ミハシラ
そういえば──。
このガイドの言を思い出してみると、最初は1ヵ月の新規住民候補、次の3ヵ月は新規住民とステップアップしていき……。
住民の姿をこの世界でも見たことがない。
「ガイドさん、あなたこの世界にも住民がいるかのような話しぶりだったけど、住民にはどこで会えるんですか」
「他の住民の方ですか?」
そのガイドはなんら顔色を変えることなく。
「こちらに全員おられます」
ガイドはふりかえり、インフォメーションセンターの奥にある、地面から三階分吹き抜けの天井にまで達している太い金属の大きな円柱を示した。
ガイドの目線の先、柱の側面には、コンソールらしき画面とI/O用のキーボードがとりつけられていた。
「いや、どこに……」
「この『ミハシラ』におられます」
「みはしら……?」
ソロンははじめ理解が及ばなかった。
「この都市にお越しになられて、住民となられた方は、この『ミハシラ』の一柱となるのです」
「…………」
ソロンは身が震えているのを自覚した。
何も考えたくなかった。
だが、ソロンの知性は、その気持ちとは裏腹に、いままでの情報をつなぎあわせて、ひとつのおそるべき仮説を組み立てあげていた。
この都市に存在する人間は、すでに元の世界で死んでいる。
この都市に来た者は、「住民」としての「教育」を受ける。
この都市の「住民」は、この「ミハシラ」という何かにいる。
ということは、「住民」とは──。
その「ミハシラ」とは──。
「その『ミハシラ』って、もしかして、『住民』の墓……。
『住民』とは、肉体が消滅してその霊魂が『ミハシラ』に吸収されていると……」
ガイドは少し緊張をゆるめたていで
「心身二元論に基いているきらいはありますが、直観的理解としては、そのようなものでよろしいかと思われます」