03 高嶺の花との同居問題
「……どうしましょう」
奏が困り顔でこちらを見つめる。
一方渚も困り顔で奏を見つめる。
(………本当にどうしようか)
今二人が直面している問題が『ベッドが一つしかない』。
(どうしたものか。一つのベッドを二人で……という手もあるが……絶対に奏はやりたがらない。なんなら俺もやりたくない。………)
「あっ」
渚が何かを思い立った様子で言葉を発する。
「どうしたのですか?……もしや、いい案が……!?」
奏は渚に期待の眼差しを向ける。
その眼差しを受けながら、渚は一言。
「いや………俺がソファーで寝ればいいんじゃないかって」
「………へ?」
少しの沈黙の後、奏がおかしな声を出す。
「何言ってるんですか!?私が住まわせていただいている立場なので、私がソファーでねましゅ!」
「………噛んだな。後そういうことじゃないんだよ」
奏は噛んだことが恥ずかしいのか、下を向き、頬を赤くそめていた。
(………高嶺の花って恥ずかしがり屋なんだな。最近話してなかったから分からなかった)
人形の様な存在のいかにも人間らしい姿を見れて、少し渚は嬉しかった。
「………あ、そうだ。俺の隣の部屋に空き部屋があった。ちゃんと掃除はしてるし、ベッドとか置けばちゃんとした部屋になるぞ」
「………それをはやく言ってください」
「………悪かった」
彼女は頬を膨らませ、怒りと呆れの表情をしていた。
「………服なら姉貴がたまに来るからそれを借りればいい。パジャマとかもあったはずだ。………洗ってるからな」
奏は安堵の表情をした後、少し不思議そうな顔をした。
「じゃあ、ベッドとかはどうしてるんですか?」
「あぁ……ソファーに毛布敷いて寝てもらってる。本人はあれじゃないと嫌なんだとよ。男の寝床を奪っちゃ困るって」
「………変わってますね」
奏が苦笑いをする。
そんな話をしている間に外の明かりが少なくなっていた。
「もうこんな時間か。風呂沸かすから先入っててくれ。晩は………」
「私が作ります。冷蔵庫お借りしますね」
「……おう」
やはり何を考えているのか全然読めない。
ただこれだけは言える。
彼女はおかんではないかと。