7、コロッケパン
契約の日、当日。
クライスのクラスは屋上に集まっていた。生徒達は、みな、幾分そわそわしている。そこへ藍色の髪を後ろで束ねた男が遅れてやってきた。彼こそが、この授業の担当教師であるシュバルツ教諭である。
「はい、みなさん。これから契約の儀を行います。」
その声に、生徒達の視線がシュバルツの方へと向く。シュバルツは、にっこりと笑うと自分の足元を指差した。
「これから詳しい説明をします。まず、こちらにある円を見てください。」
言われて、シュバルツの足元を見ると青い魔方陣が見えた。
「みなさんは、この魔方陣の上に立ち魔法力を魔方陣へと流してもらいます。この魔法陣は竜界と呼ばれる竜の故郷に繋がっており、皆さんの魔力に反応して、竜界で待機している竜の子供が、こちらにやってきます。」
そこで元気のいい声がシュバルツの言葉をさえぎる。リヒャルトである。
「シュバルツ先生〜、竜界って6つあるんですよね?全部に繋がってるんですか?」
「そうですね。竜界は、闇、光、火、水、風、土と6つに別れているらしいです。人間でいう6つの国があると言った方が正しいでしょうか。その6つの国に、それぞれ魔方陣があり、この魔方陣に繋がっているのです。6つの国の魔方陣の周りには、竜の子供たちが待機しており、自分が惹かれる魔力に反応するようになっています。」
その言葉に、1番前にいる生徒が得意げに続ける。
「シュバルツ先生。でも、昔は違かったんですよね?竜の子の親が直接、人間に預けていたと父に聞きました。」
シュバルツは、その生徒の質問にも陽だまりの様な笑顔を向けた。
「その通りです。よく知っていますね。はるか昔は、竜の親が直接、人間に子供を託しにきました。竜の赤子が人型をとるのには5年の歳月がかかるとされていますが、人間に託すと一月で人型をとれるようになります。ですから早く人間に預ければ、その分早く成長し、力のコントロールが上手になると考えられていました。いわゆる英才教育のように考えられていたのでしょう。」
そう言うとシュバルツは、ライの方を向く。
「ライくんは、アクアくんをそうやって預けられたのではないですか?」
ライは問われて、そうですとうなずいた。その様子を見ていたリヒャルトが、はぁーいっと右手をあげる。
「じゃあ、なぜ今は親御さんが預けにこないんですか?」
「そうですね〜。赤子のうちに預けられると人間側が困ってしまうからでしょう。力の教育に人間界での常識を教えたりと多くの事を教えなくてはいけませんからね。おとなしい光や闇ならいいですが、やんちゃな火や風の場合は大変です。」
そして生徒達に、納得した気配がみられるとシュバルツは魔方陣から離れて言った。
「それでは、さっそく始めましょう。じゃあ、向かって右側から順に魔方陣に乗って下さい。」