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悪役令嬢レティシアは怒っていた  作者: 南蛇井


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第1話 史上最悪の断罪

王立学園の大ホールは、今夜、眩しいほどの光に満ちていた。


巨大なシャンデリア。

磨き上げられた大理石の床。

壁に飾られた王国の紋章。


ここは社交界の登竜門――


卒業記念パーティー。


貴族の子女、教師、王宮関係者が集まり、音楽と笑い声がホールを満たしていた。


しかし、この夜にはもう一つ、重要な伝統がある。


それが――


卒業断罪イベント。


卒業生の中で悪事を働いた者を告発し、社交界の前で裁く儀式である。


本来ならば、厳粛で、そして華やかな政治的イベントのはずだった。


だが。


この夜の断罪は――


後に王国史に残ることになる。


史上最悪の断罪として。


 


突然、音楽が止まった。


一人の青年が、ゆっくりと立ち上がる。


王国第一王子。


アルフレッド・アルトリア。


金色の髪をかき上げ、彼は高らかに宣言した。


「――レティシア・グランベル!」


その名前がホールに響いた瞬間。


ざわっ。


会場が揺れた。


貴族たちが視線を向ける。


悪役令嬢として有名な少女。


黒髪の令嬢。


レティシア・グランベル。


 


王子は胸を張り、指を突きつける。


「貴様の悪行はすべて知っている!」


 


会場がどよめいた。


ざわざわと噂が広がる。


 


そして王子の後ろ。


一人の少女が震えていた。


ヒロイン――


クラリス・フローレンス。


淡い金髪の少女は、涙を浮かべていた。


 


王子は言う。


「お前はクラリスをいじめ、陰謀を巡らせ、学園を混乱させた!」


「その罪、ここで断罪する!」


 


完璧な流れのはずだった。


本来なら。


 


だが。


沈黙が落ちた。


 


王子が言う。


「証拠は……」


 


静まり返る会場。


 


側近が小声で聞いた。


「王子、証拠は?」


 


王子が振り向く。


「え?」


 


側近


「え?」


 


沈黙。


 


宰相が舞台裏で慌てている。


「証人を呼べ!」


 


召使いが走る。


 


しかし。


証人は――


来ない。


 


ざわざわ。


ざわざわ。


 


観客がざわめき始める。


 


クラリスがついに泣き出した。


「うっ……ひっ……」


 


王子が焦る。


「な、泣くな!」


 


完全に流れが崩壊していた。


 


そのとき。


椅子が静かに引かれた。


 


レティシア・グランベルが立ち上がった。


 


長い黒髪。


冷静な瞳。


 


彼女はゆっくりと王子を見る。


そして静かに言った。


 


「質問してもよろしいですか?」


 


王子が固まる。


「な、なんだ」


 


レティシアは首をかしげる。


 


「証拠は?」


 


沈黙。


 


王子は口を開き、閉じた。


 


レティシアは続ける。


 


「証人は?」


 


沈黙。


 


ホールは完全に静まり返っていた。


 


レティシアは――


深くため息をついた。


 


それは、失望のため息だった。


 


そして彼女は言った。


 


「正座してください」


 


王子


「え?」


 


レティシアは静かに告げる。


 


「断罪の礼儀がなっていません」


 


次の瞬間。


 


王子。


クラリス。


宰相。


 


三人が――


 


正座させられていた。


 


ホールは凍りついた。


 


誰も動かない。


 


レティシアは三人の前に立ち、腕を組む。


 


そして。


説教が始まった。


 


「まず、告発には手順があります」


 


「第一に証拠」


 


「第二に証人」


 


「第三に弁明の機会」


 


「これは断罪の基本です」


 


王子は小声で言う。


「長くないか?」


 


レティシア


「静かに」


 


説教は続く。


 


一時間。


 


二時間。


 


三時間。


 


ホールの貴族たちは途中で座り始めていた。


 


王子は涙目だった。


 


ついに王子が言った。


 


「俺を断罪してくれ……」


 


クラリスも言う。


 


「お願いします……」


 


宰相まで頭を下げた。


 


「国家のために……」


 


レティシアは冷静に答えた。


 


「却下です」


 


三人


「え?」


 


レティシアは言う。


 


「断罪とは」


 


「正義の最終手段です」


 


「こんなものに使うべきではありません」


 


ホールは静まり返った。


 


レティシアは振り返る。


 


集まった貴族たち。


学生たち。


王国の未来を担う人間たち。


 


彼女は言った。


 


「断罪を理解している者が」


 


「この国には」


 


「あまりにも少なすぎます」


 


一歩前に出る。


 


「ですから」


 


静かに宣言した。


 


「教育します」


 


ホールがざわつく。


 


レティシアは言った。


 


「断罪アカデミーを」


 


「創設します」


 


その瞬間。


 


会場は――


 


大混乱になった。


 


こうして。


 


王国史上、最も奇妙な教育機関。


 


断罪アカデミー


 


その物語が始まることになる。

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