私の相棒(後編)
〇映画館
目を開ける。
咲「あれ…ここは…?」
座席に座っている。
辺りを見回すが誰もいない。
隣の座席にはタマが置いてある。
スクリーンに3…2…1とカウントダウンが始まる。
カウントダウン終了後、幼少期の咲が公園でブランコで
遊んでる映像が映し出される。
咲「これは…私…?」
映像は次々に切り替わっていく。
「誕生日」「おままごと」「川で魚釣り」
どの映像にも必ずタマがいる。
咲「そういえば…あの日以来子供の頃ずっと一緒
だったっけ…」
次々に切り替わっていく映像を見る。
咲「これは…?」
タマのお腹を縫う母親の映像。
となりに置いてあるタマのお腹の大きな縫い目を見る。
咲「たしか公園に遊びに行った帰りだったよね…
その時転んで持ってたタマが石に擦れてお腹の綿が
出ちゃったんだっけ…」
タマの大きなお腹の縫い目にそっと手を当てる。
咲「大泣きしながら帰ったっけ…自分が転んだことよりも
タマの綿が 出ちゃったことがすごく悲しくて…」
縫い目をさする。
咲「家に帰ってからもず~っと大泣きしててご飯も
食べなかったっけ…
そんな私を心配してお母さんが縫って
くれたんだよね。
お母さん裁縫苦手だったから、針で間違えて指さして
怪我しちゃって…それでさらに心配して私大泣き
しちゃって…」
苦笑いする。
咲「タマのことこんなに大事にしてたんだな…」
タマの頭に手をのせる。
再びスクリーンに目をやる。
次々に切り替わっていく映像。
しばらくすると黒い画面になり「fin」という文字が
浮かぶ。
〇咲の部屋 (マンション)(昼)(現在)
瞬きする。
ぼやけていた視界が徐々に鮮明になっていく。
咲「あれ…夢…?」
辺りを見回しながら言う。
チャラ~ン!!
スマホの着信音が鳴る。
ポケットからスマホを取り出し画面を見る。
画面には「野原花」と表示されている。
咲「もしもしお母さん」
電話に出る。
花「咲。送り物はもうついたかしら?」
咲「うん」
花「良かったわ。新社会人になって寂しくなると思って
送っておいたのよ」
咲「ありがとう。けどもう子供じゃないんだよ」
クスッと笑う。
花「何言ってるのよ。私から見たらまだまだ
子供なんだから」
咲「も~!!」
頬っぺたを膨らます。
咲「けどよく覚えてたね」
花「咲の相棒だもん。咲が大切にしてた物私が忘れる
わけないでしょ」
咲「…は忘れ…のに…」
少し寂し気な顔。
花「え?」
咲「何でもない。さすが私のお母さんだなと思って」
クスッと笑う。
花「なによ今更」
咲「お母さん」
花「ん?」
咲「タマのこと覚えててくれてありがとう」
花「はい、はい」
咲「そろそろ荷解きしないと終わらないから切るね」
花「わかったわ」
電話を切る咲。
咲「さ~てと!!」
大きく伸びをする。
咲「またよろしくね!!相棒!!」
タマに向って言う。
完




