23 星は歌う 4
今回はEARTH HALL出演アーティストお披露目です。
EARTH HALLに出場するのは、トップのLAST BULLETS、King & Queen、Benzaiと名だたるアーティスト達だ。V−BexからはKing & Queenと華崎が出場する。華崎は壱星、リュウヤと組み、バックバンドとしてRYU-SAYが登場する。華崎は持ち歌から代表曲の「Revolution」と「翼をください」を歌い、最後に三人で「CALL NO.114」を歌う。ただし、プログラムには曲名もアーティスト名も記載されておらず、どちらにも「SECRET」と印刷されている。マスコミにすら話していないため、様々な憶測が飛び交っていた。
有力なのはやはり立役者のRYU-SAYが表立って参加表明したくないための裏工作というものだ。当たらずとも遠からずといったところだろう。もちろん壱星がEARTH HALLに出場することも伏せられている。SUN HALLの幕が上がった時点で騒がれることになるだろう。
EARTH HALLにはもう一つ目玉となるアーティストが参加している。こちらは中継でロンドンのライブハウスからの配信となる。親日派で知られる彼らはコロナ禍で日本ツアーをキャンセルせねばならなかった。せめて日本のファンにライブを届けたいとオファーがあったのだ。「Jackal」の参加表明はEARTH HALLのチケットの売行きに大きく貢献していた。彼らの参加表明PVの再生数は記録的な数字を叩き出した。
『日本ノミナサーン、メテオシャワーフェスで会イマショー!』
にこやかな顔で手を振る彼らに、ファンは熱狂していた。彼らの参加は海外からの関心も誘い、数社への配信転売も獲得することになった。有難い限りだ。
楽屋に入ると、壱星の姿があった。
「おはよう、早いわね」
声をかけると飛び跳ねるように椅子から立ち上がった壱星が、
「おはようございます、華崎さん。今日はよろしくお願いします!」
そう言って丁寧に頭を下げた。
「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。ステージの上では対等よ、わたしたちは。……あら、もう緊張してるの? そんなんじゃ本番までもたないわよ」
そう華崎が笑って言ったが壱星の顔は強張っている。その様子に軽くため息を吐くと声をかけた。
「これから夏野のところに行くのだけれど、一緒に来る?」
「え、LAST BULLETSの友永 夏野さんですか? いいんですか? ぜひ!」
LAST BULLETS はリハーサルを終え、控室にいた。華崎が入っていく後ろから壱星が「失礼します」と声をかけて入っていくと、友永夏野が椅子から立ち上がった。
「華崎社長、ご無沙汰しています……あれ? きみはRiser☆sの……?」
「おはようございます友永さん、春原さん。Riser☆sの佐ノ川谷壱星です」
「え? 君たちSUN HALLに出るんじゃなかったっけ?」
「はい。他のメンバーはSUN HALLの司会進行をすることになっています。俺は、その……」
壱星が口ごもると華咲が謎めいた笑みを浮かべながら言った。
「ふふ、だからSECRETなのよ。ナイショにしといてね、春原」
「へえ、ソロで出るんだ? 面白いね。ご無沙汰しています華咲社長。今日はよろしくお願いします」
夏野が礼儀正しく頭を下げると、
「トップのあなたたちには期待しているわよ。いつも通り、アツくさせてね。私たちの出番まで、ね」
「えっ、それって鮎美サンの歌が聞けるってことですよね? じゃ、シークレットって二人でデュオでもするんですか?」
春原が意外そうに話すと、
「だから、ナ・イ・ショよ。本番まで楽しみにしていてね。ところで夏野、ちょっと頼みがあるんだけど」
すると夏野は心得たように頷くと、
「サインですね、愛華ちゃんに。今日は来てないんですか?」
「さすがに関係者枠に入れられないわ。ホテルにはいるからそこで観てるはずよ」
「もう高校生ですよね。まだ変わらずファンでいてくれるなんて嬉しいです」
そう話しながら慣れた様子で色紙にサインをすると華咲に手渡した。色紙には『愛華ちゃん、いつも応援ありがとう』と言葉が添えられている。
華咲と夏野が話している間に春原が壱星を手招きした。
「緊張してる?」
「はい、まさかロックフェスに自分が出るなんて思ってもいなかったので」
「難しく考えなくていい。Bite the bulletだ」
「え? それはどういう……」
「ありがとう、夏野。娘も喜ぶわ」
そのとき、華咲の声がして話は終わりになった。夏野がくるりと振り向き、笑顔で言った。
「壱星くん、君のパフォーマンスも楽しみにしているよ」
「壱星くん、『やってやるぜ』だ」
二人の言葉に、
「はい、華咲さんの胸を借りて頑張ります」
なんとか声を繋いだ。
「春原と何を話していたの?」
「いえ、特には。そうだ、華咲さんBite the bulletって何のことかわかりますか?」
「え? ……ああ、直訳すると『弾丸を噛む』だけど、確か意味は『困難に立ち向かう』だったかしら。彼らがよく聞いていると言っていた曲の歌詞だったと思うわ」
「そうですか。いい言葉ですね」
「そう? そうだ壱星くん、良ければ彼らの演奏を袖で聞いてみる?」
「いいんですか? お願いします!」
そう言った壱星の肩の力が抜けていることに少しほっとする華咲だった。
こうしてメテオシャワーフェスの舞台は着々と整っていき、定刻。三会場同時に演奏の幕が上がる。
この物語、楽しんでいただけていますか? 良ければいいね! 下の方にあるハートマーク押して応援お願いします!
今回もコラボアーティストのゲスト出演がありました。今回メインで登場したLAST BULLETS、King&Queenが登場する作品はコチラ
【完結】夏よ季節の音を聴け -トラウマ持ちのボーカリストはもう一度立ち上がる-
作者:未来屋 環様
https://ncode.syosetu.com/n8380hl/
そしてBenzaiはコチラ
再結成
作者:如月文人様
https://ncode.syosetu.com/n7988ic/
こちらの短編の続編は
再結成~afterstory~
作者:如月文人様&いでっち51号様
https://ncode.syosetu.com/n2569ih/
次回はEARTH HALLの舞台です。お楽しみに!
それではまた二週間後にお会いしましょう




