10 星は集まる 3
ジストペリドの番組に出演、そしてケイが出演したのは……
リュウヤの提案に湊は目を丸くし、陽翔が破顔する。
「俺等のシラユキに付いてこれるか? 楽しみにしてるぞ」
「「はい!」」
「ケイ」
リュウヤがケイに何事か耳打ちする。ケイはそれにウインクで返した。
リハーサルが始まった。リュウヤの渋い声がアカペラで歌い出す。
「I think about you. I just wanted to tell you...」
静かにイントロをケイが弾き出すと、セイジのドラムが控えめにスネアとベースを刻む。そこにシンのベースが大きく入り、ビートをリードしていく。と、メインテーマの手前で大きく音が跳ね、マルのギターが唸りをあげた。そこから奏でられていくメロディーは、シラユキであってシラユキではないものだった。しっとりとしたバラードであったシラユキが、ハードなロックに見事にリメイクされていく。
一段と大きくドラムが鳴り響くと、それに負けじとリュウヤの太い声が被さった。
「いつだって透明な世界から 君を見つめるだけで 白雪のような頬をつたう 涙を拭うことはできない……」
高らかに、時に伸びやかにリュウヤのシラユキが流れていく。
「……あの日 消えてしまった 君の笑顔を取り戻したいー」
サビの手前でリュウヤが合図を送ると、舞台袖から歌いながらジストペリドが現れる。まずは湊が、
「伝えられなかった この気持ちは変わらない」
続いて陽翔が、
「叶わなくてもいいと思っていた 君を想った日々」
そしてリュウヤが入り三人で、
「思い出していたのは いつだって君の泣き顔」
サビをハモりながら歌い上げた。
続く間奏の後に、二番の一フレーズめををリュウヤとケイが、二フレーズ目をジストペリド。続くサビはリュウヤとケイ、ジストペリド、リュウヤと陽翔、ケイと湊で歌い継ぐ。
ラストのサビでリュウヤに戻り、リュウヤがカメラ目線で決めの一言を言って終わった。
「And I Love you...」
「スッゲー! 何これ、めちゃくちゃ楽しいっ!」
陽翔が興奮気味に話すと、湊も、
「ああ、こんなシラユキもあるんだな。RYU-SAYの皆さん、ありがとうございます! すごく、なんていうか……」
「ロックだった、だろ? お前らよかったぞ」
「キミらもすごかったよ。よく合わせてきたね」
リュウヤとケイに褒められて少し照れた様子を見せるジストペリドとRYU-SAYたちにスタッフからあたたかい拍手が送られた。
本番はジストペリドの開催宣言のあと、二人がRYU-SAYの初のヒット曲、「I didn't want to be a rock-star! ロックスターになんかなるもんじゃねえ」を熱唱し、続けて最新曲の「Like The Shining Comet」をリュウヤの飛び入り参加でリハーサルどおり歌いあげた。
その後リュウヤ、セイジ、ケイとジストペリドのトークショーをはさみむ。海外ツアーの話題で盛り上がるはずが、途中なぜかセイジがジストペリドを質問攻めにするというハプニングをはさみながらも和やかに収録は、進んだ。
CMを挟む間にRYU-SAYメンバーはシラユキ収録の準備をする。この時メンバーは全員ジストペリドのタオルを隠し持ち、何食わぬ顔で収録カウントダウンが始まった途端に、サッと全員が首にかけた。カメラはすかさずジストペリドのあんぐりと開いた口の映像もしっかりと撮っていた。
生放送は無事収録が済み、後日、ジストペリドのファーストアルバムにRYU-SAYの「Like The Shining Comet」とロックアレンジの「シラユキ」を採用したいという打診があり、リュウヤたちが快諾。アルバム収録にもバンド全員が協力するというコラボ企画が実現した。これにより、リュウヤたちの心にジストペリドが深く刺さることにもなっていく。
一方、ジストペリドの生番組よりも前。ケイと秋本美咲の対談は予定通り行われ、その様子はWebで公開されることとなった。ところがその動画が公開された次の回に、今や幻のユニットとなった「Superiority」の弁財秀人と御堂寺敦司が揃って福島で対談する様子が公開され、視聴者の話題は見事に掻っ攫われる形となった。そのためケイとの対談はそれほど話題になることはなかった。だが、ケイ自身は胸の内を吐露したことでさっぱりしたのか、それ以後その話題に触れることもなかった。
RYU-SAYメンバーは通常の活動状態に戻り、少しずつワールドツアーに向けての準備を進めていた。
年が明け、一月も終わりに差し掛かった頃、久し振りに祐介から飲み会の誘いがあった。壱星も含め三人で先日も世話になったクラブ「藍」へと出向くことになり、リュウヤがクラブに顔を出すと既に祐介がスタンバイしていた。
「やあやあリュウさん、お久しぶりです! お疲れ様ー。さあこちらに来て一杯やってください」
そう言って祐介は隣の席を示したが、リュウヤは何食わぬ顔で向かい側の席へ腰を降ろした。途端に寂しそうな顔を浮かべる祐介のことはさらりと無視をして、ホステスの女性が差し出したコップを受け取った。
程なくして壱星も姿を見せる。二人の間の席に腰を降ろすと、
「リュウさん、祐介さん、ご無沙汰しております。久し振りに三人でのお誘い嬉しかったです」
と爽やかな笑顔を見せた。
今回新たに登場した
Superiorityが登場するのは、
如月文人様の
「再結成」
https://ncode.syosetu.com/n7988ic/
です。エピソードは、
江保場狂壱様のものをお借りしました。
次回、フェスに向けて動き出します、