24 星は歌う 5
メテオシャワーフェスのプログラムが始まりました。
今回とゲストが大活躍します。
MOON HALLでは綺羅めくるが静かに舞台に上がると、中央に立つ。一拍の間を置きシャウトした。
「USSAYーーーーーYOHーーー!!」
パンチのあるイントロが流れ、綺羅めくるが身体全体から声を出すように一気に歌い上げていく。バックでの演奏は「歌う蟲ケラ」のメンバーだ。
『綺羅めくるってアイドルだよな? え、かっけーんだけど』
『ぱねぇシャウト、インパクトあるわ』
『歌うまくない?』
チャット欄に好意的なメッセージが並ぶ。
同時刻、SUN HALLの舞台には壱星を除くRiser☆s のメンバーがいた。開催宣言の後、ジストペリドを紹介して舞台横に設置された司会者席へと移動する。壱星の不在については一切触れない。間を置かず登場したジストペリドの如月 湊とHinato に話題は引っ攫われていく。ジストペリドがデビュー曲「go forward」続いて「プロローグ」と歌い上げていく。チャット欄は二人を応援する書き込みで瞬く間に埋め尽くされていく。お陰で壱星の件が追及されることはなかった。
その頃、EARTH HALLでは司会役の旭川サンサンFM のDJが明るい声で開催を宣言し、トップのLAST BULLETSをコールしていた。舞台上では春原がギターをかき鳴らし、合わせてバックバンドの演奏が始まる。音が一段大きくなったところで夏野が舞台に飛び出し、シャウトした。
「LAST BULLETS!」
「メテオシャワーフェスを視聴してくれているみんな、ようこそライブへ! トップの俺達の歌を楽しんで欲しい。みんなの書き込みは会場でも見えるようになっているから、どんどん応援よろしく! それでは早速聞いてください。曲は……」
その様子を舞台袖で食い入るように壱星は見ていた。小柄な夏野の声が、伸びやかに会場中に響いていく。観客席にはこの後の出演者や関係者のみが指定された場所で観覧することができる。普段よりは少ない観客だが、代わりに観客席の一部にスクリーンが貼り出されており、そこに配信画面とチャット欄が映し出されるようになっている。夏野のシャウトに続き、呼応するようにチャット欄にも「LAST BULLETS!」の文字が踊り、続いて続々と応援メッセージが書き込まれていく。
夏野は曲と曲の間にそのコメントを拾ってはレスポンスを伝えていた。
「今日この場には来れなくても、みんなの声は届く。応援してくれてありがとう! 次はこの会場で会えることを祈ります。来年は、『メテオシャワーフェスで会おうぜ!』 We are members of」
そう言うと夏野は会場側にマイクを向けた。だが、声出しはNGだ。替わりに温かい拍手が起こった。そして、チヤット欄には「メテオシャワー!」
「meteor shower!」という書き込みが溢れ返るほど届いていた。壱星の目に涙が浮かぶ。
パフォーマンスを終えた夏野が退場してくると袖にいる壱星に気付いた。涙ぐむ壱星に親指を立ててみせ、軽くウィンクを寄越した。
「……ありがとうございます」
「君も繋ぐといい、本物のフェスにね」
「は、はい!」
壱星にとって忘れられないフェスの幕はこうして開かれた。ぐいっと腕で涙を拭いながら壱星は踵を返すと控え室へと戻っていく、まっすぐに背筋を伸ばして。
フェスが中盤に差し掛かる頃、壱星は控え室の並ぶ通路にいた。舞台袖まで数メートルのところでマイクとイヤホンを装着している。カメラが待ち構える手前にタブレットが置かれており、SUN HALLでのパフォーマンスが映されている。パフォーマンスが終わり、MCのRiser☆sメンバーが二言三言感想等を交わす。
「そろそろだね」
EARTH HALLではKing&Queenのパフォーマンスが終盤に差し掛かっていた。王 小鈴の高らかな歌声が扉越しにも響いている。そのとき、SUN HALLからの声がイヤホンに聞こえてきた。リーダーの透夜だ。
「さて、視聴者の皆さんもお気づきだと思いますが、今日壱星の姿が見えないよね?」
篤志、つばさ、悠人が続ける。
「そう、実は壱星はこのSUN HALLには来てないんだよね」
「壱星が今どこにいるかというと……」
「ちょっと呼んでみようか? せーの、」
「「壱星ーーー!」」
タブレットの映像がSUN HALL舞台へと移り、スクリーンにカメラの映像が映し出される。壱星が少し緊張した顔で映し出されると、透夜が話を振る。
「壱星、今どこにいるの?」
「はい、今いるのは舞台のすぐ近くの通路です。音、聞こえますか?」
「んー、微かに聞こえる気がするけど、それどこなの?」
「俺がいるのはEARTH HALLです。実はこの後、ここで特別なパフォーマンスをすることになってるんです」
そのとき、扉が開き真っ赤なチャイナドレスに身を包んだ女性が姿を見せた。
「ハーイ、壱星。あなたこんなところで何をしてるの? あら、中継ね?」
「うわ、王 小鈴だ!」
「これはサプライズですね、King&Queenの王 小鈴と、おお、後ろから鬼崎達哉も!」
「小鈴さん、鬼崎さん、お疲れ様でした。今SUN HALLと繋がってるんです」
カメラに向かい、二人がにこやかに手を振る。鬼崎が言った。
「あれ、Riser☆sはSUN HALLに出てるよね。ということは、君も次の演奏に関係があるのかな?」
「はい。この後EARTH HALLでは『SECRET』と書かれていたプログラムが始まります。このパフォーマンスはSUN HALLとMOON HALLにも中継でお届けすることになっています。俺もそれに参加します! 今回のパフォーマンスには特別なメッセージが込められています。たくさんの人に届き、伝わることを願っています。それでは、行ってきます!」
いよいよSECRETの舞台が始まります。
一体何が起こるのか。二週間後をお楽しみに。
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