表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【長編版】 吹奏万華鏡0 打楽器ソロコンテストの章  作者: 幻創奏創造団
小倉優月 恋する打楽器奏者編
12/15

【現在編Ⅰ】 吹奏楽への憧れ

…瑠璃の過去が、交差する中…。

そんな時、優月の過去も時を同じくして交差しようとしていた…。

茂華中学校の文化祭の数日後。

「ゆーゆ!」

「んっ?何?」

…とある本番の準備中、2年生のゆなは同級生の"ゆゆ"こと小倉優月に叫ぶ。

「おめーよーッ!締め付け甘いのよ!馬鹿か!」

鳳月ゆなはヒイヒイ言いながら、打楽器の脚を締め付けていた。ちなみにゆなは、かなりの面倒くさがり屋である。

「ご、ごめん!握力がないからさ…」

「なさ過ぎ!!私くらいの力になりなさい!」

その時、ひとりの少女が入ってきた。

「ゆなっ子の力ってどれくらいなの?」

アルトサックスの2年生、加藤咲慧だった。咲慧はゆなと同じ冬馬中学校出身だ。1年前は凜西良新高校という県央の高校にいたが、色々な事情で東藤高校へやってきたのだ。

「…力?うーん、握力は32だよ」

「強っ!私の握力は29なんだけど…」

「ふ、2人とも凄いね…」

優月は手伝うように、ゆなの近くへ転がる打楽器の脚のネジを、力いっぱい捻った。

「マジで吹部向いて無さすぎるよ。ゆゆ」

「…はぁ」

優月がしょんぼりとした時。


『それを鳳月さんが言っちゃう?』

穏やかそうな風貌をした男性がそう言った。

「広一朗」

ゆなが言ったその名は、顧問の井土広一朗だ。

「ゆなっ子だって、すごく面倒くさがり屋だったじゃん。齋藤さんと田中さんに怒られてたのに…」

「それ、いつの話?」

「1年のとき」

齋藤と田中。それはゆなの先輩だ。ゆなや咲慧と同じ和太鼓部だった齋藤(さいとう)菅菜(かんな)とこの部の先輩の田中(たなか)美心(みこ)のことだ。ふたりは毎日のように、ゆなの面倒を見ていた。

「あぁ、そういえば菅菜がいなくなって、私はちゃんとしてきたんだっけ?」

「知りませんよ?私は」

「私も知らないよ」

ゆなが質問口調で言うが、井土と咲慧が知ったことではない。

「…まぁ、ゆゆは握力付けて。そうすれば良いから。あと久遠は?」

「久遠?」

久遠筝馬は優月の後輩だ。ちなみに天龍に所属していて、瑠璃の先輩でもあった人物である。

「筝馬くん、國井くんと機材を運んでると思います」

「あー、久遠ったら握力凄いもんね」

井土はケラケラと笑いながら、音楽室脇の部屋へと帰っていってしまった。



片付けを終えると、この日の部活は終わりだ。

「ねぇ、ゆゆー」

「んっ?」

帰ろうか迷う優月に、ゆなが話しかけてきた。

「…お前さ、どうして吹奏楽始めたん?」

そして、こう問いを投げられた。

「吹奏楽を始めたわけ?」

「うん。パーカッションずっとやってるじゃん」

「…鳳月さんには言ってなかったっけ?」

「広一朗が気になってた」

その時、

「まだ帰らんのかねェ?」

井土が欠伸をしながらやってきた。定期演奏会の準備でロクに寝てないのだろう。

「あ、広一朗。どうしてゆゆが吹部入ったか、気になってるよね?」

間を置かず、ゆなが尋ねてきた。スマホを下げ、椅子から身を乗り出して顎を引き出した。

「あー、うん。できれば聞いてみたいなぁ、って」

すると彼は、頰を指でなぞりながらそう答えた。

「井土先生が言うなら」

優月は、井土へ絶対的な信頼を置いている。

「…僕が吹部へ憧れたのは、中3の秋辺りですが…、本気で入ろうとしたのは、冬頃です」

そう、瑠璃のあの時間と同じ時だ。

打楽器へ恋した…その理由は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ