40 流星群になろうぜっ! 6
HUN:SOCKの舞台が終わった。最後に歌う蟲ケラが半ばヤケクソのように『神様如何様』の宣伝を叫び、EARTH HALLは笑い声に包まれながらHUN:SOCKを見送った。
次に舞台上に登場したのはLAST BULLETSだ。つい先週まで全米ツアーに出ていた二人だったが、その疲れを露ほども見せぬ熱いステージを繰り広げていた。
ツアーの目玉となっていた新曲『Singing from the bottom of the world』を熱唱した友永 夏野は、観客に語りかけた。
「Meteor Shower Fes.にお越しの皆さん、パブリックビューイングで暑い中鑑賞中の皆さん、そして配信をご覧の皆様、どうもLAST BULLETS です! 全米ツアー終了後日本での初のステージをここEARTH HALLで迎えられることを大変嬉しく思っています。俺たちの前のBenzaiさん、HUN:SOCKさんに負けないように熱いステージを届けるので、最後までお付き合いください!」
大きな拍手と歓声が収まるのを待ち、夏野が続けた。
「今回のフェスのスローガン、皆さんもうよくご存知だと思いますが、ここで言ってくれるかな? みんなで、」
「「流星群になろうぜっ!」」
観客席に向けてマイクを向けると大声が返ってくる。
「ありがとう! 俺たちLAST BULLETSもこのスローガンに共感しています。この後SUN HALLに出演する、フェスのアンバサダーでもあるRiser ☆sのキャンペーンを俺たちももちろん見ました。お互いを尊重し、お互いを支え合うこと。一人一人が輝きを放つ大事な存在だと認め合い、共に輝こう。本当にいい言葉だと思いました。だけど、自分の輝きを認めてもらうには、まず自分を相手に認めてもらう努力も必要だよね」
そうして夏野は自分自身も親しい友人に裏切られ、歌えなくなった過去があること、その時に今の相方である春原 隆志に出会い、再び歌えるようになったことを話した。
「伝えるためには、勇気が必要なこともあると思う。そんな時に俺の背中を押してくれた曲があります。まずはその曲を聞いてください。『Bite the Bullet』」
Mr.Loud の名曲『Bite the Bullet』。直訳すれば銃弾を噛め、となるが「やってやるぜ」という意味を持つ。夏野の歌声が聴衆の背中を押すように響き渡った。
「Bite the Bullet、 Bite the Bullet、Bite the Bullet……」
そこに隆志のハモりが追いかけてくる。と同時に夏野が観客にも参加するようにジェスチャー。
「もっと大きく!」
「そう、魂の叫びのように!」
瞬く間にホール中に掛け声が響き渡った。
「センキュー!」
割れんばかりの拍手の中、曲が終わった。夏野がステージ中央に置かれた腰の位置の高い椅子に座ると、再び語り出した。
「俺と春原は高校で出会い、軽音部でバンドを組みました。素晴らしい仲間に囲まれて演奏した文化祭の舞台は今でも忘れられない。その時に演奏した曲が、俺たちのデビュー曲になりました。今、ここで歌えるのはあの時成功させた舞台のおかげとも言えるかな。誰かに『助けて』と声を上げることはすごく勇気のいることだと思う。でも、俺も春原もそんな君を応援するから。きっと世界は変えられる。そう信じてほしい。俺たちのデビュー曲を聞いてください。『Listen to Our Soul』」
春原の軽やかなギターの音色に合わせて夏野の伸びやかな歌声がホールを満たしていく。先程までの熱気冷めやらぬ観衆が一時酔いしれるように夏野の歌に身を任せていく。やがて曲は徐々に力強く響き出し、クライマックスへ。
「さあ──世界よ、僕らの歌を聴け」
夏野の声が消えていくと、春原のギターも余韻を残すように消えていく。
「ありがとうございました!」
夏野がステージ上で一礼すると、観客はスタンディングオベーションで拍手を送った。
この時の彼らのステージは多くの観衆を勇気づけ、このフェスラストの感動の一幕に更に彩を添えることになった。
友永 夏野と春原 隆志が、心地よい疲れを感じながら舞台を降りた時、突然声をかけてきた者がいた。
「Excuse me……」
彼女はマリア・カナリーのマネージャーだと自己紹介をし、彼らに頼みがあると切り出した。その驚きの申し出に、快く賛同した彼らは、この後再びステージで輝くことになる。
その後、EARTH HALLは休憩時間に入り、ステージ上のスクリーンにはMOON HALL、SUN HALLのステージ映像がダイジェストで流されていた。
その中でも着々と次のグループの準備が進められていた。無事旭川にたどり着いた三日月 満の所属する「be <(ビー クレッシェンド)」、通称「ビークレ」。三日月がボーカルとギターを受け持つこのバンドも、舞台を熱くさせる準備が整っていた。
「さて、一発かましに行こうか」
そんな三日月の掛け声に、
「おー!」
と声を合わせたメンバーは、光の舞台へと颯爽と登場していく。
EARTH HALLの後半戦も、前半に負けず熱狂的な渦を起こすことになる。
今回は未来屋 環様の小説からお借りした
LAST BULLETS がメインとなりました。
登場する本編はこちら
「【完結】夏よ季節の音を聴け -トラウマ持ちのボーカリストはもう一度立ち上がる-」
https://ncode.syosetu.com/n8380hl/
またこの作品、現在改稿された最新版が別サイトのカクヨムにて絶望連載中です。そちらも良ければお楽しみください。
「夏鳥は弾丸を噛む -傷心のボーカリストは二度目の春を歌う-」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089522553543
三日月 満は悠月 星花様の小説からお借りしています。
「僕のアイドル人生詰んだかもしんない ~ 転校生は僕の運命の歌い手?! 色気あるバリトンからハイトーンまで……アイドル底辺からの下剋上の歌 ~ あれから3年流れて ~」
https://ncode.syosetu.com/n0562ih/
次回もEARTH HALLの様子をお届けします。
それでは、また二週間後にお会いしましょう。




