死の道
それは長い長い行列。
並んでる人たちはみな不安と救いを繰り返す
この行列に並ぼうか悩む人がうろうろと彷徨う
その中の一人が私だろう、
この先の見えない行列に並んだほうがいいのか?
その思いを延々と繰り返している。
たまらず私は並んでる人に尋ねた、
「あなたはどうやって並ぼうと決意ができたのですか?」
その人はふっと疲れた笑いを見せ
「簡単ですよ、並ばなかったらどうなるかを考えただけですから」
並ばなかったら、並ばなかったら私はどこへ行こうというのだろう
後ろに広がる闇より、まだ光があるとわかりきっているこの行列に
並んだほうがいいのではないだろうか?
しかしなぜ救済の光があると思えるのか、
待っているのはひとつの個室で、中には食人鬼が口を開き
待っているのかもしれない。
そう思うと、並びたくない 寿命を捧げて食われるなんてまっぴらだ。
しかし私はこの場から離れない、ただうろうろと彷徨う
そもそもこの行列を見つけられただけでも私は幸運なのではないのか
足がわずかに前に動き、列へと身が進んだ
その瞬間に、私と同じく彷徨っていた人が列に並んだ。
そしてこちらを見て、にやりと勝ち誇った顔を浮かべた
私は、思わず魅とれた。
私がこの人のように動けたらどれだけ楽なのだろう
どれだけ幸せなのだろう。
しばらくその人を見ていると、つまらなそうな顔でそっぽを向かれてしまった
しかし、ここでふと疑問に思う
この列は動いているのだろうか?
少なくとも私がこの列にたどり着いてからは少しも動いていない。
ちらりちらりと前の方を見ても動いてる様子がない
ひょっとしてこの列は偽物じゃないのだろうか?
足がわずかに後退し、後方の闇が近づいた
ひょっとしたらこの闇こそが本物の道なのではないだろうか
私は初めてきちんと振り返り、闇を見てみた。
その時、ちらりとカーテンのように瞬いた光を目にした
やはりこっちだ!こっちが正解の道だ!
今までうろうろとしか動かなかった体が嘘のように軽やかに動いた
私は走れる喜びと正解を見付け出した自身の勝利に舞い上がった
列が後方にどんどん流されて行く
小さな点になった頃、少し不安が襲ったが興奮がそれを打ち消した。
走り続け、息も途切れ途切れになった私の目に列がみえた
こっちも並んでいるのか、そう思った瞬間にその列が嘘のように早く
スムーズに進んでいた。
私は喜び、すぐに列に並んだ
ちらりちらりと後方を振り返り、笑いを堪えていた
あっちに並んでいるのはなんて愚かな奴らなんだろう
笑いが吹き出しそうになっていたところ、光はすぐそこまで来ていた
いかにも神を祭っているような趣の装飾と鳥居が私を迎え入れた
さてさて、何を言われるやら
門を通され中に入ったが、不思議と暗かった
しかし、私にはみえた
大口を開けて待つ食人鬼の姿が
私は走って逃げた
振り返ることなく逃げ続けた。
馬鹿は私の方だった、自身に舞い上がってなにも考えていなかった
私は走り続けた、
彷徨っている人たちを通りぬけ、並ぶ人たちさえも目に入らなかった
そして光が見えた
周りを見渡してみたら、並んでいる人など居なかった。
その光は温かく、すべてを満たす光だった。
素直に光の中に入った私を迎えてくれたのは
巨大な人の胎児だった。
私は振り返り、きちんと列に並ぼうと足早にその場を去った。
笑いに耐えていたとき、主人公は目をつぶっていました。