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脳
「よくありそうなターミナル駅なのに、なぜこうも……」
ソロンはあまりにも殺風景で寒々しい光景に身をすくませた。
空調はちゃんと温度管理をしていて、人間が活動しやすい常温に保たれるのにもかかわらずである。
日中の駅なのに人の群れの騒々しさ──アナウンスもアラームさえも聴こえてこない。
ただ時計はきちんと正確な時刻を示しているようで、ちゃんと針も動いているようだ。
駅内の公告や看板も……?
「いや、なんだこれは……」
ソロンはそのとき、はじめて気がついた。
壁に貼られた色取り取りにモデルや俳優が笑顔でうつっているよくあるポスターのかずかずに書かれた文字。
よく見ると、それは、ソロンの知っている文字には多少似ているが、じつはまったく読めない、謎の文字だった。
いや、文字なのかどうかすらわからないほど怪しいただの記号としか思えなかった。
「うわっ」
ソロンは鳥肌がたった。
見ていたポスターにうつっていたモデルが右手に持ってあたかも商品公告のようにアピールしていたそれ──
──遠目にはボールか何かだと思っていたものは、何かしらの動物の脳だった。
「ま、まさか……」