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【長編版】 吹奏万華鏡0 打楽器ソロコンテストの章  作者: 幻創奏創造団
古叢井瑠璃 打楽器ソロコンテスト編
7/15

【Ⅵ】 香坂白夜 心配の章

『白夜先輩、ここはどうすれば?』

『あぁ、音織ちゃんなら簡単だよ』

他のパートも、演奏を更に進化させていた。


そんな練習を続けること、1週間後。

「…はぁ、今日も部活かぁ〜」

「優愛ちゃん?」

香坂白夜の友達である優愛の様子が、少し変だった。どこか、疲れているように見える。

少しばかり心配になった白夜は、部活へ行く途中の廊下で訊ねることにした。

「部活、大丈夫?」

「えっ?」

「また古叢井さんが何かした?」

「…ううん。ティンパニみたいなことは何も」

「他には、何かあったの?」

「ううん。『何か』はあったけど、それは私が悪いんだよねぇ」

「ドユコト?」  

その時、話題の元である瑠璃がやってきた。


「お姉ちゃん、先輩、こんにちは!」

「瑠璃ちゃん、こんにちは」

優愛がハイタッチを交わすと、白夜が少し険しい顔をした。

「…優愛ちゃん、ちょっとだけ、瑠璃ちゃんと話しさせてほしい」

白夜の硬い声が廊下に響き渡る。その声に怯えるかのように、瑠璃は少し後ずさりした。

「えっ、いいよ?」

しかし、それに気付いていないのか、優愛はこちらを見ずに、音楽室へと入っていった。



廊下に残るふたり。

「こ、香坂先輩…、私…なにか…」

瑠璃が怯えていることに気付いた瞬間、白夜が慌てて笑顔を作る。

「あッ!別に怒るわけじゃないよ!!」

「…本当ですか?」

うーん、その時、再び白夜の表情が強張る。やはり怒られるのか?

「…香坂先輩」

その時、白夜が小さく口を開いた。

「優愛ちゃんに迷惑かけずにやってる?」

小さい声だが、その裏には焦燥のようなものが混じっている。どうやら優愛を心配しての質問のようだ。白夜は優愛の親友だから。

「…ま、まぁ、はい」

瑠璃が返事する。しかし、白夜に言われたら少し困ってしまう。

「…先輩なんだから、迷惑かけちゃ駄目よ?」

その嗜めるような言葉に、瑠璃は唇を噛み締めた。

『先輩』その堅苦しい単語が、瑠璃の胸の中を強く疼く。

「…優愛お姉ちゃんは、先輩なんかじゃない!!」

「え?」

気がつくと瑠璃は、そう叫んでいた。白夜は驚いたようで、可愛らしい丸い瞳を小さく震わせる。

「…あ、ご、ごめんなさい。し、しつれいします」

瑠璃は顔を真っ赤にしながら、逃げるように音楽室へ逃げた。

「…まさか?」

ふたりは喧嘩でもしたのだろうか…?





その頃。

小倉優月たち美術部は、外へ出ていた。 

「あと、ちょっとで引退かぁー」

「やめたくねぇー」

「んっ?」

小林想大と写生に出ていた優月は、とある音に耳を澄ませる。


「…吹部だ」

想大が言う。

鳴り響くハーモニーは、優月たちの知らないものだ。だが高らかに響く音で、金管だと分かる。

「最近、ポップス聞かないよな。何かやるんかな?」

気になった想大が言う。

「…古叢井さんに聞いたら?」

優月が返すと、想大は彼の肩を腕で絡めた。

「いたっ!」

「最近、瑠璃ちゃんと会ってないんだよ〜」

「ああ、そういうこと」

だから知らないのか、優月は何となく納得しながら、音楽室のある校舎へと向かう。

すると…


「…っ!?」

大きな2つの音が、優月を突き抜けた。

床の底から鳴り響くような音と、シンバルや太鼓のリズム。

「…この音、優愛?」

優月が音楽室の見える場所へ振り向く。

「…」

「おぉ」

例の優愛と瑠璃は、大量の打楽器を一度に演奏していた。鳴り響いては時々止まる。試行錯誤の最中だと分かった。



この日の下校時間。

「優愛ちゃん!」

「あ、優月くん?」

久しく優愛は優月へ話し掛けられた。

「…最近話してなかったよね。どうしたの?」

優愛が訊くと、優月は想大の手を離す。

「今、吹部で何やってるかな?って」

「あー、今はね、瑠璃ちゃんとソロコンの練習してる」

「ソロコン?」

「うん。ソロコンテスト。打楽器の大会に出るんだよ」

「へ、へぇ」  

「ちょっと大変なんだぁ」

優愛はそう困ったように笑った。

「えッ?どうして?」

「瑠璃ちゃんもだけど、私もあんまり打楽器慣れしてないんだよね」  

「…去年は、そのソロコン出てたの?」

「ううん。相楽先輩だけ」

「…相楽先輩」

優愛の出したその名。それは、去年度の春、去っていった相楽(さがら)奏世(かなよ)のことだ。奏世は優愛のふたつ上だが、厳しくも愛のある指導をしていたらしい。

「今回は2人で出るし、私も分かんないことばっかり…」

「そっか」

その声には隠し切れぬ焦燥が滲む。先輩として…姉のような存在として…本気で悩んでいると伺える。

「でも、瑠璃ちゃんが楽しんでくれれば、それが1番なんだぁ」

しかし、最後の言葉には、少しだけ照れるような響きが含まれていた。


優愛が打楽器コンテストに、出場しようとしたのは、古叢井瑠璃ただ1人だけの為だ…。

読んでいただきありがとうございました!

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次回もお楽しみに――!!





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