セントゴーストアクターズスクール その2
だが、2人だけでは学校は成り立たない。
収入や支出など経理を担当する者、資材、教材などを作り、又、調達する者などを最優先に探さねばならない。
二人は手分けして人材を探すことにした。
お岩は人伝てに、数を数えさせたら誰も敵わない者がいるという噂を耳にした。
それが「お菊」だった。
お菊は死んだ場所に憑依した地縛霊なので移動出来ない。
そこでお岩はお菊のいる井戸を訪ねてみた。
井戸の底から聞こえてくる声は悲しみと怨みを持った、心が痛くなるような声だった。
「一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚、九枚…何度数えても一枚足りない。」
そして又「一枚…」と始まる。
お岩は「お菊さんとやら、出て来てくれないかい?話したい事があるんだけれど。」と、深い井戸の底に向かって呼びかけた。
そうしたら井戸の底から声が聞こえる。
「どなたかは存じませぬが、釣部を上げて下さいませ。」
お岩はガラガラと釣部を上げる。
火の玉と共に、皿を大事そうに胸に抱いたお菊の幽霊が現れた。
「恨めしや〜鉄山どの。」怨みの籠もった低い声が辺りの空気を震わせる。
無残な程、髪をたらし、水が滴りおちる。
袈裟がけに切られたのであろう、肩からザックリと刀傷。
悲惨な出で立ちで井戸から出てきたお菊は「あら…どちら様でございましょうか?」とあっけらかんとした声で聞く。
「私はお岩と申します。お菊さん同様、愛しい男に殺され、怨念を抱き続けて幽霊になりました。」
お菊は気の毒そうな顔をして「美しいお顔立ちをされていらっしゃるのにお気の毒。ほんに男という生き物は次から次へと、新しいおなごを求める、どうしようもないだらし無い生き物でございますね。」
お岩は「幽霊における世間話」をひとしきりしてから本題を切り出した。
「お菊さん、私はある方と一緒に学校を作ったのですが、人手が足りません。私達と一緒に学校運営に携わっていただけませんか?聞くところによると、お菊さんは数を数えさせたら右に出る者は無い程正確とか。その能力を活かして、私達の学校の会計をやってみませんか?怨みだの憎いだの言ってた所で、何か面白いことありましたか?だったら、学校経営に携わり、鉄山殿でしたっけ?を見返しましょうよ。」
お菊は暫し考える時間を下さいと言って、井戸の底に戻って行った。
お岩は井戸の淵に、水で落書きを書きながら待っていた。
しばらくたって井戸の底からお菊の声がした。
「お岩さん。釣部を上げて下さいませ。返答をしとうございます。」
お岩は又、ガラガラと釣部を上げた。
「恨めしや〜…ではございませんでした。お岩さん、詳細はわかりませんが、わたくしで良ければ手伝わせて頂きとうございます。お皿ばかり数えるのも飽きが来ておりましたゆえ。しかし…わたくしは、この井戸から動けませぬ。その学校とやらに参ることはできません。如何すればよいのでしようか?」
お岩は阿国に相談すると言い、明日もう一度来ますから井戸の底には戻らず、この辺りで待っていて貰いたいと告げた。
いちいち釣部を上げ下げするのは効率悪いから、浅い井戸にしてすぐに出て来れるようにするからと。
お菊は「承知いたしました。明日お待ちしております。」と応えた。
お岩はとって返し、阿国と相談する。
「お菊さんは会計を承知してくれましたが、地縛霊ゆえ井戸から動くことは出来ないと言っていました。井戸は深く、誰かが釣部を上げないと上がって来られないのも難点です。どうしましょう?」
阿国も首を傾げ考えていたが、閻魔大王に相談してみると言う。
「そうだ、お岩さん。私は閻魔大王の所へ行ってくるから、お岩さんは明の都で亡くなったという淑芳さんに会ってきて貰えますか?彼女は常に燈籠を携え、愛しい男の元へ通った幽霊。幽霊の身で燈籠を調達できたのなら、他の資材関係も調達出来るのではないかと思います。些か強引な考えではありますが、何か情報がないかと思いまして…」
「了解しました」とお岩が言った。
阿国とお岩は二手に分かれ、学校を大きくするべく奔走する。