流星群になろうぜっ! 11
ついにフェス最終回です!
ジストペリドの二曲目が終わり、玄姫やすむのアバターが後ろのスクリーン上に現れる。
「それじゃあ、改めて紹介するよー。MOON HALL 最後のアーティストは、シークレットゲストとして登場した、なんとジストペリドのお二人です! 如月 湊さんと、葉月陽翔さん、ようこそMOON HALLへー! はい、みんな拍手ー」
手で拍手を促したやすむが続ける。
「それでさ、メッセンジャーとして登場したって言ってたけどー、これから何かあるんだよね?」
すると湊が答える。
「はい、この後このMeteor Shower Fes.の最後を飾るパフォーマンスが行われます」
「Meteor Shower Fes.最後に盛大なステージが始まるんだよ」
陽翔がそう言っていると、ステージ上に声が響いてきた。
『MOON HALLの皆さーん、聞こえていますかー?』
「あれ? この声は?」
陽翔がわざとらしく耳を澄ませるようなポーズを取ると、パッとスクリーンが切り替わり、Riser☆sの五人が手を振っている映像が映し出された。その後ろのスクリーンにはステージ上をうろうろしているジストペリドが映っている。透夜が言った。
「あ、見えた見えた! ジストペリドの湊くん、陽翔くん、こんばんはー、Riser☆sです! MOON HALL 盛り上がっていますかー?」
「Riser☆sの皆さん、こんばんはー! こっちも盛り上がってますよー」
そう言って湊がマイクを観客席に向けると、歓声が上がる。
「MOON HALLも盛り上がってますねー、こちらSUN HALLもすごいですよー」
画面越しに様子が伝わってくる。スピーカーからも大きな歓声が聞こえていた。中に、湊と陽翔を呼ぶ声がある。
「みんな、ありがとう!」
「ありがとう、聞こえたよ! それでは壱星さん、どうしてSUN HALLと繋がっているのか教えてもらえますか?」
すると篤志が答えた。
「湊くん、それが違うんだよ。SUN HALLとMOON HALLだけじゃなく、これからEARTH HALL とも繋がるんだ」
「三つのホールが全て繋がるということですか?」
今度はつばさが答えた。
「そうなんだ、ジストペリドの二人も一緒に呼びかけてみてくれないかな? これからEARTH HALLのRYU-SAYさんに呼びかけるよ」
「「わかりました」」
「それじゃあ、いくよー。せーの、でEARTH HALLのRYU-SAYさんって呼びかけてね。せーの、」
「「「EARTH HALLのRYU-SAYさーん!」」」
するとスクリーンが切り替わり、右下に少し小さくSUN HALLのRisr☆sが、そして大きくEARTH HALLのRYU-SAYが映し出されると、リュウヤが言った。
「おう、お前ら準備は出来てるか?」
途端に全員がずっこける演技をした。透夜が笑いながら答える。
「いやいや、リュウヤさん。何の紹介もなしにいきなり演奏に入ろうとしないでくださいね」
「俺はしゃべるのは得意じゃねーんだよ」
「その様子だと、そちらは何の説明もしてないですね?……あ、ケイさんたち頷いてるし! それでは改めまして、EARTH HALLの皆さん、SUN HALLのRisr☆s と、」
「こちら、MOON HALLに移動しましたジストペリドです。皆さん盛り上がってますかー?」
今度は三会場が同時に歓声を上げた。透夜が続ける。
「三会場同時開催、そして旭川と小樽ではパブリックビューイングも開かれ、更に配信でご覧になっておられる方もいらっしゃるということで、とても大掛かりなフェスとなりましたが、このフェスもいよいよ最後残り一曲を残すのみとなりました」
客席から「えー、」「まだ終らないで」という声や、口笛、拍手など様々なリアクションが起こる。
湊が口を開いた。
「楽しい時間って、あっという間に終わっちゃう気になるよね。大丈夫、アーカイブ配信もあるから! それに最後の曲はスペシャルだから、三会場同時に盛り上がっていくよ!」
「それじゃ、ここからは壱星に話してもらおうか。壱星よろしく」
透夜がそう言うと壱星が一歩前に出て話しだした。
「これからお送りする曲は、このMeteor Shower Fes.のために作られました。知っている人もいると思いますが、このフェスは本来であれば三年前に開かれる予定でした。けれども日本中、いえ世界中に影響を及ぼしたコロナウィルスの蔓延により、フェスの開催も出来なくなりました。日常生活すら普通に送れない状況になり、俺たちアーティストも活動できない日々が続きました。そんな中で、『いつかフェスを開ける日が来たら歌いたい』という想いを込めて歌詞を作りました」
そこで壱星は言葉に詰まり、一旦マイクを離した。涙ぐむ壱星に、後ろからメンバーが肩や背中に優しく触れ続きを促す。
客席からも、
「壱星くん、頑張ってー」
と声が届く。壱星は指で涙を拭うと再びマイクを手にした。
「この歌詞には、一人ではなく皆で輝こう。たとえ小さくても一人一人の輝きを大切にしよう、という願いを込めました。今日この三つのステージで、その歌を届けたいと思います。曲は、RYU-SAYのリュウヤさんが作ってくれました」
すると客席から、
「壱星おめでとう!」
「願いが叶ったね!」
と拍手の音が聞こえた。
「あ、ありがとう」
そう言うとまた涙を流す壱星を篤志がハグし、悠斗が優しく触れる。壱星からマイクを受け取ると、つばさが言った。
「これからお送りする曲は、RYU-SAYの演奏で、歌はRiser☆sとジストペリドでお送りします。三会場繋げて、皆で盛り上がっていくぜー!」
最後に透夜が言った。
「それでは、最後の曲をお送りします。聞いてください。『流星群になろうぜっ』」
「All of us are members ……」
リュウヤの低い声がアカペラで歌い出し、ここで一拍置いた。指で、『ワン』、『ツー』、とカウントを取ると、
「of」
「「「Meteor Shower」」」
メテオシャワーのところでRYU-SAY、Riser☆s、ジストペリドの全員がさまざまな音程でハモった。
その音が三ステージに響き渡るのを待って、EARTH HALLでRYU-SAYの演奏が始まった。EARTH HALLのスクリーンは二分割され、左側にジストペリド、右側にRisr☆sが映し出されていた。
他のホールでも同様にRYU-SAYともう一つのホールのアーティストが映っている。
三会場を同時に繋いで一つの歌を歌うという盛大なパフォーマンスをもって、Meteor Shower Fes.は終わりを告げた。
幾度か繰り返されるサビの部分は歌いやすい編曲がされており、ラストは会場、パブリックビューイング、配信視聴者がコーラスするという素晴らしいパフォーマンスを見せ、華々しくフェスは閉じられる事となった。
帰宅中のファンが思わず口ずさんでしまうそのフレーズは、これから続く後のFes.にも歌い継がれるきっかけとなり、Meteor Shower Fes.と言えば『流星群になろうぜっ』と言われるほどの名曲として今日も演奏され続けている。
こうしてRiser☆sの壱星とRYU-SAYのリュウヤが夢物語として語ったことから始まったフェスは、大盛況のうちに幕を閉じることとなった。
長らくこの物語にお付き合いいただき、ありがとうございます。
無事Meteor Shower Fes.を書き切ることができました。
2週間後、最終回となります。
お楽しみに!




