34 星は流星群になる 6
読んでいただき、ありがとうございます。
壱成の想いを受け取っていただけると嬉しいです。
「なるほどー、集まってこその流星群ってことですね! 大きく輝く星、星クズみたいにちっちゃい僕みたいな星、いろんな星が集まって流星群になる。フェスも同じ。いろんな役割の人が集まってフェスになるってことですね! いやー、いい話だなー!」
リュウヤの隙をついて抜け出した祐介がペラペラと話し出すと、リュウヤが大きなため息を吐いて言った。
「んな薄っぺらい話じゃねえに決まってるだろ。お前最初の話聞いてなかったのか?」
「???」
きょとんとした顔で首を傾げている祐介に頭を抱えるリュウヤ。
「壱星、説明してやってくれ」
「祐介さん、俺が言いたいのは、流星群にはいろんな大きさの流星が混じっていますよね。その元は宇宙を流れる塵の集まりだそうです。目に見えない小さなものから、時には誰もが目にするほど大きく光って燃え尽きるものまで。どれも大気圏というステージの上で輝く星に変わって燃え尽きていくわけです。一つだけならただの流れ星ですが、その流れ星が集まることで流星群になります。たくさんの流星が輝くことでステージが彩られる。つまり、誰もが輝ける、フェスもそんな場所になればいいなって思ったんです。そしてその一つ一つの輝きが他の流星も輝かせるんじゃないかって俺は思うんです」
「それは、あれですか? 一人はみんなのために、みんなは一人のために、みたいなことですかね?」
「お前、本っ当に全然わかってねーな。壱星が言いたいのは、出演するアーティストだけが輝くんじゃねえ、それを支えるスタッフや観客、フェスに参加する全てのやつがいてこそ、ステージでいいパフォーマンスができるってことを言ってるんだ」
すると祐介がぽんと膝を叩くと、眼鏡の奥の瞳に光が灯る。
「出演するアーティストだけじゃなく、参加する全ての人が輝いてこそ、フェスの意味があるってことですね。……なるほど、それ、いいですね! みんなで盛り上がってこそのフェスですよ!」
「おお、燃えてきたぞー!」と祐介が一人盛り上がっているそばで壱星が呟くように言った。
「そうさ、俺たち皆流星群の仲間……本当にその通りだったんだ」
「All of us are members of Meteor Shower. 一人ではなく皆で輝いて流星群になろう、あれはいい歌だ」
「リュウヤさん、お互いの輝きを認めて仲間だって思えたら『いじめ』だってなくなると思いませんか?」
「どうだろうな、俺は難しいことはわからん。だが、そう思うんならその気持ちは歌で届けるのが俺らの仕事だろう」
「そうですね」
「そうですよー、みんなで流星群になろうー!」
「お前は少し酔いを醒ませ!」
祐介がトイレに立っている間にリュウヤが壱星に聞いた。
「投書の件、ニュースにはならなかったみてぇだが、大変なことにはなってねーか? 華崎が絡むとロクなことにならねえからな」
「心配してくださってありがとうございます。彼女は篤志のファンということだったので、篤志が仲介して華崎さんの娘さんと連絡を取れるようにしました。愛華さんは彼女と会って話をしたそうです。今は二人で協力して謝罪文を集める活動を始めたと聞いています。クラス全員分の手紙を届けるのが目標だそうですよ」
「そうか。お前らの手を離れたのならいい」
「はい、俺たちは俺たちなりのメッセージを届けることが出来たと思います。俺、最近思うんですよ。あの詩を書いた時は、誰もが輝いてこそのフェスだから皆で輝こう、という気持ちを込めたつもりでした。でも、あのメッセージを届けてから歌詞を見直した時、『ああ、そうか』って腑に落ちた部分があったんです」
リュウヤは黙って壱星の先を促すようにグラスを傾けた。中の氷が涼やかな音を立てる。
「いじめって、相手を自分と同じ存在だと認めていれば起こらないんじゃないかな。相手が自分と同じように輝いている存在だと思ったら、いじめようなんてそもそも思わないでしょう? 誰もが輝きを持つ存在で、素敵な仲間なんだって認め合うことが大事なんですよ、きっと」
「俺たちにできるのは、想いを込めて歌うことだ。その歌を聞いたヤツがどう思うかはそいつの自由だろう。だがな、歌が届いたことを感じる瞬間ってのはライブしてると感じることがある。俺がロックを歌っているのはそういうことだ。だから、お前たちはお前たちの歌でヤツらのハートに響かせりゃいい。俺はそう思うぜ」
その時祐介が戻ってきて、
「そういえばリュウさん、何か話があったんじゃないですか?」
と座りながらリュウヤに顔を近づける。
「お前は近ーんだよ」
リュウヤは嫌そうに祐介を反対の手で押し退けると、 グラスを置き足の上で手を組んだ。
「ああ、実はちょっと頼みがあってな……」
リュウヤの話に二人とも目を丸くした。
「え、彼らを? それってステージ後に移動させるってことですよね?」
「ちょっと待ってくださいよ、リュウさん! それはないでしょう」
「俺からの頼みだ。なんとかできねーか?」
しばらく祐介は唸りながら頭を抱えていたが、やがて大きなため息を吐くと言った。
「わかりました、なんとか考えましょう」
大きな波を乗りきり、成長したRiser☆sと壱星。いよいよ舞台はフェス開催へと走り出しました。
次回より最終章に入ります。もうしばらくお付き合いよろしくお願いいたします。
それでは、また二週間後にお会いしましょう。




