5、クリームシチュー
いよいよ竜との契約の授業が翌日となった夜。クライスはクリームシチューを食べていた。クライスの家が営む定食屋は1階が店で2階が居住区となっている。店を閉めてからになるので他の家よりも遅い時間に2階で家族一緒に夕食をとるのが日課であった。今日も、いつも通り家族で長方形の机を囲み、自分の右隣に妹、正面に父、対角線に母、そしてお誕生日席には、父と母の契約竜が座っている。クライスがクリームシチューを堪能していると右隣に座る妹が声をかけてきた。
「そういえば、お兄ちゃん。明日、竜と契約するんでしょ?」
妹は、女の子らしく可愛いものが好きで、人型をとっている竜が小さくて可愛いと日頃から言っている。早く自分も竜と契約したいらしい。
きっとどこからか噂を聞きつけ竜と契約できる兄が羨ましくてしょうがないのだろう。8歳になる妹は、たまに大人っぽい発言をするものの、まだまだ子供っぽい。
「んー、たしかに明日契約の授業あるけど、ティファは誰から聞いたの?」
妹のティファは、腰まである柔らかい金色の髪をふわふわさせながらクライスの方に身を乗り出して言う。
「ライよ。銭湯屋の息子のライ。今日、私、お母さんとお風呂に入ってきて帰りに会ったの。」
ライか。
まったく余計な事を。
クライスがシチューをスプーンで掬うと今度は左側から声が聞こえた。父の契約竜のブレゼだ。
「なになに?明日、家族増えるのか!?俺にも舎弟ができるってことかよー!うひょー!できれば火竜がいいぜ!!」
それを聞いて黙ってられなくなったのか、鈴が鳴るような声が話に入ってきた。ブレゼの対面に座った母の契約竜の光竜である。
「わたくし、光竜の女の子がいいわ〜。るらら〜って一緒に歌うたうの〜。」
それに反論するのはブレゼ。
「また歌かよ!リーン!光竜は、まったり気質が多くて嫌だね!しかも女の子とか走り回って一緒に遊べないし!」
言われたリーンは、るらら〜と口ずさみながらブレゼに言う。
「わたし〜土竜のが嫌だわ〜。無口なんだも〜ん。つまらな〜い。るらら〜」
ブレゼも、それには同意し、うんうん頷く。
その様子を見ていたティファは黙っていられなくなったのか兄クライスに瞳をキラキラさせながら言う。
「お兄ちゃんは、どの属性がいいの?」
期待が痛いぜ妹よ。
「悪いけど僕は、竜族と契約できないよ。」
し〜ん…。
さっきまで和気あいあいとしていた食卓は静寂に支配された。