10、コロッケパン4
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整備された道の両側には、木造や石造の建物が並ぶ。それは、普通の家だったり、何かのお店だったりと様々である。この通りは学園からクライスの自宅までの通学路で、今日もリヒャルト、そしてライと共に帰宅している所だ。赤いショルダーバッグを肩から斜めにかけ、手を大きくふるリヒャルトが真ん中。店側にクライス、道路側にライ。そして、ライの前をアクアが歩くという配置が常だ。だが今日は、リヒャルトの前をリヒャルトの契約竜が歩いており、アクアと何やら真剣に話をしていた。後ろの3人は、小さな2匹の竜が一生懸命に話す姿を見て珍しく静かである。いつもはうるさいリヒャルトも自分の契約竜を穏やかな笑顔で見守っている。
すると見つめられている事に気付いたアクアが振り向いた。
「なに?そんなヘニャっとした笑顔でみられると気持ち悪いんだけど…」
アクアの言葉に、アクアと付き合いの長いライが答える。
「いや、別に?」
「ふ〜ん…?」
そうは言ったものの視線は依然としてアクア達に向けられている。アクアと話していた緑の髪の男の子は、ヒャルトの所までトコトコ歩いていき、ひしっとリヒャルトの膝に抱きついた。リヒャルトの相貌が崩れる。
「どうしたのー!?ウインは疲れたのかな?」
ウインと呼ばれたリヒャルトの契約竜。膝上ぐらいしかない男の子は、その小さな身体を目一杯に広げてジャンプする。
「りひゃうと〜抱っこ!抱っこ!!」
幾分、舌足らずな言葉で求められ、リヒャルトは両手でウインを抱えた。ウインの顔を覗きこんでリヒャルトは言う。
「ウインはアクアと何のお話してたのー!?」
ウインは一瞬キョトンとしたがリヒャルトのほっぺたを掴み引っ張りながらキャハハと笑って答えた。
「今日、族長、寂しそう〜。りひゃうと、ほっぺ、のびう〜きゃははっ」
痛い痛いと言うリヒャルトに変わり、ライが興味深そうに聞いた。
「族長、寂しそうって何だ?」
しかしウインは、リヒャルトの頬が気に入ったのか頬に夢中である。なのでライはアクアに助けを求めた。
「竜族には、それぞれの属性を代表する族長がいるんだよ。その族長が今日の召喚の時に寂しそうって話。」
アクアの説明に、ライが、なるほどっと何度か頷く。
クライスが、そんな2組のやり取りを黙ってみていると、パンが焼ける美味しそうな匂いが漂ってきた事に気付いた。匂いの元に顔を向けると、店先に美味しそうなパンが並んでいる。その中にコロッケパンを見つけたクライスは思わずウインに話かける。
「ねぇねぇ、ウイン。コロッケパン食べようか。」
今までリヒャルトの頬を掴んでいたウインは、その言葉に手を放すと不思議そうに呟く。
「こおっけ?」
その様子にクライスは小さく笑う。そしてパン屋でコロッケパンを2つ購入した。売っていたコロッケパンは縦長のパンに切れ目をいれ、その間にコロッケと野菜を挟んである。そのパンを半分にちぎってウインとアクアに渡すクライス。不思議そうにパンを見つめるウインにクライスは言う。
「食べてごらん?きっと好きになると思うな。竜界には無いでしょ?」
ウインは恐る恐るパンをかじる。
ぱくっ。
むしゃむしゃ。
ごっくん。
そしてウインの目がキラキラと輝き大声で叫んだ。
「おいひ〜〜!!んま〜〜い!!!」
後は一心不乱にコロッケパンをむさぼるウイン。んまーんまーと言いながら頬に食べかすを付けている。初めてのコロッケパンに感動したウインだった。