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16 星は再び動き出す 1

なかなか開催できないメテオシャワーフェス。そんな中、壱成が動き出した。

「グループラインにアドレスを送信していますので確認してみてください」


 そう言われて各自がスマホを取り出しアクセスしてみると……


「へえ、こんなふうに見られるのか」

「すげーコメントの数じゃん」

「あ、オレのこと書いてくれてる。無事元気な姿を見られて嬉しいって」

「相変わらずセイジのアドリブすげー、ってアレ受けるの毎回大変なんすよ? セイジさん合図くらいくれません?」

「何言ってんの、シンもノリノリだったじゃん」

「飛ばしてたよねー、思わずつられちゃったよ。面白かったけどね」


 マスク越しの会話は自然と声が大きくなる。そのとき咳ばらいとともにもう一人のマネージャー、水野が入室してきた。バスの到着が知らされ、全員が帰途に着く。本日はホテルで一泊し、明日はまた東京へ戻り、今後の打ち合わせが事務所であるということだった。


 ホテルの部屋で一息ついていると、携帯が鳴った。祐介からだ。


「おい、一杯食わせやがったな!」

「ほんのサプラーイズじゃないですかー、あ、言っときますけどオファーしたのは僕ですけど、内緒にしたのは壱成クンですよー。いやー、久しぶりに盛り上がりましたねー、これでMOON HALLも一息つけるでしょう」

「いろいろ文句はあるが、感謝してる。なにはともあれ久しぶりにライブが出来た。新曲のレコーディングも始まるようだ」

「おお、何よりですね! ところでリュウさん、今度Riser☆s もEARTH HALLで無観客ライブするんですよ、メッセージ送っちゃったりしません?」

「サプライズでなら考えてやろう」

「もっちろんですよー……」


 こうして少しずつ活動再開の方向性が見えてきた。新曲の収録も始まったが、完成は困難を極めた。狭いスタジオにメンバーが揃って収録することが出来ないため、基本的には個別に音を録っていかねばならない。完成までに何十倍もの時間を要した。YouTubeの配信と単発の無観客ライブ、時折まれに入るテレビの収録で何とか食いつなぐ日々。


 手探りの状態で何度目かの自宅待機中のことだ。セイジが子どもからの感染で活動中止となり、リュウヤはまた一人アコースティックギターで過去のリリース曲のセルフカバーを収録しようと自宅のスタジオで練習していると、壱成から連絡があった。Riser☆sも透夜とうやが感染、続いて翼、と活動範囲の広いメンバーが次々とコロナの波に呑まれていた。全員揃っての活動がなかなか出来ず、今また自宅待機中とのことだった。壱成自身も発熱はしていないが喉に違和感があるらしい。


「おい、無理して連絡してくることはないんだぞ?」

「あの、実は見てもらいたいものがあって……」


 珍しく歯切れの悪い口調で口籠もる壱成を心配しつつ待っていると、


「実は歌詞を書いてみたんです。Meteor Shower Fes.をイメージして……」


 祐介の提案で動き出したMeteor Shower Fes.は、既に二回の延期が決定していた。屋内でのライブは制限が緩和され、開くこと自体は可能になっている。だが、以前のように全席満席での開催、コール&レスポンスや声援などは禁止されており、客席との一体感が売りのライブ開催は厳しい状況が続いていた。加えて多くのグループが一度に出演するような大掛かりなものは入れ替えごとにステージそのものを消毒する必要もある。


 一方で野外フェスは緩和され、人数制限なども屋内に比べれば緩く、集客も見込まれるイベントとなっていた。だが、感染拡大の一端になっているという批判も大きく、事実クラスター発生の報告も報道されており。大きいフェスほど開催に二の足を踏む状態が続いている。


 つい先日の家飲み回でも、


「今は辛抱強く待つしかないっていうことはわかってるんですよー! それでもこんなに何年も開催出来ないなんて、誰も想像出来なかったし僕もいい加減心折れそうじゃないけど、そんなふうに思われちゃうんですよーっ!」


 と祐介が愚痴なのかなんなのかよくわからない管をずっと巻いていてかなり鬱陶しかった。だが主催者としてこう何度も延期になるとやっていられない気持ちになるのもよくわかる。なので閉口しながらも言わせておいた。リュウヤもフェスの開催を待ち望む気持ちは少なからずあるからだ。


 そんな中壱成はフェス開催に向けて何か出来ないかと考え、Meteor Shower Fes.のテーマソングを作ることを思いついたらしい。


「歌詞を添付したので見てもらえませんか?」


 壱成からの電話を切り、送られてきた歌詞を確認したリュウヤは、


「ほう……いいじゃねえか」


 そう呟くと壱成に折り返し電話をかけて言った。


「壱成、俺が曲を書いてもいいか?」

「え! 本当ですか? ……う、嬉しいですっ……」

「おい、泣くなよ?」

「……」


 相変わらずの壱成の反応に苦笑しながら電話を切ったリュウヤは呟く。


「こいつぁ面白いことになりそうだ」


 こうして、毎年フェスのトリを飾ることになる伝説の名曲が作られた。この曲が壱成の夢を叶える大きな一歩になるなどと、この時は誰も思いもしなかった。

面白いな、続きが気になる!っと思っていただけたら、ずーっと下の方にある⭐️をポチポチポチっと押したり、ブクマ、いいねで応援してください。


感想もらえるとまりんあくあが大喜びします。レビューいただけると、変な舞いを踊って喜びます。


コロナ明けのフェス開催まで、もう少しお付き合いください。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

ぜひ応援よろしくお願いいたします。

それではまた二週間後の21時にお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
メンバーやその周りの人が罹患してしまうと活動も滞ってしまいますね(;´・ω・) 収録もバラバラやってからまとめると、お互いのノリを感じながら演奏ではないので、なかなか勝手が違うというのもあるんじゃな…
[一言] やっぱり、オンラインで曲を作るのは、DAWを使うならまだしも、生音を組み合わせて作るようなグループだと想像以上に時間がかかるのですね…。そうなってくるとミュージシャンたちにとってはなかなかの…
2024/02/15 16:48 退会済み
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