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【長編版】 吹奏万華鏡0 打楽器ソロコンテストの章  作者: 幻創奏創造団
古叢井瑠璃 打楽器ソロコンテスト編
1/15

【プロローグ】 孤独からの拒絶の章


        小説家になろう 連載




           原作

         幻創奏創造団

      (連載中 吹奏万華鏡シリーズ)





                


          


 どぉん、どぉん、どぉん…

母に宿る胎児の鼓動のように、その音は心地よく響いた。産まれる前の赤子のように、少女は小さな手を伸ばす。大きな救いの手を求めるように、その無力そうな手を振る。だが、暗闇に包まれた泡沫は、つまらない笑い事かのように、勢いよく弾けて消えた。脳に心地よい音だけが、ただ暗闇を包みこんだ…。


心地よいはずなのに、水中にいるかのように息苦しい。

体中は悦楽に満ちているのに、心は苦しい…。

どうしてだろう?

どうして皆…、私を否定してくるのだろう?







音楽室前の廊下。そこは部活動へと向かう生徒たちの会話で満ちていた。そんな喧騒から一際離れた、ひとりの小さな少女は黄色がかかったツインテールをふわりと揺らした。

古叢井(こむらい)瑠璃(るり)。年は中学1年生だ。背丈はかなり小さく、可愛らしいツインテールをさげている。瞳は丸を形どったように丸く赤い。顔立ちがかなり幼く、妖精のように可愛らしい女の子だった。そんな彼女は珍しい苗字から、あまり友達ができていなかった。


『…あ、』

覗くと廊下には…今日もいた。とある女の子に付きまとう男の子を。

少女はそれを見つけると、殺意に近い赤い瞳を細める。

『…お姉ちゃん』

その名を呼ぶが、血の繋がった姉ではない。ただ彼女が勝手にそう呼んでいるだけだ。

『お姉ちゃんに近寄らないで!』

しかし、まるで妹のようにこう叫んでいた。

『あ、えっ…?』

すると目の前の少年は、困ったように首を傾げていた。彼は姉のような先輩に付きまとうストーカー…だと思っていた。

しかし…


『瑠璃ちゃん、優月くんはストーカーじゃないよ』

『…えっ?』

『別に付きまとわれてるわけじゃないわ』

その予想は大きく外れた。

『そ、そうなの…?』

『そうだよ。小倉優月くん』

すると少年は姉のような先輩へ話しかける。

『えっと、この子は?』

『…ああー、私の後輩の古叢井瑠璃ちゃん。すっごく可愛いでしょ?』 

『…う、うん』

すると優月と呼ばれた彼は、小さく笑みを浮かべて首を縦に振る。

『…え、ごめんなさい。優月…先輩』

『あ、大丈夫だよ!』

優月はクスリと笑った。何だか優しい笑みだなあ、と瑠璃は思った。

『この人ね、私と同じ小学校だったの!』

『え?』

『すごく優しいんだよ』

『…そうだったんだ』

瑠璃は自分の勘違いに少し悔しくなった。

優愛…。彼女を独占したい気持ちはなかった。ただ姉を…姉を守りたいだけだった。


『えっと…よろしくね』

彼女の反省を待つ間もなく、彼はにこやかに笑ってくれた。

『…はい』

瑠璃はこくりと頷く他なかった。少し自分より背丈の高い少年に、少しばかり心臓がキュッとなった。高過ぎず、低過ぎず、丁度良い距離感の身長差だ。

『じゃあね、優愛ちゃん』 

『ばいばい、優月くん』

ふたりはどこまでも仲が良さそうだった。それは瑠璃が頰を赤らめてしまうほどに…。


いいなあ。

そう思ってしまった…。

この2人はきっと孤独に飢えることはないだろう。それが何だか瑠璃には羨ましかった。

孤独…。

瑠璃の中では、常に孤独への恐れが渦巻いていた…。

それは…あの文化祭まで。



        古叢井瑠璃と榊澤優愛…。

   友情と感動の物語が始まろうとしていた――




その半年後――

 冬の夜。色鮮やかなイルミネーションが、ふたりの少女を(きら)びやかに彩る。

『…優愛お姉ちゃん!私の為にありがとう』

涙を流す瑠璃。驚く優愛。

『るり…ちゃん』

映える光の中、ふたりは本当の楽器の楽しさを知ることとなる。あの感動と共に――。





           長編版

          吹奏万華鏡0

       打楽器ソロコンテストの章


           零時開演!!




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