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キャバの黒服は勇者向きではないので 異世界で人を動かし無双してみた  作者: CHORO_


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7/10

第7話 黒服、襲撃される。

※剣も魔法も使えない主人公が、人身掌握と交渉術で進む異世界ファンタジーです。

 俺たちは北部街道を北上していた。

 港町ブッセに交易品を運ぶ荷運び隊の護衛任務だ。


 依頼は、道中に現れる単発モンスターへの警戒と護衛。


 陣営は、護衛対象の荷運び隊——エクタルの商人ギルドの一団。

 そして護衛の冒険者がアリアさんを含めて四名。

 アリアさん以外はBランクが二名、Cランクが一名。


 俺は冒険者登録をしていない。

 アリアさんの荷物持ちとして同行している。


 本来、Aランクである彼女が受ける任務ではない。

 だからこれは、俺からの追加依頼でもあった。


 Aランクが同行している影響もあって、

<人心大全>で見る全体の数値は

 不安3/緊張5/危険予測は低め。


 問題ない。

 依頼書通りなら、俺が口を出すほどじゃない。


 ……そう思おうとした。


「クロも現場に出ることあるんだな」


 冒険者の一人が笑う。


「ええ。俺は冒険者ではないので、邪魔だけはしないようにします」


「いや、クロのアドバイス結構的確って聞くぞ。頼りにしてる」


 軽口。空気は悪くない。


 二日ほど進み、「アルゴルの森」付近に差しかかったときだった。


 アリアさんの目の色が変わる。


「来る……」


 直後、商隊の横っ腹に矢が突き刺さった。


「ゴブリンだ!」


 森から飛び出したのは十を超える緑の群れ。


 鍵鼻、尖った耳、裂けた口。

 明らかに単発ではない。


 組織化された群れだ。


 ——依頼内容と違う。


 現場は、容赦なく書面を裏切る。




「数が多いね。でも統率は甘い。前を潰せば散る」


 アリアさんは大剣を構え、迷いなく突っ込んだ。


 先頭の一体が一瞬で沈む。


 唐突に始まる実戦。


 血飛沫と絶叫と鉄の音。

 目の前で削れていく命。


 それは画面越しの数字ではなかった。


 正直に言えば、

 この世界に慣れたつもりでいた。

 

 そして、俺はまだ何も理解していなかったということを実感した。


 戦力になれない俺は、

 輸送団の後方で戦況を読むしかできない。


<人心大全>はモンスターにも有効らしい。

 混乱は高い。


 だが——


 劣勢のはずなのに、不安値が低い。


 この状況で不安がないということは。


「アリアさん! まだ——」


 森がざわめき、ゴブリンの増援が現れた。

 数が倍に膨れ上がる。

 すでに依頼書は破綻していた。


 アリアさんの内心にも焦りが混じる。


 単発警戒?

 冗談じゃない。


 これは戦場だ。




 乱戦の中、討ちもらした一体が馬へと跳ぶ。

 

 だが、——鈍い衝撃音。

 ゴブリンは力なく地面に叩きつけられた。


「ちっ……こっちもか。群れだな。奥に巣がある」


 ザナスだった。


 明らかに消耗している。

 別依頼帰りだろう。


<人心大全>で見ると、焦りと苛立ちが高い。


 ——だが、闘争心が落ちているわけではない。

 退く気はないようだ。



 とはいえ、想定外の敵戦力。

 消耗した増援。

 そして、森の奥にあるであろう“本隊”。


 最悪は、まだ来る。


「このまま押せば、被害が出ます。

 一度引いて、ギルドに報告を——」


 それが合理だ。

 それが、俺の役目だと思っていた。


「……今は引けない」


 視線と切先を敵に向けたまま、

 アリアさんが言う。


「ああ。今引いたら、街道が死ぬ」


 ザナスも同意する。


 もちろん、

 今ここで退けば、街道はしばらく封鎖されるだろう。

 そして、討伐隊の編成まで時間もかかる。

 その間に周辺集落にも被害が出る。


 俺にも理屈は分かる。


 ただ、成功確率が低ければ、それは賭けではないのか。


 ——俺は迷った。


 しかし、迷っている間にも、前線は止まらない。

 動かなければ死ぬのが前線だ。迷う暇も、迷いを待つ暇もない。


 戦いは長引いた。


 やがてゴブリンは散り散りに敗走し、

 商隊にも大きな被害はなかった。


 その分、護衛たちは限界だ。


 ザナスは仰向けに倒れ込む。

 肩に矢傷。いくつもの斬創。


 致命傷ではない。


 だが、重い。




「……理屈は、間違ってねぇよ」


 俺を見たまま、ザナスが言う。


「だがな。前線には、“今しかない瞬間”がある」


 静まる場。


 視線が集まる。


 アリアさんは一歩下がる。

 口をつぐみ、俺を見る。


 任せる、ということか。




 ザナスが続ける。


「……で、どうする?」





 俺は助言者のつもりで現場に来た。


 だが——


 現場に立った時点で、

 もう“無関係”ではいられない。


 理屈を口にするだけでは済まない。


 その事実だけが、

 やけに重かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

キャバクラ黒服という異色の主人公が、剣も魔法も使わず、人を動かして進む物語です。


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