第3話 断罪アカデミー
王都から少し離れた丘の上。
そこに、奇妙な建物が建っていた。
白い石造りの校舎。
広い中庭。
高い門。
そして門の上には、大きな看板が掲げられている。
王立断罪アカデミー
王国史上、最も奇妙な教育機関。
それが、ここだった。
門の前に、二人の人物が立っている。
第一王子アルフレッド。
そして――
レティシア・グランベル。
王子は腕を組みながら建物を見上げた。
「……本当に作ったのか」
レティシアは当然のように答える。
「ええ」
「三週間で」
王子は絶句した。
「三週間!?」
「はい」
「早すぎないか?」
レティシアは首をかしげる。
「必要でしたので」
王子は何も言えなくなった。
校舎の前には掲示板がある。
そこには大きな紙が貼られていた。
断罪アカデミー
第一期学生募集
王子は掲示板を見て言う。
「……で」
「応募は?」
レティシアは答えた。
「三人です」
沈黙。
王子
「少なっ!」
レティシアは平然としている。
「想定内です」
王子が紙を見る。
そこには、理由が書かれていた。
王都新聞の記事。
『断罪学校、開校』
その下に読者のコメント。
「怖そう」
「断罪されそう」
「入学したら処刑されるのでは?」
王子は顔をしかめた。
「風評被害がひどいな」
レティシアは腕を組む。
「問題ありません」
「募集方法を変更します」
その日の午後。
王都の新聞が一斉に新しい記事を載せた。
見出し。
断罪アカデミー
入学試験内容公開
記事の内容は、こうだった。
第一試験。
嘘発見試験
三人の証人が話す。
その中に嘘つきが一人いる。
見抜け。
第二試験。
社交パーティー試験
パーティーに潜む詐欺師を見つけろ。
第三試験。
模擬断罪
架空の事件を裁け。
その記事を読んだ王子はつぶやいた。
「……面白そう」
そして次の日。
断罪アカデミーの門の前には――
長い行列ができていた。
学生。
貴族。
平民。
変わった格好の人。
とにかく人が集まっている。
王子は目を丸くした。
「なんでこうなった」
受験者の会話が聞こえる。
「嘘発見とか面白そう!」
「推理ゲームみたい!」
「断罪ってやってみたかった!」
王子は呆れた。
「完全に娯楽扱いだな」
その時。
一人の少年が言った。
「でもさ」
「もし本当に断罪できるなら」
「貴族だって裁けるんだろ?」
一瞬。
周囲が静かになった。
レティシアはその会話を聞いていた。
小さく頷く。
「その通りです」
受験者たちが振り向く。
レティシアは静かに言った。
「ここでは」
「身分ではなく」
「証拠で裁きます」
その言葉に。
受験者たちの目が輝いた。
「受ける!」
「面白そう!」
「絶対入る!」
王子は額を押さえた。
「増えすぎだろ……」
レティシアは掲示板を見ながら言う。
「現在」
「受験者数」
紙を確認する。
「四百二十六名です」
王子が叫んだ。
「昨日三人だっただろ!?」
レティシアは冷静だった。
「人は」
「面白いものには集まります」
門の前では受験者たちが騒いでいる。
「断罪やりたい!」
「推理したい!」
「裁判ごっこ!」
王子はため息をついた。
「この学校」
「絶対ろくでもない学生が集まるぞ」
レティシアは静かに言った。
「ええ」
そして微笑む。
「楽しみですね」
王子は嫌な予感しかしなかった。
こうして。
王国史上、最も危険な学校。
断罪アカデミー
その第一期入学試験が――
始まろうとしていた。




