9、コロッケパン3
クライスは魔方陣の目前までくると少し離れた所に立つシュバルツ教諭に言葉を掛けた。周りの生徒達は既に自分が喚んだ契約竜に夢中で、こちらを気にしている者はいない。
「シュバルツ先生、どうしてもやらなきゃダメですか?」
にこにこしてクライスが魔方陣に乗るのを待っていたシュバルツ教諭は、その笑顔のまま若干、首を傾げて言う。
「絶対と言う訳ではないですが、なぜです?」
クライスは少し躊躇い、おずおずと言う。
「竜族と契約できないと思うんです。」
そう言われたシュバルツは、ますます訳が分からないと表情を真面目なものに変えた。
「しかしクライスくんは、この学園の入学試験で魔法力を計測していますよね?入学できたということは、契約するための魔法力を満たしてるということですよ?」
クライス達が通っている学園は、竜騎士へとなるものが多い。そのため入学試験には、竜と契約するための魔力があるかどうか魔法力の計測があった。契約に必要な魔法力に達してない場合、入学できないのだ。こういうと差別のように聞こえてしまうが、入学試験で落ちる者はいない。この世界の人間は魔法力が豊かで、竜と契約しないものは、自分から竜との契約を拒否する変わり物であった。クライスは俯いて地面を見つめた。その表情は、苦しそうにも見える。
「分かりました。今回、クライスは見送りましょう。」
「すいません。ありがとうございます。」
クライスは礼をするとリヒャルト達のもとに戻っていった。その後ろ姿をシュバルツは、納得がいかない表情で見送った。