29 星は流星群になる 1
本物のFes開催に向けて動き出したRYU-SAYとRiser☆sですが……
メテオシャワーフェスが終わると、その収益を元にMeteor Shower Fes.実行委員会が再度立ち上げられ、本格的にフェス開催に向けて動き出すことができた。Riser☆sとRYU-SAYも応援サポーターとして忙しく活動を始めることとなった。
フェスでのLAST BULLETSとBenzaiのアピールも功を奏し、『みんなで流星群になろうぜっ!』を合言葉にキャンペーンも打たれた。来年からの開催に向けて参加アーティストとの交渉も始まった。参加アーティストの確定報道は時間差で小出しに行われ、フェスへの期待を煽っていくことになる。
V-bexはメテオシャワーフェスでのアーティスト大量投入で、『Vフェス』『なりふり構わない会社』『メテオシャワーフェスを食い物にした』など散々に叩かれる結果となったが、その反面、綺羅めくるはセカンドブレイクに成功し、復活アイドルとして華々しく活躍を始めた。またHUN:SOCKもこのフェスをきっかけに知名度を得て大きく活動の幅を広げた。そして、綺羅めくるとコラボした『歌う蟲ケラ』は、自身のデビュー曲リリースでもかなりの売り上げをはじき出し、一躍ガールズバンドとして注目を浴びることに。
それぞれの躍進で社としては大成功を納め、見事コロナ禍を乗り切る手腕を見せた華崎は、バッシングなどどこ吹く風と言う対応をマスコミには見せていた。
そして、フェスでは三会場同時中継という荒業で登場したSECRETは、年内限定での活動を発表。フェスでの公言通り、収益は全て各団体に寄付されることを明言し、いくつかの歌番組で「CALL NO.114」を歌った後解散した。
華崎は表舞台から姿を消し、社長業へと戻っていき、壱星とリュウヤはその後この件に関しての一切のコメントを発表していない。コメントを求められると「活動は終了しました(した)。あの歌が少しでも多くの人に届くことを願っています(届けばいい。それだけだ)」とだけ答えている。
二人ともコロナ禍の終息に伴い、それぞれの活動に忙殺されるようになっていた。RYU-SAYは年明けから海外公演が再開し、欧州アメリカ横断ツアーへ。Riser☆sも冠番組『Riser☆sにおまかせ! 〜あなたの幸せお手伝いします〜』の収録が再開し、全国ツアーとの両立で目の回るような忙しさの中にいた。
活動の合間、ささやかにRYU-SAYと交流を深めていたグループがいた。ジストペリドだ。彼らの初となる海外ツアーのイギリス公演の日程がRYU-SAYと重なっていたことから、ロンドン公演で急遽サプライズゲストとして舞台に二人が登場することになったのだ。ステージで「シラユキ」と「Out of Distance」を熱唱した彼らは、これをきっかけに海外でも多くのファンを獲得することになっていく。
またその夜の打ち上げで陽翔が言った一言がきっかけで、その後のMeteor Shower Fes.がとんでもない難題を引き受けることになる。
一方、Riser☆sもまた一つの出会いが大きな波紋を呼ぶことになった。それは冠番組への一通の投書に起因する物語だった。番組宛に届いたそのメールはメンバーが無視できない内容のものだった。
『初めてお便りします。いつも番組楽しく見ています。◯◯高校二年のA子と言います。友人に力を貸していただきたくて連絡させていただきました……』
そこに書かれていたのは昨年のフェスでSECRETが撒いた種が芽吹き、一つの大きな蕾に手を伸ばした物語だった。
投書の人物は昨年学期途中で転校してきた結菜という少女と友人になった。明るい茶髪をゆるくウェーブさせ薄く化粧もしている目立つ顔立ちであるのにも関わらず、クラスでは挨拶くらいしか口を聞かない彼女が気になり、声をかけたそうだ。
「あたしといてもつまんないよ」
最初はめんどくさそうにしか受け答えしない彼女に少し嫌な気持ちになったが、一度も目を合わせようとしない彼女の様子が気になり声をかけ続けた結果、少しずつ話してくれるようになったそうだ。
年度途中での転校生ということもあり、何かわけありなのだろうとその理由については結菜が話してくれるまでは聞かないでおくことを決め、同じグループのメンバーにも伝えて仲間に引き入れたと書かれていた。
新学期が始まり、再び同じクラスとなったA子は相変わらず沈んだ様子の結菜がRiser☆sのファンであることを知り、
「それなら『今すぐコール』してみたら?」
と流行りのL字ポーズをしてみせたところ、突然結菜が泣き出したそうだ。
「そんなことできるわけない!」
興奮する彼女を保健室に送り届け、そこでようやく彼女の転校理由を聞くことができた。それは想像以上に重い話だった。結菜はあの事件を起こしたグループのリーダー格の少女だったのだ。
「あの子を殺したのは私! そんな私が許されるはずがないじゃない!」
その時A子は何も言うことができなかったそうだ。
すみません。もうしばらく重い話が続きますが、お付き合いいただけると幸いです。
二週間後に続きます。




