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部屋に二人  作者: 老川
第四章

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8/8

12月22日(土)

 神谷の発言は未公開情報–––––現場ではテレビがついたままだった–––––と一致していた。逮捕には弱い情報だが、指紋を取るための令状取得には十分だった。


 指紋を採取するために鑑識とともに部屋を訪れた黒川の前に現れた神谷は、どこか諦めたような表情をしていた。


 神谷の手の指紋は事件現場の部屋のテレビのリモコンに強く残されていた指紋と一致した。


 神谷の逮捕はその日のうちに完了した。


 **********


 犯人が逮捕されたという報せとともに、佐伯は再び警察署に呼ばれていた。どこか落ち着かない気持ちで椅子に座っていると、何度も顔を合わせた黒川という刑事が部屋に入ってきた。


「お待たせしました、佐伯さん」


 対面の椅子に座った黒川の表情は、どこかこれまでよりも優しげなものに見えた。


「あなたの友人でもあった三浦直人さんを殺害した犯人が逮捕されました。犯人は犯行を認めており、現場の証拠や証言から間違いないと考えられています」


「…それで犯人というのは?」


「隣の部屋に住む神谷という男性です。ご存知でしたか?」


 聞いたことのない名前だった。首を横に振る。


「そうですか。神経質な男性で三浦さんとは何度か隣人トラブルを起こしていたようです。事件の直接の動機も騒音問題でした」


「騒音ですか?直人は僕に押し倒されて意識を失っていたはずでは?」


「これからのお話は佐伯さんにとってお辛い話になるかも知れません。続けても構わないですか?」


 自分が殺したと思っていた、かつての友人の死の真相。怖くないと言えば嘘になるが、真実を知りたい気持ちが上回った。


「お願いします」


「佐伯さんは、三浦さんが意識を失って倒れたあと、窓を開けて部屋をあとにした。そうでしたね?」


 静かに頷く。


「その際、テレビはつけたままだった?」


「はい」


「開け放たれた窓を通して聞こえてくるテレビの音、それが神谷が三浦さんの部屋を訪れることになった原因の騒音の正体です」


 一瞬何を言われたのか理解ができなかった。しかし、言葉の意味がわかると一気に血の気の引くような感覚を覚えた。


「…それは…つまり」


 うまく言葉が喉を出ない。


「僕が自分の罪を隠そうと現場を荒らしていかなければ直人が死ぬことはなかったということですか」


 向かいに座る黒川が硬い表情で頷いた。


「証拠や証言を整理すると、そういうことになります」


 僕は直人を殺していなかった。


 だが、直人を殺したのは僕だ。

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