8 星は集まる 1
全国ツアーを終え、いよいよワールドツアーへと動き出す。その時、あるオファーが舞い込んできました。
リュウヤとメンバーは数日のオフで疲れを癒し、打ち合わせのために所属事務所に集まっていた。会議室で待っているとマネージャーの坂元と水野が揃って入ってくる。
坂元はリュウヤとセイジ、ケイのマネージメントとチームのスケジュール管理を。水野はマル、シンのマネージメントとコーラスや裏方スタッフ等の招集、管理、雑務等を引き受けてくれているどちらも頼もしい仲間だ。
二人がメンバーと向かい合う形で席につくと、坂元が口火を切った。
「全国ツアーお疲れ様でした。無事盛況に終われたことをまずはご報告です」
メンバーがそれぞれに声を上げたり頷いたりして了承すると、坂元が僅かに笑みを見せた。
「それでは、次に来年のワールドツアーに向けてのスケジュールから説明します……」
坂元が今後の大まかなスケジュールを説明していく。ワールドツアーは数年おきに行われており、来年の夏から秋にかけてアジア、ヨーロッパ、アメリカと渡り歩く予定が組まれていた。それまでに新曲をいくつか完成させる必要がある。RYU-SAYの楽曲は基本セイジが作詩したものにリュウヤが曲を作っている。ツアー中にセイジがいくつか案を作っているようだったので、なんとか間に合うだろうとリュウヤは踏んでいた。
「それから年内にいくつか番組出演のオファーが来ています。メドレーでの演奏と……」
続いて坂元はRYU-SAY全員で出演予定のプログラムを説明し始める。国内ツアー後はスケジュールに空きが出ることは少ない。番組出演までにはスタジオで何度か合わせる必要もある。その辺は優秀な二人がきっちりと予定を組んで伝えてくれるのでリュウヤは全く心配していなかった。
「それから直近ですが、二週間後に生出演でのオファーが来ています」
その言葉にメンバー全員がざわりとした。
「二週間後に生で? えらく急だな、どういうことだ?」
「その質問には僕が答えよう。先日の件で詫びの連絡があってね、」
聞き覚えのある声に入口を振り向くと、少し白髪の交じるスーツ姿の男が立っていた。
「え、社長サン?」
セイジが目を丸くして声を上げた。事務所の社長、高槻がゆっくりと歩み寄り、坂元の隣で立ち止まると口を開いた。
「全国ツアーお疲れ様。その急なオファーは高坂からのものだ。打ち上げでの騒ぎについては坂元から話を聞いている。若気の至りだろうとリュウヤがその場を収めてくれたこともね。幸い今のところその話題が漏れた様子はないようだが、人の口に戸は立てられない。いずれどこかで噂にはなるだろう。その番組はwing guysが出る予定だったものだ。相手はジストペリドだ」
ジストペリドの話題もつい最近聞いたものだ。人気急上昇中のアイドルとの共演は確かに話題性抜群だろう。
「詳しく聞かせてくれるか? 高槻さん」
「いいとも」
高槻の話によると、ジストペリドが持っているトークショーの番組にゲスト出演して欲しいというものだった。トークショーと言いながらライブも兼ねているらしく、出演者とジストペリドがコラボしてお互いの曲をカバーしたり、共演したりするらしい。
「面白い企画だし、話題性もある。急なオファーだがRYU-SAYならこなせるだろう。坂元、水野、後はよろしく頼む」
社長が退室すると、水野が立ち上がる。
「ジストペリドが最近人気急上昇中のアイドルだということはご存知だと思います。如月 湊と、Hinato二人のユニットで、来年ワールドツアーも計画されているそうです。今回は海外講演も多いRYU-SAYとの共演でワールドツアーについて二人が学ぶ、というコンセプトのトークショーと、RYU-SAYのロックスピリットを体感するということでこちらのヒット曲を二人がカバーするそうです。メンバーには二人のバックでの演奏とサポートをして欲しいということです。また、彼らのシラユキをカバーしてもらえたら、と。アレンジは自由にしてもいいということですので、今から資料映像を流しますね……」
水野がテレビの電源を入れ、DVDを流した。伸びやかな歌声が会議室に流れる。
「バラードか」
「へえ、上手いじゃん」
「楽譜は手に入る?」
「歌詞とコード表はこちらになります」
「……へえ、白雪姫に恋する鏡とは面白いね。リュウさん、これこのままバラードでコピる?」
「そうだな。だがロックスピリットってぇリクエストがあるんだからそこは入れてやらなきゃ面白くないだろう。シンとマルのセッションを間奏に挟むのはどうだ?」
「え? 俺の出番は?」
セイジの問いにリュウヤが答えるとすかさず突っ込むセイジに、
「お前は言わなくても勝手にアレンジして目立たせるだろうが。それよりも音域がな……ケイ、高音部出せそうか?」
「コーラスで合わせろって? やってみなくちゃわかんないね。坂元さん、この後って?」
「スタジオ抑えてありますよ」
「さすがー。とりあえずやってみようか」
話がまとまりかけたところで、坂元が手を挙げた。
「それから別件で、ケイさんに出演依頼が来ています」
次回はジストペリドとの共演と、ケイへのオファーについてです。
フェスに向けて動き出すのか?
ゆっくり更新ですのでブクマしてくださいねー
ジストペリドが出てくるのは
悠月 星花様
「僕のアイドル人生詰んだかもしんない ~ 転校生は僕の運命の歌い手?! 色気あるバリトンからハイトーンまで……アイドル底辺からの下剋上の歌 ~」
こちら三部作の一作目になります。
https://ncode.syosetu.com/n5201ic/
それではまた二週間後にお会いしましょう!