表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【長編版】 吹奏万華鏡0 打楽器ソロコンテストの章  作者: 幻創奏創造団
優月と優愛 すれ違う恋編
18/20

【XIV】恋から逃走の章

優愛から貰った青いネイルチップ。それを細い指にくっつけていく。何だか変な感触がした。

「優愛ちゃん、やっぱりネルチって高いの?」

すると優愛は笑って曖昧にした。

「ピンキリだよ。優月くんのやつは1000円くらい。100円のものもあれば、3000円のものもあるからね」

「ぼ、僕のちょっと高いね」

「だね。まぁ優月くんだから別に良いけど」

「それって…どういうこと?」

優月は優愛のことが好きだ。ドキドキと不安げな情けない鼓動を抑えつつ、彼女へ確認の響きを伝える。

「え?大切な友達…でしょ?」

「…うん」

優愛の言う通りかもしれない。だが、大切という言葉に優月は、どこか希望を見いだしていた。

「ねぇ、優愛ちゃん」

「うん、何か?」

「あの優愛ちゃん、好きな人とか…できた?」

「!?」

優愛の顔色が明らかに変わる。優愛とは次にいつ話せるか分からない。今のうちに訊いておかねば、と考えたのだ。

「…好きな人。私は瑠璃ちゃんがいちばん好き」

「!?」

次に顔色が変わったのは優月だ。少し動揺してしまった。

「瑠璃ちゃん、思ったよりね、私のことが好きだったみたい」

「それは…優愛ちゃんは凄く優しいから、好かれるだろうね」

「へへっ、ありがと。優月くんに言われたら自信付いちゃうなぁ〜」

「!?」

また動揺。ここで告白できなかった自分を、後に深く恨むのであった…。





翌日。

「…俺は瑠璃ちゃんが好きだ」

何と想大がそう言った。彼は瑠璃のことを気になっていた段階だ。急に好き…とは。

「まぁいいや、そんな訳でこれから瑠璃ちゃんに話しかけようと思ってな!」

「いつ?」

「瑠璃ちゃんは本が好きらしくて、今日は図書室で話すことにしてるんだ」

「いいなぁ」

優月はそれを心底羨ましがった。

優愛を誘っても、昼休みは白夜たちと遊んだり、クラス全体でレクリエーションをしているらしいので、昼休みの接触は大変困難を極めていた。


一方の想大はそんな事も知らず、本を読む瑠璃へ駆け寄った。

「やぁやぁ、瑠璃ちゃん。久しいな」

「想大先輩!久し振り〜」

瑠璃はあからさま嬉しそうな表情をした。ちなみに瑠璃が想大を好きな理由は、いちばん最初に仲良くしてくれた男子だから、である。

「何読んでるの?」

「あ、これねー」

瑠璃は本棚から、想大に視線を移すと本を振る。彼女の小さな体には、やけに本が似合っていた。

「…これはね、最近読み始めたのー」

「お、おお…」

表情はイラストの集合体だった。可愛くて、色鮮やかなそれは、読む人の興味を引き込むのだろう。

「めっちゃ…可愛いな」

「でしょ?『5分後に〇〇なエンド』って本なんだぁ。優愛お姉ちゃんがお薦めしてたから読んでるの」

「へ、へぇ」

どうやら優愛の影響はここでも受けてるらしい。

「すごく面白いよ!想大先輩も読む?」

「え…、いいの?」

「てか、想大先輩は本読むんですか?」

「よ、読むよ。朝の読書で」

そう言って彼は司書へ本を引き渡した。



「その…、ソロコンだっけ?それはどう?」

本を借りたふたりは、図書室のテーブルにて話し込んでいた。そこで想大が1つの問いを投げる。

「えっ、ソロコン?うーん」

すると瑠璃は、目を細めて子供のように、

「すっごく楽しいよ」

と笑った。

「そうなんだ。特に悩みとかないのか。良かった」

彼が安堵したように言うと突然、彼女はあからさまに顔をしかめた。

「…あ、でもね」

「ん?」

「先生には音量が大きいって怒られちゃう。想大先輩、私たちの音そっちまで聴こえる?」

「えっ…いや…、そんなに聴こえてないよ?」

実は耳の奥まで聴こえる、とは言えない彼はやんわりと返した。

「そ、それなら良かったぁ…」

その安堵の様子が可愛らしくて、想大は少しばかりドキッとしてしまった。

「で、でも…もしも音が大きくても…」

「?」

突然、想大が何かを言おうと顔を近づけてくる。瑠璃は目と耳をただ傾けた。

「音が大きいって、それだけやる気があるってことだと思う。それって素晴らしいことじゃない」

「…あ、」

瑠璃は何だか嬉しくなって、頰を赤らめてしまった。何だか、本当の自分を肯定されたかのようで嬉しくなったのだ。

「ありがとう…ございます」

彼女が嬉しそうにエヘヘと笑った。

「おう」

やはりその顔は愛おしかった。



「はあー、想大くんは良いなぁ」

優月は美術室にて、想大を少しばかり妬んでいた。理由は想大ばかり恋愛がうまくいっているからだ。

「優月くん、優愛さんを誘いなよ」

「優愛ちゃんったら、この前誘ったらクラスで遊ばなくちゃ駄目なんだー、って」

「それはドンマイ」

優愛と瑠璃の性格は正反対だ。何かに縛られる優愛と自由に呆けた瑠璃。当然、優愛のほうが苦戦することは必然だろう。

「…いや、んな事言ってられない!」

その時、優月の腕を掴んだ。優月はあまりの強さに少し眉をひそめてしまう。

「ど、どうしたんだよ!?」

つい痛みで口調が荒くなってしまう。そんな彼にも動じず、想大は美術室から彼と脱出する。


「おんじゃー!今から昼休みのお誘い行くぞ」

「え?部活中だよ」

「大丈夫!この前、写生に協力してもらったときだって、全然大歓迎だっただろ!」

「な、謎の自信」

(出たよ…。いきなり猪突猛進型)

想大は変な所で走る所があるのだ。しかし本当に今、音楽室に行けば大迷惑は確実だ。

…と言っても聞かなさそうなので、優月は抵抗することにした。

「想大くん!」

優月は階段の中段から一気に飛び降りる。着地にわざとらしく両手を床へつける。足にジリジリと痛みは走ったが、想大と手を離すことには成功した。

「…はぁ、想大くんったら落ち着いて」

「うう」

想大は結局、優月を音楽室へ強制連行することを諦めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ