ」


《これが私だと、理解して頂戴な》


 流石にちょっとキツいかもしれない。


「まあそれは良しとしてだな……」


 以降は特別な会話も無く進むので、イベントがあるタイミングまでのんびり待っていてくれ。

 何故分かるかって? さあ、何故だろうね。自分達で考えてくれたまえ。私はそれを傍観するよ。







 特別な出来事があったのは教室。

 いつものように教師が教室に入ってきて、多少のイザコザの後の朝の連絡だ。


「さて、まずはお前らに連絡したい。少し重要な事だからな、ゲームをしている奴も遊び道具を出している奴も本を読んでいる奴も窓の外しか見てない奴も全員話を聞くように」


 ……一息付きながら話してほしい。ゲームをしている奴は無論ヤマトだ。多分この後没収される運命にあるだろう、というか絶対に没収される。


「うむ、最近ミュータントによる犯罪がこの付近で発生していてな。ミュータントの奴らは自分達で捕まえようなんて考えず、真っ直ぐ家に帰ってくれ。無論ノーマルもな? だから俺も真っ直ぐ帰る」


 少しだけ笑い声が発生した。


「生活を脅かす狼藉者は仕方無いが、国の偉い奴らが解決してくれるのを祈ってくれ。以上だ」


 さてと、と呟く教師。


「黒江ヤマト、紺青冬樹、近衛翠。今手に持っていた物について順番に話せ」


「どうせいつもと変わらない事言うと思って無視決め込むつもりでした」

「ヤマトに同じく」

「これは参考書です。先生お得意の抜き打ちテストに備えて勉強中でして」


「ヤマトと冬樹は大人しくそれを出せ。翠は納得出来るから許せるが、もう授業が始まる。それはしまってくれ」


「感謝します」


 翠と呼ばれた少女…………少女? いや少年か? とにかくその人物は何を逃れた。ヤマトと冬樹は結局没収されたのだが、それはどうでも良いだろう。

 翠が気になるので、軽く説明しよう。彼…………彼女? はヤマトのクラスメートであり、ヤマト、冬樹との特別な関係は無い。一人図書館と呼ばれる程そこかしこで本を持ち歩いており、人付き合いはそこそこ。そんな翠もミュータントだそうだ。


「さて、気持ちを切り替えて授業を始める。今回は翠ご所望の抜き打ちテストだぞ」


 うへ。

 これは翠が墓穴を掘ったわけでは無く、当初から予定していただけである。嫌がる生徒は華麗にスルーし、開始の合図を出した。端末に転送されてきた問題集を前に、絶望的な顔をする皆。では、テスト終了後に素早く出た採点の結果の点数だけ伝えよう。







 ヤマトは五十点。ゲーム知識恐るべしと言えようか。しかし、何とも言えない点数だ……

 冬樹は十二点。つまり赤点。残念。

 何となく名前を出したのでついでに言おう。翠は九十八点とクラスの平均点を上げまくる奴だったが、ヤマトと違いこちらは書物の知識だろう。参考書のような物も持っているらしいし。

 ちなみに、このテストをエリーにやらせると七十点前後を出すと思われる。勉強好きは恐るべきだな……


「ふぅむ……平均点が四十を下回っているな。正式なテストでの他のクラスとの差が心配だ」


 翠を始めとした数人が平均点をグイッと上げているのだが、冬樹を筆頭に平均点をグイッと下げている人物の方が圧倒的に多いのが悩む所だ。ヤマトは丁度中心なので話には含まれない。


「……よし」


 先生が良い笑顔をする。


「点数が五十点未満の奴は宿題を倍にしてやろう。しっかりやれよ?」


「先生! 弁解の余地はありますか!?」


「無い。頑張って勉強してくれ」


 良かったなヤマト。五十点以下と言われていたら含まれていたぞ。







 ……さて、目が死んでいる冬樹は放置して、休み時間に学校内を歩くヤマト。落ち着いてゲームが出来る場所が欲しいらしい。

 屋上は開放されている為生徒が多く、中庭は元から人通りが多い。かと言ってその辺の茂みや影なんぞに居座るつもりも無く、良い場所は一見すると無いようだ。

 結局流れ着いたのは図書館。静かにする必要はあるが、イヤホンを付ければ大分良くなるだろうとの考えだ。ゲームに関してなら用意周到なのだがな……

 そうして席に座り、ホラーゲームを始めるヤマト。正面には一冊の本が立てられている。


 …………いや、別の人が読んでいるだけだが。目の前の人物は、どうやら今日は縁のあるらしい翠だ。

 お互い話しかける事は無く、ゲームと本の世界に没頭していた。ここで似た者同士疑惑が浮上する事に。

 まあ特に何もイベントは無いが、気になる事ならある。翠は読み終えた本を近くの鞄に入れ、別の本を出して読んでいる。ここまでは良い。読むスピードが早くて、気がついたら別の本を読んでいる。これもまあ良い。

 気になるのは、それが十三冊目という事か。鞄はどう押し込もうが三冊が限界だろうし、ミュータントなのかと少し気にはなる。

 この世界ではなんら不思議ではないというか当たり前なのが、なんとも言えない所か……


 と言うわけで、職員室から翠の情報を持ってきた。必要な部分を抜き出して読ませてもらうとしよう。ああ、おまけで冬樹の情報もあるから、同時公開と行こうか。

 翠はミュータント。二つ名は『書物管理人』だそうだ。長い。手持ちの鞄を媒介に図書館を呼び出して自由に読めるらしい…………と、これだけで終わらせるわけにもいかない。あまりに限定的過ぎて流石に疑問に思う。おそらく何らかの空間に繋げる能力で、そこが図書館のような場所なのだろう。

 さて、教師に見付かる前に借りた物を戻しに行くとしよ……


「どうせ貴様だと思ったぞ、『傍観者』。勝手に下級生の資料を持ち出すな、馬鹿者」


 ……すまない、私自身の教師に見付かってしまったようだ。悪いが、数日は会えないと思ってくれ。では、失礼する。

「……貴様は私から逃げられると思っていたのか?」


 滅相もない、と。やはり索敵に長けた教師は相手にはしたくない物だな……







 ああ、代理は立てておくから安心してくれよ。


 傍観者さん捕まりました。彼も一人の生徒だったんですね……というわけで空椿です。


 濃藍と猩々緋、それと翠が登場。どんどんキャラが増えますが、ヤマトを除いたキャラはあまり活躍しない為これでよいのです。

 猩々緋と冬樹は一部の人物に対して厳しすぎる、と思われても仕方無いと思う奴らです。そもそもこの暴走劇のキャラは全員「別に好かれなくても構わない」という考えの元執筆していたりします。傍観者に関してはむしろ堂々と嫌って頂いて構いません。彼から離れ、暴走劇に混ざるのは良い事です。


 基本はヤマトと甕覗が中心として登場し、数人のキャラが常にヤマトの近くにいるという状況で進めています。「○○の出番をもっと!」みたいなメッセージを確認した場合、少しばかり手を加える事があるでしょうけど。これに関してはメッセージが来なければそれまでですね。


 というかこの小説、読者様と登場人物は同じであり違うという感じです。傍観者が話しかけている人物こそ読者様であり、物語に入りヤマトと話している人物も一人の読者様なのです。その境界はかなり曖昧です。

 曖昧故、入りやすくもあります。この小説が読者参加型なのがここです。


 細かい事はいつか活動報告か番外編にまとめます。

 では、今回はここまでとします。ではノシ

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