表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流星群になろうぜっ!  作者: まりんあくあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/49

19 星は再び動き出す4

華崎鮎美と面談したリュウヤ。

華崎からの提案とは?

「俺に会いに来るとはいい度胸だな、鮎美」

「フェスのこと、きちんと説明しないとあなたは納得しないでしょう。それに、大事な話があるのよ。とりあえず会えて良かったわ、久しぶりね。私が引退して以来かしら?」


 不貞腐れ顔のリュウヤの前に、くつろいだ様子で座るスーツ姿の女性。かつて飛ぶ鳥を落とす勢いでてっぺんまで登り詰めた歌手でもあった華崎鮎美とリュウヤは既知の仲だった。TVの仕事でも幾度も顔を合わせている。もっとも、華崎がV−bexの社長に就任してから会うのは今回が初めてだ。アクリル板とマスク越しの会話は聞き取りにくく話がしづらい。互いに声が大きめになることもあり、傍目に見れば喧嘩腰に見えるだろう面談はこうして始まった。


 ぶすりとしたままリュウヤが言う。


「で、どの面下げて俺に面会なんぞ来た。なんだ、あのふざけたフェスは」

「高槻社長から説明を聞かなかったの? 本物のフェスの開催まで待てないほど世論を急騰させたのはRYU-SAYとRiser☆sでしょう? でも、このままではそのフェス開催まで保たない事務所やアーティストが出るわ。今度のフェスはその救済措置でもあるの。今だからこそ、フェスが必要なのよ。それに、これからのコンサートやライブは変わるわよ。現地に行かなくても自宅で手軽に鑑賞できる環境が整いつつある。今回のフェスが成功すれば、大きな転換点を迎えるでしょう」

「確かに今のご時世じゃ、そのオンライン開催というやつが有効だってのは俺でもわかる。だが、だからといって今までの俺達の活動に便乗してまるで乗っ取りのように開催しようってぇやつに協力するつもりはねーな」


 リュウヤがけんもほろろに追い返そうと手を振ってそう言うと、華崎の口元が引き上がった。足を組み、背筋を伸ばすと言った。


「実はね、大森社長からはもう了承を受け取ったわ。あちらも二年間開催が先延ばしになって、フェス自体を断念するかの瀬戸際だったそうよ。プロモーション費用だけでもバカにならないのはわかるでしょう? プレフェスという位置付けにして、来年本開催に向けての足がかりとしては悪くないでしょう」

「で、V-bexからは自分ところのアーティストを売り出す足がかりにしようってわけか」


 華崎の紅い唇が三日月の形を縁取る。


「もちろんそこは否定しないわ。どの会場にもうちのアーティストを参加させるわよ。でも、配信会社とのパイプは彼にとってもメリットが大きいでしょう? 持ちつ持たれつよ。そしてあなた達もあれだけ拡散したムーブメントは無視出来ないわ。参加だけはしてちょうだい、Riser☆sにはSUN HALLの司会をお願いしたわ。RYU-SAYには矢崎栄太のバックバンドをしてもらえないかしら? もちろんグループで出演してくれるなら言うことないけれど」

「それは断る。俺は筋の通らないやり方は好かん。だが、俺のことはどうするつもりだ?」


 華崎の手の上で踊らされているようで不快感を顕わにするリュウヤに、華崎は思いもよらぬ提案をした。


「それについては、別件でお願いしたいことがあるの。あなたと壱星くんに協力してもらいたいことがね」

「……何だ?」

「私と一緒に歌って欲しいの。メテオシャワーフェスで」

「お前、本気か? 歌手に戻るつもりなのか?」


 さすがのリュウヤもこの依頼には驚きを隠せなかった。華崎は一体どういうつもりなのか。先程の言葉を発した後、俯いて顔を上げずにいた華崎はそのまま絞り出すように言った。


「歌手に戻るつもりはないわ。今はこの仕事で手一杯だから。それでも今回だけは舞台に立たないといけないの。お願いよ、協力してくれないかしら?」


 今までの強気な態度とは一転した華崎に、一瞬演技ではないのかと疑りをかけたが、頭を下げて頼む姿勢にとりあえず話は聞いてみようと思い直し、リュウヤは言った。


「理由は?」


 するとようやく顔を上げた華崎が口を開いた。


「あなたと壱星くんにも関わりのあることよ。たぶん今後ニュースになると思うわ」


 そう言って華崎が話し出したことに、リュウヤは思わず唸り声を上げた。


「なんてこった、それは……」

「そのことで、あなたにお願いがあるの」


 華崎の話を聞いたリュウヤはしばらく腕を組んで考え込んでいたが、大きなため息を吐くと言った。


「わかった。俺から皆に話しておく。曲はフェスまでに仕上げりゃいいんだな?」

「お願いするわ。私からの話は以上よ。高槻社長には話を通しておくから」


 華崎と別れたリュウヤは、重い気分を抱えたままセイジたちの元へと向かった。話を聞いた他のメンバー達もやりきれない思いを共有することになった。黙ってしばらくそれぞれが物思いに沈んでいると、マルが声を上げた。


「なあ、リュウさん。話はわかったけれど、なぜその話に華崎鮎美が関わってくるんだ?」

「……加害者の一人が鮎美の娘なんだとよ」


 それを聞いたメンバーは更に重苦しい空気を共有することになった。ケイがため息を落とすと言った。


「リュウさん、詳しい話を聞かせてもらえるかい?」

「ああ」

最新話をお読みいただきありがとうございます。

ここからの物語は いでっち51号様の

「歌う蟲ケラ」からヒントを得たストーリーとなっています。いでっち51号様の作品とはまた少し違った展開にはなりますが、両方楽しんでいただけると嬉しいです。


「歌う蟲ケラ」はこちらからどうぞ


https://ncode.syosetu.com/n8206ic/37/


それではまた二週間後にお会いしましょう!

いいね、ブクマお待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
本物のフェス開催までもたない事務所やアーティストがでる可能性……たしかに華崎さんの言い分ももっともな部分はあるかもしれないけど、リュウヤさんにしてみれば「はいそうですか」ってすんなり協力しようって気持…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ