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悪役令嬢レティシアは怒っていた  作者: 南蛇井


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第2話 断罪とは何か

王宮の会議室は重苦しい空気に包まれていた。


高い天井。

長い楕円形の会議卓。

壁には歴代国王の肖像画が並ぶ。


王国の中枢。


王宮評議会。


集まっているのは、この国の政治を動かす者たち。


宰相。

大法官。

軍務大臣。

財務卿。

そして有力貴族。


その中央に――


一人の令嬢が立っていた。


黒いドレス。


長い黒髪。


冷静な瞳。


レティシア・グランベル。


 


会議のきっかけは、もちろん昨夜の事件だった。


卒業パーティー。


三時間の説教。


正座した王子。


そして――


断罪アカデミー創設宣言。


 


評議会は当然、黙っていなかった。


 


宰相が咳払いをする。


「……では、説明していただきましょう」


 


視線が集まる。


 


レティシアは落ち着いた声で言った。


「昨夜の件についてですね」


 


財務卿が机を叩いた。


「昨夜の件について、ではない!」


「断罪アカデミーとは何だ!」


 


貴族たちが口々に騒ぎ始める。


 


「勝手に国家制度を作るつもりか!」


「断罪を教育だと?」


「学園の遊びではないぞ!」


 


会議室は一瞬で騒然となった。


 


レティシアは静かに聞いていた。


そして、ゆっくり口を開く。


 


「皆様」


 


その一言で、なぜか部屋が静まった。


 


「まず確認します」


 


彼女は言う。


 


「現在の断罪制度には、重大な問題があります」


 


ざわっ。


 


軍務大臣が眉をひそめた。


「問題だと?」


 


レティシアは指を一本立てる。


 


「第一」


 


「証拠なし断罪」


 


貴族たちが顔を見合わせる。


 


「噂だけで断罪が始まる」


「証拠は後から探す」


 


レティシアは続ける。


 


「第二」


 


「社交界暴走」


 


「断罪が娯楽化しています」


 


何人かの貴族が目をそらした。


 


レティシアは最後に言った。


 


「第三」


 


「冤罪」


 


その言葉で、会議室の空気が冷えた。


 


レティシアは淡々と説明する。


 


「ここ十年で」


「断罪後に無罪が判明した事件は七件」


 


貴族たちがざわつく。


 


「そんなはずは」


「公式記録には――」


 


レティシアは言う。


 


「記録は修正されています」


 


沈黙。


 


彼女は続ける。


 


「つまり現在の断罪は」


 


一瞬の間。


 


「制度として未熟です」


 


その瞬間。


 


机が叩かれた。


 


「侮辱だ!」


 


老貴族が怒鳴る。


 


「断罪は王国の伝統だ!」


「それを未熟だと!?」


 


レティシアは動じない。


 


「伝統だからこそ」


 


「改善が必要です」


 


会議室が再びざわつく。


 


そして彼女は言った。


 


「だからこそ」


 


「断罪を教育します」


 


「断罪アカデミー」


 


「断罪の専門教育機関です」


 


沈黙。


 


そして次の瞬間。


 


会議室は爆発した。


 


「ふざけるな!」


「貴族を学生に裁かせるのか!」


「そんなものができれば――」


 


一人の貴族が叫んだ。


 


「我々が裁かれるではないか!」


 


その言葉で、空気が凍った。


 


レティシアは静かに答える。


 


「その通りです」


 


さらに騒然。


 


宰相が頭を抱えた。


 


「これは政治問題だ……」


 


すると。


 


椅子が動いた。


 


一人の青年が立ち上がる。


 


第一王子。


アルフレッド。


 


全員の視線が向く。


 


王子はゆっくり言った。


 


「……必要だと思う」


 


一瞬。


 


誰も理解できなかった。


 


「は?」


 


財務卿が聞き返す。


 


王子は言う。


 


「断罪アカデミー」


 


「必要だと思う」


 


会議室が静まり返る。


 


王子は苦い顔をしていた。


 


「昨日の断罪は」


 


「ひどかった」


 


何人かがうなずいた。


 


王子は続ける。


 


「証拠もない」


「証人もいない」


「進行も崩壊」


 


そしてぼそっと言う。


 


「……三時間説教された」


 


何人かが笑いをこらえた。


 


王子は真面目な顔で言った。


 


「正直」


 


「俺も断罪のやり方を知らなかった」


 


沈黙。


 


王子はレティシアを見る。


 


「だから」


 


「学ぶ場所が必要だ」


 


その言葉に、レティシアは少しだけ驚いた顔をした。


 


しかしすぐに表情を戻す。


 


そのとき。


 


会議室の扉が開いた。


 


衛兵が叫ぶ。


 


「陛下、ご入室!」


 


全員が立ち上がった。


 


王国の頂点。


 


国王がゆっくりと部屋に入ってくる。


 


彼は席に座ると、言った。


 


「話は聞いた」


 


視線がレティシアに向く。


 


「断罪アカデミー」


 


国王は微笑んだ。


 


「面白い」


 


会議室が――


 


完全に騒然となった。

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