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悪役令嬢レティシアは怒っていた  作者: 南蛇井


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第6話 問題児たち

断罪アカデミーの朝は、静かではなかった。


中庭のあちこちで、学生たちが言い争っている。


 


「その証言は信用できない!」


「いや絶対嘘だろ!」


「お前が嘘ついてる!」


 


昨日の授業。


嘘観察と噂戦争。


その影響で、学生たちはすでに疑心暗鬼になっていた。


 


講義棟の前。


レティシアはその様子を静かに見ていた。


 


隣には王子アルフレッド。


 


王子は腕を組んで言う。


「……治安悪すぎないか?」


 


レティシアは平然としている。


 


「正常です」


 


王子


「どこが?」


 


レティシアは答える。


 


「断罪は」


 


「人間の嘘と欲望を扱います」


 


「平和な環境では学べません」


 


王子は頭を抱えた。


 


そのとき。


 


一人の女子学生が駆け寄ってきた。


 


銀髪の少女。


瞳が異様に輝いている。


 


「レティシア様!」


 


レティシア


「何でしょう」


 


少女は興奮して言った。


 


「昨日の断罪事件の記録を読ませてください!」


 


王子


「何それ」


 


少女は胸を張った。


 


「私はリリス・ヴァレンタイン!」


 


「悪役令嬢研究家です!」


 


王子


「研究家?」


 


リリスは早口で言った。


 


「悪役令嬢の歴史は奥深いんです!」


 


「特に白百合公爵断罪は!」


 


「あと薔薇庭園事件!」


 


「あと――」


 


王子


「うるさい!」


 


リリスはキラキラした目でレティシアを見る。


 


「レティシア様は理想の悪役令嬢です!」


 


レティシア


「そうですか」


 


王子


「喜ぶところなのか?」


 


そのとき。


 


別の学生が近づいてきた。


 


背の高い少年。


眼鏡をかけている。


 


彼はレティシアの前に、袋を置いた。


 


「証拠です」


 


王子


「何の?」


 


少年は答える。


 


「昨日の噂戦争の証拠」


 


袋の中には。


 


手紙。


メモ。


証言記録。


 


大量の資料。


 


王子が引いた。


「怖っ」


 


少年は自己紹介する。


 


「レオン・グレイ」


 


「証拠分析が専門です」


 


レティシアは少しだけ頷いた。


 


「良い習慣です」


 


そのとき。


 


遠くから声が聞こえた。


 


「ちょっと!」


 


赤い髪の少女が走ってくる。


 


「この中庭、舞台にするには狭い!」


 


王子


「舞台?」


 


少女は大きく手を広げた。


 


「断罪は劇です!」


 


「演出が必要!」


 


学生たちが引いている。


 


少女は自己紹介した。


 


「フィオナ・ルミエール!」


 


「演出担当よ!」


 


王子


「担当?」


 


フィオナは真剣だった。


 


「断罪は観客に理解されなければ意味がない!」


 


「照明!音楽!タイミング!」


 


王子は小声で言う。


 


「変なのばっかりだな」


 


すると。


 


後ろから静かな声がした。


 


「……あの」


 


振り向くと。


 


一人の少女が立っていた。


 


金色の髪。


穏やかな瞳。


 


クラリス・フローレンス。


 


彼女は少し困った顔をしていた。


 


「昨日の事件なんですけど」


 


レオンを見る。


 


「その証拠」


 


「一つ間違ってます」


 


レオンが固まる。


 


「……どこが」


 


クラリスは指をさした。


 


「この証言」


 


「嘘です」


 


沈黙。


 


レオンが慌てて資料を見る。


 


「……本当だ」


 


王子が驚く。


 


「どうやって分かった?」


 


クラリスは困った顔をする。


 


「なんとなく」


 


王子


「なんとなく!?」


 


レティシアは静かに言った。


 


「直感型ですね」


 


そして学生たちを見渡す。


 


奇妙な学生たち。


 


悪役令嬢オタク。


証拠マニア。


演出狂。


冤罪感知。


 


王子が言う。


 


「……やばい学校になりそうだ」


 


レティシアは静かに言った。


 


「もうなっています」


 


そして学生たちに向き直る。


 


全員が注目する。


 


レティシアはゆっくり言った。


 


「あなた達は」


 


一瞬、間を置く。


 


「王国で」


 


「最も危険な学生になります」


 


学生たちがざわつく。


 


その瞬間。


 


――ギィィ。


 


門が開く音がした。


 


全員が振り向く。


 


アカデミーの門。


 


そこに。


 


一人の少女が立っていた。


 


黒いドレス。


長い黒髪。


 


優雅な立ち姿。


 


そして――


 


どこか冷たい瞳。


 


彼女はゆっくり歩いてくる。


 


学生たちが道を空ける。


 


王子が小声で言った。


 


「……誰だ?」


 


少女はレティシアの前で止まった。


 


そして微笑む。


 


「面白そうな学校ね」


 


静かな声。


 


しかしその場の空気が変わった。


 


少女は名乗る。


 


「カサンドラ・ヴァルメリア」


 


王子が固まる。


 


その名前を知っていた。


 


帝国の名門。


 


ヴァルメリア家。


 


カサンドラはレティシアを見つめる。


 


「断罪を教える学校?」


 


微笑んだ。


 


「いいわ」


 


そして言った。


 


「遊んであげる」


 


レティシアはその瞳を見ていた。


 


初めて。


 


ほんのわずかに。


 


興味を示す。


 


こうして。


 


断罪アカデミーに――


 


最強の問題児が現れた。


 


第一部

「断罪が下手すぎる」

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