流星群になろうぜっ! 10
MOON HALLでもラストステージが始まりました。
シークレットゲストは、もちろん……!
びっしょりと汗で濡れたリドレスが舞台袖に戻ってくると、黒ずくめの背の高い二人組が立っていた。
「お疲れ様ー。すごく熱いステージだったよ」
「君たちの後に出るのはなんか緊張しちゃうな」
気さくに声をかけられて戸惑いながら、
「あざっす」
「お疲れっす」
「どうも」
「あ、ありがとうございます」
とそれぞれ頭を下げていく。
「君たちのバトンしっかり受け継いでラスト盛り上げるからね」
「リドレスの皆さんもぜひ聞いてね」
四人と握手をすると、光の中へと進んでいく二人を半ば呆然と見送ったリドレス。ハタと正気に返ったエラが思わず絶叫しそうになり、慌てて口を手で覆ったまま、うずくまる。
「うそうそうそうそ。なんでこんなとこにあの人たちがいるの? 見られた! このアラレもない格好をーーっ!」
エラが崩れ落ちるように床に突っ伏して嘆き出すと、キル姐がバッサリと切るように言った。
「心配すんな。二人ともあんたのことなんか気にしちゃいないよ」
「うーん、目の保養したー。あの子にも握手させてあげたかったなー」
ベースのビッチが頬に手を当てながらうっとりと言う。
舞台上には帽子で顔を隠した二人組が背中合わせに立っている。
「大物は立ってるだけで絵になるね。ありがたくここでステージを見せてもらおうか。特等席じゃん」
ハゼロが不敵な顔でそう言った時、やすむが言った。
「あんたたち俺のジャマだけはしないでよね」
舞台端から戻り、アバターに切り替えたやすむが司会を始めた。
「さあ、盛り上がってきたMeteorShowerFes.みんな楽しんでるー?」
会場から歓声と拍手が上がる。
「MOON HALLのラストのアーティストだよ。シークレットゲストの登場だー! みんなビックリすると思うよー」
真っ暗だった舞台の中央にスポットライトが当たる。全身黒ずくめでつば広の帽子で顔を隠した二人組に一瞬ざわつく観客たち。
「え、噓」
「きゃっ……まさか」
目ざとく正体を見破った女性の小さな悲鳴が上がる中、曲のイントロが始まり、
「I think about you……」
「I just wanted to tell you...」
帽子を取り払い、素顔を見せた途端に観客席がどよめきと黄色い悲鳴で埋まった。
湊と陽翔は笑顔で手を振ると『シラユキ』を歌い出した。
「いつだって透明な世界から 君を見つめるだけで」
「白雪のような頬をつたう 涙を拭うことはできない──」
「「And I Love you...」」
『シラユキ』を歌い終わると湊が言った。
「改めまして、MOON HALLの皆さん。こんばんは、」
「「ジストペリドです」」
大きな歓声が静まるのを待って陽翔が言った。
「みんなビックリした? 俺たちが来ると思わなかったでしょ? 実はね、ここだけの話。これ、湊のワガママなんだよ」
「こら、陽翔。皆さんが信じちゃったらどうするの。違いますからね! でも、ワガママと言えばワガママかもしれないな。皆さんはこのMeteor Shower Fes.のスローガン知ってますか? We are menbers of」
観客が、
「「メテオシャワー!」」
と返すと今度は陽翔が、
「みんなでー、」
再び観客が、
「「流星群になろうぜっ!」」
と返す。続けて陽翔が語り出す。
「ありがとう。このスローガンには、一人一人が輝く存在であり、お互いを尊重し合い支え合うことで全ての人が輝けるように、というメッセージが込められていることは知っていますか?」
観客席から何人かが、
「知ってる」
と答え、頷いている人もいるが、初めて知ったという顔ぶれもあった。湊が続ける。
「知ってる人もいるし、今初めて聞いたって人もいるみたいだね。今、EARTH HALLとSUN HALL ではこのフェスのオブザーバーでもあるRYU-SAYさんとRiser☆sさんのステージが始まっています。僕たちジストペリドは、このお二組のメッセージを、MOON HALLに参加中の皆さんと配信をご覧の皆様に届けるメッセンジャーとしてこのホールで大役を果たすことになりました」
「知ってる人もいるかも知れないけれど、俺たちジストペリドはRYU-SAYの皆さんに、とってもお世話になったことがあるんです。ファーストアルバムのレコーディングでもお世話になりました。初めてのワールドツアーの時にも貴重なアドバイスをいただきました。前回のツアー中にはロンドンでもお会いしています」
「その時にRiser☆sさんとRYU-SAYさんの想いを受け継ぎたい、と僕たちがお願いしたことがこのメッセンジャーの役割へと繋がりました」
湊と陽翔の呼びかけは静かにMOON HALLを満たしていく。
「Meteor Shower Fes.は『いじめをなくそう』キャンペーンに賛同していて、このフェスの収益の一部はこのキャンペーンに参加している団体に寄付されることになっています。俺たちジストペリドもこのキャンペーンのために出来ることはないかと二人で話し合い、今回このメッセンジャーの役目をすることで得た収益を寄付することにしました」
「僕たちに出来ることは小さなことかも知れないけれど、ほんの小さな輝きでも大切にすることが大事なんじゃないかな。一人一人が周りの人の輝きを見つけて大切にすること、それが『いじめ』をなくす手がかりになるんじゃないか。僕たちもそんな想いを込めて歌いたいと思います」
「それではもう一曲聞いてください。『go foward』」
3HALLともにフィナーレへと動き出しました。
……すみません。更新予約をうっかり忘れていたようです(─.─||)
遅れましたが、投稿しました!_(._.)_




