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【長編版】 吹奏万華鏡0 打楽器ソロコンテストの章  作者: 幻創奏創造団
優月と優愛 すれ違う恋編
20/20

【XVI】 繋ぐ想いの章

 優月が恋に悩む日々も矢のように駆け抜け、いよいよ打楽器ソロコンテストの当日となった——。

「〜♪」

瑠璃は鼻歌交じりに、黄色がかった髪をツインテールにまとめる。前髪がゆらりと自由な方向に踊る。自身の身支度を終えた瑠璃は、鏡を見てふふっと笑った。

今日は忘れられない日になる、瑠璃は何となく期待してしまった。


そして、この日は優月と想大もイルミネーションを見に行く日だった。しかも瑠璃たちのコンテスト会場から程近い場所である。



制服へと身を包んだ瑠璃は、優愛たちのいる茂華中学校へと向かった。

「優愛お姉ちゃん、おはよ」

「瑠璃ちゃん、眠れた?」

「眠れたー!」

「良かったあ」

何となく安心した優愛は、眼鏡越しのペリドットのような淡い光を灯した瞳を細めた。柔らかい光が瑠璃に差し込む。

「私は緊張して寝れなかったー」

「私、優愛お姉ちゃんと演奏するの楽しみだよ!」

「…私も」

瑠璃は本当に自分のことが好きなんだなあ、と優愛は嬉しそうに笑う。

「優愛お姉ちゃん、緊張してない?お体悪くない?」

「大丈夫よ」

「よかったあぁ」

本当に子供っぽいなあ、そう思っているうちに、楽器の搬入が始まった。副顧問の中北と共に楽器を運ぶ。


「重ーい」

「…だね」

瑠璃はニコニコ笑うが、優愛は少し頬の筋肉を強張らせていた。仲睦まじい優愛と瑠璃を見て、中北はふふっと笑った。

「2人とも、元気だねー」

「へへっ、楽しみだもん」

「また優愛ちゃんとソロやりたい?」

「うん!優愛お姉ちゃん、優しいから大好き!」

その言動は純粋な子供そのものだ。優愛もついつい嬉しくなり、

「私も可愛いから大好き!」

と答えた。

「…あらあら」

(本当に2人にソロやらせたいなぁ)

中北は、ふたりが再びソロをやりたいという意思を汲み取ってやりたい、そう思った。



終わると、瑠璃は優愛親子の車に乗る。小さな小型車で何だか良い匂いが、ほんのりと瑠璃の鼻腔をくすぐった。

「お、お願いします!」

「はーい」

優愛の母は和やかな雰囲気を持っている。優愛は母の行動に違和感がある、と言いながら笑っていた。普段は厳しいのだろうか?

「初めて見た、優愛の後輩」

「嘘ー、文化祭で見たよねー」

「ああ、あの時は仕事の都合で早く帰ったから」

「ママ、最低!!」

優愛が運転する母へ叫ぶ。

「うるっさい!」

「あはははっ」

瑠璃は普段のような大きな声ではなく、小さく控えめに笑った。

「あ…」

すると親子は黙り込んだ。

「えっと…お名前は?」

「古叢井瑠璃です!」

「ああ〜、古叢井さんね!」

「え、ママ聞いたことある苗字?」

「え…ないよ!」

明らかにその声は動揺していた、瑠璃は気付かない多少の違和感も優愛は気付いてしまう。それは親子の勘というものだ。


しばらくすると、瑠璃に母が問い掛ける。

「古叢井さん、どうして吹奏楽始めたの?」

「ママ、瑠璃ちゃんだよ」

「あ〜はいはい、瑠璃ちゃんはどうして吹奏楽を始めたの?」

「…ママ、本当に保育士さんだったの?」

「元保育士よ」

そんな2人の言い合いもそこそこに、瑠璃は理由を話し出す。

「えっと優愛お姉ちゃんのお陰です」

「えっ!?優愛!?」

「驚き過ぎー」

瑠璃の瞳は光に包まれている。嘘ではない、と分かる。

「…へへ」

瑠璃は車窓の景色を見つめる。少しずつ山道を下っているのだと分かる。遅くもなく特段速いわけでもないスピードで走る車。だが、柔らかい雰囲気に何だか居心地が良かった。

「あ、イルミ!瑠璃ちゃんと演奏が終わったら行くからね!」

「あ、そうだったね」

そしてコンテストのあと、ホール近くのイルミネーションに行くようだ。瑠璃は少し胸を高鳴らせる。そういえば行く、という話しをしていた。

(行きたいなぁ、私も)

イルミネーションの満開の光を想像して、心から思う。

「瑠璃ちゃん、行く?」

「ちょっと…、帰りも私の車だから、ふたり一緒でしょう?」

「あ、そうだったぁ」

優愛は子供っぽく笑う。初めて見た表情と仕草に瑠璃は頬を火照らせた。

「瑠璃ちゃんも行く?」

「あ、はい!」

(…この人の声、どこかで…?)

すると瑠璃は、優愛の母親に既視感を覚える。しかしどこで会ったか、までは覚えていない。ただ記憶の深層が疼いたような気がした。



ホールの外観は真っ白だった。前に訪れた御浦市民ホールよりは小さいが、それでも小さい訳ではない。

「…うわぁあ」

「そっか、瑠璃ちゃんは初めて来るもんね」

タイヤが砂利を踏みつける。ジャリジャリ…とした音。車内がほんの少し揺れる中、瑠璃は本番の地に目を輝かせていた。


優愛の母に礼を告げた2人は、ホールの裏側へと向かった。本番は午後の少し遅い時間だ。トランペットやクラリネットが出るということで、パートの部員も楽器搬入を手伝うこととなった。

「これで全部?」

「あ、はい!」

「じゃあ、トラックの人にお礼言わないと…」

「待って、凪咲ちゃんは?」

「凪咲?」

優愛と各パートの部員の声が慌ただしく飛び交う。瑠璃はよく分からないので大人しくしていた。



やがてトラックを見送ると、瑠璃たちは大きな部屋へと通された。そこには他校の生徒や見慣れない楽器があった。

「しげはな…しげはな…、あ!」

優愛は先頭で茂華中学校の札を探す。目線を泳がせていると、端の方で『茂華中学校様』と書かれた看板がぽつんと佇んでいた。

「…あ、あれだ」

優愛は重そうなサスペンドシンバルを置いて、ようやく溜息を吐き出す。

「…ここだね」

「看板、少しどけておくねー」

「あ、瑠璃ちゃん、ありがとう」

その時だった。



「あれ…、紅愛ちゃん?」

優愛の瞳の奥が誰かを捉えた。

しかし見覚えのある大人びた人影は、胸元に提げたサックスと共に消えた――。

「え、紅愛って…私の…」

瑠璃が優愛の発言を追求しようとした時だった。


「ふたりとも!」

「げ!」

笠松に準備を促されてしまった。

(優愛お姉ちゃん、紅愛お姉様のこと…)

優愛がなぜ紅愛を知っているのか?あとで訊こうと思った瑠璃だった――。

だが、それは叶わなかった……。

読んでいただきありがとうございました!

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次回もお楽しみに――!!





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