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9 星は集まる2

ケイへのオファーと、ジストペリドとの共演です。

最高にロックな舞台は目の前です

「来たね」


 珍しく沈んだ声で呟くケイに、リュウヤが問いかけた。


「ケイ、どうした? こうなることが分かっていたみたいじゃねーか」


 するとケイは口元を歪めて聞いた。


「それ、秋本美咲からのオファーだろう?」

「そうです。演奏ではなく、番組で対談して欲しいというものですね」

「出るよ」


 即答するケイに、皆が目を瞠る。


「ケイちゃん、大丈夫? 対談なんて初めてだよね? 俺、ついていこうか?」


 心配そうに声をかけるセイジに、ふと優しい笑みを見せるケイ。


「心配しないで、大丈夫だから。あたしにしか出来ないことだし、いつかきちんと向き合おうって思ってたことなんだよ。ばあちゃんがあたしに託した宿題だと思ってるんだ」


 するとセイジは思い当たることがあるのかふと真面目な顔になると言った。


「そうか。ケイちゃんが決めてるなら、俺は応援するだけだよ」


 リュウヤも腕を組むと、


「ケイが心を決めてるなら俺がとやかく言うことじゃねーな。ケイの気の済むようにすりゃいい。坂元も受けてもいいと思ったから持ってきてるんだろうしな。……俺のせいで迷惑かけたんじゃねーか?」


 ケイは首を振る。


「いつかこういう話が自分に回ってきたら、きちんと向き合おうって決めてたんだよ。正直来ないかもしれないとも思ってた舞台が向こうから来てくれたんだ。精いっぱいやらせてもらうよ」


 シンとマルも心配そうな顔を見せる。重くなった空気を振り払うようにケイが笑みを見せて言った。


「ああ、心配しないでよ。あたしのことじゃなくて亡くなったあたしの母方のばあちゃんのことなんだ。ばあちゃんは東京で亡くなったんだけどね、その前は福島にいたんだよ」


 その言葉に二人もハッとした顔をする。ケイが頷いた。


「ばあちゃんは()()()、老人ホームにいたんだ、浪江町のね」


 遠くを見るような目でケイが続けた。


「あの日、ばあちゃんは黒い雨が降るのを見たらしいよ。東京こっちに来てからも時々うわ言みたいにくり返してた。『黒い雨が降ったからお迎えが来るよ』ってね。……そういうことだから坂元さん、段取りよろしくね」

「わかりました」





 二週間後、ジストペリドのトークショーの日がやってきた。控室にメンバーが入ってしばらくすると、ジストペリドの二人が挨拶に訪れた。


「はじめまして。ジストペリドの如月湊です。今日はよろしくお願いします」

「同じくジストペリドのHinatoです。RYU-SAYとの共演、夢のようです。今日はよろしくお願いします!」

「陽翔は先日のミュージックショーアワーを見てから、ずっとカッコいい! って興奮していたんですよ」

「あのステージ最高でした! 今日は胸をお借りするつもりで頑張ります!」


 仲良さげに挨拶をするキラキラオーラ全開の二人に、リュウヤは好感を持った。きちんとこちらのことを勉強してきている姿勢が見えたからだ。


「リュウヤだ。こちらも楽しみにしていたぞ。お前たちのロックを聞かせてもらおう」

「どもー、俺はセイジ。君らの歌声楽しみにしてるよー」


 セイジに続き、全員が挨拶を返した。

 打ち合わせのときにまた、と言うと二人がジストペリドのロゴ入りタオルと差し入れを置いて退出していく。


「リュウさん気に入っただろ、あの二人」

「ああ、きちんと挨拶ができるやつはいい。おい、このタオル本番で使えるか?」

「一応スタイリストに聞いてみるかい」

「俺はいいぜ」

「俺も」


 なんだかんだ全員彼らに好印象を持ったようだった。その印象はリハーサルでさらに深くなった。ジストペリドはRYU-SAYの曲を完コピしてみせたのだ。歌詞を見ることもなく、間奏のタイミングさえきちんと抑えて見せた。すると調子に乗るのがセイジである。わざとソロを入れてみたり、マルやシンにもアドリブを振る。するとマルが得たりと二人の間に割って入ると、ギターソロを奏で始めた。二人はさすがに驚いて飛び退いたが、マルがニヤリと笑って見せるとさすがアイドル。すぐさまリズムを取って体を動かし、マルの決めポーズに合わせて見せ場もキメて見せた。


 こうなるとリュウヤも黙ってはいられない。二人のハモリに横入りして合いの手を入れ、途中で歌詞を奪う。すぐさまアイコンタクトで振っても、二人は愉しそうについてきた。これぞロックライブ! という仕上がりに、フィニッシュにはスタッフが総立ちの拍手で迎えてくれた。


「やるじゃねーか」

「「ありがとうございます!」」


 一旦小休止を挟み、次はRYU-SAYによるシラユキの披露となるのだが、その前にとリュウヤは二人に声をかけた。


「よう、ちと相談なんだがな……」


 話を聞いた二人は目を丸くし、瞳をキラキラと輝かせて頷いた。


「よし、決まりだな」

「「よろしくお願いします!」」


 ステージの熱はその場にいた全員に伝染し、ジストペリドの門出に大きな華を添える出来事へと発展していくことなど、このときは誰も想像していなかった。



10話目の投稿です。


1000 pv 超えありがとうございます!

ジストペリドとの共演は次回に続きます、お楽しみに。


それではまた二週間後にお会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
ジストペリドはめっちゃ好印象です! 挨拶もちゃんとできて、コラボの前に相手のことを調べて勉強してきてて……こういうグループがどんどん人気出て、先輩たちからも可愛がられて、成長していくんだろうな(*'ω…
[一言] やはり礼儀正しい芸能人って、実力もあったりするものなのでしょうかね。結構芸能人って、荒くれ者が多い印象だったりしますが…。
2024/02/15 11:27 退会済み
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