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悪役令嬢レティシアは怒っていた  作者: 南蛇井


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第7話 「帝国の天才」

断罪アカデミーの講義室は、朝からざわついていた。


学生たちの視線は、ある一点に集まっている。


教室の窓際。


黒いドレスの少女が、静かに座っていた。


長い黒髪。

整った姿勢。

冷たいほど落ち着いた瞳。


その少女を見ながら、学生たちは小声で話している。


 


「帝国の貴族らしいぞ」


「ヴァルメリア家って聞いた」


「マジかよ」


 


帝国ヴァルメリア家。


王国でも知られている名門だった。


政治家、軍人、外交官。


帝国の中枢を支える家系。


そこから来た留学生。


 


カサンドラ・ヴァルメリア。


 


教室の後ろでは、王子アルフレッドが腕を組んでいた。


 


「……なんで帝国の貴族が来るんだよ」


 


レティシアは淡々と答える。


 


「断罪に興味があるそうです」


 


王子


「絶対それだけじゃない」


 


そのとき、レティシアが教室の前に立った。


 


「授業を始めます」


 


ざわめきが静まる。


 


レティシアは黒板に書いた。


 


嘘発見試験


 


学生たちがざわつく。


 


レティシアは説明する。


 


「これから三人の証人に証言してもらいます」


 


「その中に」


 


「嘘をついている者が一人います」


 


学生たちが身を乗り出す。


 


「見抜いてください」


 


扉が開いた。


 


三人の人物が入ってくる。


 


商人。


兵士。


使用人。


 


それぞれが順番に証言する。


 


商人。


「昨日、私は市場にいました」


 


兵士。


「私は城門の警備でした」


 


使用人。


「私は屋敷の掃除をしていました」


 


短い証言。


 


レティシアが言う。


 


「誰が嘘つきですか」


 


学生たちは考え始めた。


 


最初に手を挙げたのはリリスだった。


 


「分かりました!」


 


レティシア


「理由は?」


 


リリスは自信満々で言う。


 


「商人です!」


 


「悪役令嬢の表情ではありません!」


 


沈黙。


 


王子


「それ理由?」


 


リリス


「悪役はもっとこう…!」


 


レティシア


「不正解です」


 


リリス


「ええ!?」


 


次に手を挙げたのはレオンだった。


 


彼は机の上にメモを並べている。


 


「証言の時間帯が微妙にずれています」


 


「商人の市場と兵士の城門」


 


「移動時間を考えると」


 


彼は考え込んだ。


 


「……ですが」


 


「決定的な矛盾はありません」


 


レティシア


「回答は?」


 


レオンは黙った。


 


「……保留です」


 


王子が小声で言う。


 


「真面目すぎるだろ」


 


そのとき。


 


クラリスが手を挙げた。


 


「この人です」


 


彼女が指したのは――


 


使用人。


 


レティシア


「理由は?」


 


クラリスは少し困った顔をした。


 


「なんとなく」


 


教室が静まり返る。


 


王子


「なんとなく!?」


 


レティシアは使用人を見る。


 


「正解です」


 


学生たちがざわめいた。


 


クラリスは驚いている。


 


「え?」


 


レティシアは説明する。


 


「掃除をしていたと言いましたが」


 


「この人の手は綺麗です」


 


学生たちが納得する。


 


そのとき。


 


教室の後ろから声がした。


 


「もっと簡単よ」


 


全員が振り向いた。


 


カサンドラ。


 


彼女は椅子に座ったまま言う。


 


「嘘は最初から分かる」


 


王子が眉をひそめる。


 


「どうやって?」


 


カサンドラは静かに指をさした。


 


使用人の靴。


 


「泥」


 


学生たちが見る。


 


確かに靴に泥がついている。


 


カサンドラは言った。


 


「屋敷の掃除をしていた人が」


 


「外の泥をつけているのは不自然」


 


「つまり外に出ていた」


 


そして結論を言う。


 


「証言は嘘」


 


教室が静まり返った。


 


レオンが呟く。


 


「……なるほど」


 


王子は頭をかいた。


 


「全然気づかなかった」


 


レティシアはカサンドラを見ていた。


 


その視線には。


 


ほんの少しだけ。


 


興味が混じっていた。


 


レティシア


「観察力が高いですね」


 


カサンドラは微笑む。


 


「簡単ね」


 


その笑顔は、どこか挑発的だった。


 


王子はその様子を見ながら、嫌な予感がしていた。


 


レティシア。


 


カサンドラ。


 


二人とも天才。


 


そしてどちらも――


 


絶対に譲らない性格。


 


王子は小さく呟いた。


 


「……この学校」


 


「絶対めんどくさいことになる」


 


その予感は。


 


ほぼ確実に――


 


当たっていた。

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