30 星は流星群になる 2
今回も重いテーマを続けます。Riser☆sが出した結論とは……
結菜はその後学校を休むようになり、責任を感じたA子はその時のニュース記事を調べ、自分なりに考えた。
全ての事実が記事になっているかはわからないが、結菜が亡くなった彼女をハブったことが原因でクラス中が彼女に辛く当たるようになったこと、SNSでの交流も潰され、他に相談する相手もいなかったことから孤独感を募らせ自ら命を絶つまでになったことなど、結菜がA子に伝えたこととそれほど違った内容の記事はなかった。
結菜はその後も登校せず話す機会も取れなかったため、A子は担任に相談し二人で結菜の見舞いに訪れ彼女の気持ちを聞き取ることになった。
そして訪れた彼女の部屋で、結菜の家族が学校からいじめの報告を受けた後『今後彼女に一切関わらないこと』を厳命し、グループSNSも解除させられたこと、少女が亡くなったときも弔いに行かせてもらえなかったことなどが分かった。『どの顔下げて行くつもりだ、この恥さらしが!』という父親の恫喝に怯え、それ以後この事件のことは全て自分の胸にしまい込むことにしたことも。
彼女を除け者にし、グループから一時的にでも外したことを後悔していること、あのときどうして意地になって彼女に声をかけなかったのか、彼女の悲しそうな顔を今でも夢に見ること、彼女に一言でも謝りたかったこと……。担任もA子も一緒になって涙ぐみながら彼女の話を聞いたことが書かれていた。
やがて彼女は再び登校するようになったが、少しずつ浮かべるようになっていた笑顔がまたなくなってしまい、どうすればいいのか悩んでいた時にこの番組の再開を知り、思い切って連絡してみようと思ったことなどが書かれていた。
「結菜さんは篤志のファンだったみたいだね」
全員で投書を読んだメンバーに向けてリーダーの透夜が口を開いた。
「さて、これをどうするかなんだけど」
すると悠人が答えた。
「ついにバトンが回ってきたって感じかな。華咲さんから話を聞いた時俺たちとしても何かできることはないかって話し合ったよね」
「あの時は亡くなった彼女が壱星のファンだったからということで、壱星だけがSECRETに入ってメッセージを送ることになったんだよね」
悠人に続き翼も声を上げると、透夜がそれに答えた。
「そう。メテオシャワーフェスで俺たちRiser☆sはバックアップに回ったわけだけれど、元はといえば俺たちのファン同士のもめ事が原因だったとも言えるよね。といっても俺達に直接関係があるわけではないし、あの時は壱星がSECRETとして舞台に立つことを応援したんだ」
透夜がさらに続ける。
「亡くなった彼女への追悼の意味もあるメッセージに、加害者側もファンだった俺たちが直接関わるのはどうかという意見もあって、応援という形に落ち着いたんだよね。だけど、今回は難しい問題だよ」
メンバーの話を黙って聞いていた壱星が言った。
「そうだね。今回の結菜さんは加害者側のリーダーで、彼女が亡くなる直接の原因を作ってしまった人でもある。そんな彼女を救う必要はない、当然の結果だと考えるのが一般的な評価かも知れないね。それに、結菜さんだけでなく結菜さんのご家族の問題もあるんみたいだね。亡くなった彼女のご家族がどう思われるか、という問題もあるよね」
「そういえば壱星、SECRETのメンバーで今度ご自宅に伺うんじゃなかった?」
「そうなんだ。華咲さんを通して連絡は取ってもらっていたんだけど、今度改めて俺たち三人でご遺族に活動のご報告と彼女のお墓参りにも行かせていただく予定があるよ。……確認だけど、みんなこの問題に関わって何とかしたい、という気持ちなんだよね?」
壱星が尋ねると、透夜は頷き、翼、悠人が口を開く。
「俺は最初に言った通り、関わるべきだと思ってるよ」
「俺も難しい問題だとは思うけれど、壱星だけが関わっているのは何か違うなって心のどこかで納得していない部分があったんだよね」
最後に篤志が答える。
「俺が関わらねーわけにはいかないだろう? 結菜さんは俺のファンなんだろ? それに彼女のいたグループは俺たちのコンサートに来てくれた大切なファンだ。亡くなった彼女も俺たちを応援してくれていたんだろ? 俺たちが今回幸せを届けられるかはわからないが、せっかく回ってきたバトンはしっかり届けたいと思う」
そんなメンバーをぐるりと見渡すと透夜が大きく頷いて言う。
「よし、それじゃあこの企画にどう取り組むか、マネージャーやプロデューサー、番組のスタッフも含めて計画を練ろう。俺たちだけで解決できる問題ではないし、いろんな人の意見も聞いて進めようか」
こうしてSECRETが投げたバトンはRiser☆sへと受け継がれ、また大きな流れが生まれることになるのだが、それにはいくつもの大きな壁が立ちはだかることとなった。
Riser☆sのマネージャーを始め、所属事務所の社長もこの企画を進めることには難色を示した。社長自らがわざわざ会議室に来て「この企画はやめておけ」と厳命された。加害者を擁護するなど何を考えているのか、と厳しい言葉も受けた。
メンバーはその後も何度も自分達に何ができるのか、どう進めるべきかを話し合ったが、結論を出すことが出来ないまま時間だけが過ぎていった……。
最新話までお読みいただきありがとうございます。
もうしばらくFes開催までかかります。
私なりにこの大きなテーマに向き合い、彼らにバトンを託したいと思います。
ご意見、ご感想お待ちしています。




