6、クリームシチュー2
静まりかえった食卓に最初に響いたのは妹の声だった。
「ええ〜!?なんで竜族と契約しないの!??信じられないっ!!」
言うと思った。
クライスは、そっけなく妹に言う。
「別にいいだろ。契約しなくたって。」
それを聞いたブレゼが目を見開いて言う。
「クライス、お前本当に契約しない気か?お前の魔力なら余裕で契約できるぜ?」
「ああ、しないつもり。」
クライスの答えに妹が立ち上がった。
「お兄ちゃん!竜と契約しないとか、おかしいよ!なんで!?」
ブレゼも、そうだそうだと手に持ったスプーンを掲げて言う。
「それにクライス!店だって忙しいんだぞ!人手ほしいぞ!火竜が増えれば、火力の調節だって楽になるの知ってるだろ!」
その言葉にクライスは呟いた。
「知ってるからコンロの改良してるんだろ。」
それを聞きもらさなかったブレゼが椅子の上に立ち上がって叫んだ。
「はぁ〜〜!?じゃあ、お前最初から竜族と契約する気なかったってことかよ!」
今まで黙ってクリームシチューを食べてた父親が、ブレゼの頭を殴った。
「ブレゼ。行儀が悪い。椅子に立つな。」
それどころじゃねーよ、とブレゼは父親につめよった。
「だってクライスが竜と契約しないって言うんだぜ!?アッシュからも言ってくれよ!契約しろって!」
言われた父親のアッシュはクライスを見つめた。
「本当に契約しないのか?契約した方が、色々と助かるぞ?」
クライスは首を横に振った。
「それでも、できないんだよ。親父、悪いな。母さん、シチューご馳走さま。」
今まで静かに事の成り行きを見守ってた母親に、声をかけるとクライスは自室に向かった。背後からブレゼのクライスを呼ぶ声が聞こえたが、振り向かなかった。
クライスは部屋に入ると、窓際にあるベッドに飛びこみ、1つ息を吐き出し仰向けになる。そして天井を見つめた後、いつも首からぶら下げているロケットを右手で弄った。
「許されないよな。僕が…いや、俺が契約するなんて。」
そして泣きそうな顔になると、窓から見える星空を眺める。
「俺のこと、許してくれないだろう?」
クライスの言葉に答える声は、なかった。