4 星は動く 2
前回に引き続き、打ち上げ中です。
「いやあ、それにしても錚々たる顔揃いですね。リュウさん、流石に顔が広い」
そう言って祐介はキョロキョロと辺りを見回しては、おお、秋本美咲だ、かわいいー。ハイドランジア! 綺麗どころが揃ってるよ。あっちはwing guys、若いねー、クールだねー! とミーハー丸出しで興奮している。ついつい浮く尻をリュウヤがぺしっとはたいた。
「あー、うるさい。お前ちょっと浮かれすぎだ!」
「あいたっ、リュウさんひどいですよー」
渋々といった様子でもぞもぞと座り直した祐介は、Riser☆s のメンバーに愛想のいい笑顔を向ける。
「どうも。壱星くん以外ははじめましてだよね。大森祐介と申します。どうぞよろしく。いやあ、流石にイケメン揃いだねー。俺一人おじさんで申し訳ない」
「お前ヘラヘラしながら自己紹介すんな。相変わらずにぎやかな男だ」
仏頂面で文句を言うリュウヤを軽くスルーして祐介が言う。
「俺のこと知ってる人もいるだろうけど、ここは俺の行きつけのお店なんだ。リュウヤさんの全国ツアーの打ち上げにぜひ使って欲しくて予約しといたんだよ。だてにリュウヤさんの追っかけしてないからねー。Riser☆sの皆さんも楽しんでいってくださいねー」
「だからお前はミーハーだって言ってるんじゃねえか」
そんな二人のやり取りに、悠人がためらいがちに口を挟んだ。
「あの、大森さんってもしかして、ココハナの社長さんですか?」
他の壱星以外のメンバーが驚いていると、
「ああ、そうですよ。でも僕堅苦しいのキライなんで、気軽に祐介って呼んでもらえたら嬉しいな。僕にとってはその方がご褒美なので!」
と弱冠食い気味に顔を寄せて言う祐介に、一斉にメンバーが身を引いた。
「祐介さん、妙なインパクトありますね。さすが社長さんなだけありますね」
感心したように呟く翼を見て、祐介の瞳がキラリと光る。
「おお、君は栗栖 翼くんじゃないか! あのドラマ見てるよー。相手役の女優さんとも話題になってたよね!」
そう言ってグイグイ顔を近付けようとする祐介の頭をリュウヤが再びぺしっとひっぱたいた。
「お前、いい加減にしろよ。本人にゴシップネタ追及するなど三十年早いわ」
すると翼は涼しい顔で、
「ですよね。話題性バッチリでしょう。彼女とは番組終了後しばらくしたら破局しますよ。あ、祐介さん、これ内緒にしておいてくださいね」
そう言うと軽くウインクした。おお、萌えだー! とよくわからない感動をしている祐介に、皆が苦笑した。
「あーあ、それにしても今日のステージもすごかったな。やっぱり生歌は迫力が違いますね。リュウさんかっこいい」
「壱星ガン見してたもんなー」
「本当好きだよな」
「いつか一緒のステージに立つのが夢なんだよな」
壱星の呟きに透也と篤志が反応する。
「ん? ステージに立つっていうのはどういうことです?」
すかさず祐介が食いついた。すると悠人が説明する。
「壱星の夢なんですよ。いつかリュウヤさんと同じステージで歌うっていうのが」
「ほほう。いいですね! アイドルとロックスターの共演! 絵になるなー。リュウさんはどうなんですか?」
「俺はいつだってウェルカムだ。Riser☆s もいいTeamになってきてる。タッグ組んだら面白いもん出来るんじゃねえか」
途端に壱星が涙ぐむ。
「やったな、壱星」
「ウェルカムだってよ、もうやるしかないんじゃないの?」
「RYU- SAYとRiser☆sのコラボステージなんてアツすぎるよ!」
「おめでとう壱星!」
メンバーが口々に祝いの言葉を口にしていたその時、ガタンとテーブルの動く大きな音がした。音の先はwing guysのテーブルだった。水無月 凛が拳を握りしめている。
「凛、いい加減にしろ」
「凛くん落ち着いて、ねえ」
水無月を轟 長月と三国 カンナの二人が両脇からなだめているようだった。だが水無月は再びテーブルをガンッと叩くと
「くそ、湊のやつ、くそ、くそ!」
と悪態をついている。それを見た悠人が呟く。
「湊って、ジストペリドの如月 湊のことかな?」
すると壱星が答える。
「そうじゃないかな。確か水無月くんと如月くんは同期だったはずだよ。最近ジストペリドがヒットチャート駆け上がってるからな。ワールドツアーも視野に入れてるって話だから、彼らwing guysにとっては目の上のたんこぶみたいなものなんだろうね」
篤志も言う。
「俺らアイドルの世界は抜きつ抜かれつだからな。彼らは同じ事務所の後発組にトップから落とされたってわけだからな。腹にも据えかねるだろうが。若いねー」
「年寄りくさくなってるよ、篤志。まあ、気持ちも分からなくはないけど」
翼がそう言っていると、
「やれやれ」
リュウヤが立ち上がると水無月たちのテーブルへと歩いて行った。
「おい」
リュウヤが声をかけると三人はビクリと体を震わせてリュウヤを見上げる。リュウヤは軽くため息をつくと言った。
「お前らこれ以上は店の迷惑だ。高校生には遅い時間だろ。お前らんとこのマネがそろそろ到着するはずだ。帰る支度しとけ」
すると轟がスッと立ち上がり、深く頭を下げると言う。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
三国も飛び上がるように立ち上がると、
「ごめんなさい。凛くん、ちょっと落ち込んでて」
そう言ってぴょこんと頭を下げた。
「見りゃわかる。おい、水無月 凛」
戸惑いながら顔を上げた水無月にリュウヤは声をかけた。
次回も二週間後投稿を予定しています。
次回イケオジ リュウヤに注目!
どうなる wing guys?