プロローグ
この作品はいでっち51号さんの「歌手になろうフェス」参加作品です。
フェスの舞台
始まりの物語をお届けします。
これが、夢のはじまりの物語。
ホールの中は鳴り止まない歓声と拍手が響き渡っている。今年のフェスも熱狂のうちに終わりを迎え、後はラストナンバーを残すのみ。観客のみならず出演者のボルテージも最高潮。その全てを叩き込める舞台は観客の熱量とともに仕上がっていく。次第に拍手が手拍子へと代わり、その拍が揃っていくと、ラストナンバーへのコールが始まった。割れんばかりの観衆の声が重なっていく。
明かりの落とされたステージ上には続々と出演者が集まっていた。錚々たる顔ぶれだ。国内だけでなく海外でも名の知れた大物揃い。EARTH HALL は五千人の集客キャパを誇るが、チケットは秒で売り切れるほどの人気で、近くの球場に中継スクリーンも出している。そちらも満杯になる盛況ぶりだ。
インディーズが主流のMOON HALLでさえその人気は衰えない。ラストのシークレットゲストは当日まで明かされないにもかかわらず、毎年立ち見が出る。アイドル主流のSUN HALLは言わずもがな。こちらも野外に中継スクリーンを出しているが、観客の熱気はその場の気温を上げる程だと毎回雜誌に書かれている。
北海道三か所に分かれて開催されるこの夏フェスも今ではすっかり定着し、夏の北海道観光の目玉としても周知されるようになった。正直、継続して開催出来るなどとは発起人の誰も思ってもみなかった。出演メンバーが豪華すぎるこのフェスは、一度限りの夢物語として終わるはずであったなどと、今は誰も信じないであろう。
「こんな馬鹿げた祭り、一度だけなら許されるんじゃねーか?」
そんなふうに始まったこの夏フェスがまさか毎年開催されるようになるとは。
発起人の一人でもあるリュウヤは舞台の中央に案内されながら、当時のことを思い出していた。
── こんな夢みてーな時間は最初で最後だ。そう思ってたんだがな……。
本当に運命とはわからないものだ。
リュウヤがスタンドマイクをひっ掴むと、舞台をまばゆいライトが一斉に照らし出す。歓声の波が一挙に押し寄せる中、突っ切るようにリュウヤの渋い声がほとぼしる。
「We are members of」
マイクを観客側に向けると、舞台の上の他の出演者の声と観客の声が合わさり一斉に叫ぶ。
「「「Meteor Shower!」」」
「Meteor Shower Fes.」
題字はいでっち51号さんからのいただき物です。いくつかいただいたので、ところどころで遣わせていただきます。
沖縄の書道家コハさまの作品です。カッコいいですよね!
メテオシャワーとは流星群のことです。
歌手のこと、昔はスターって言いました。
フェスはそんな星々が集まって大きく輝ける場所。
そして夏はペルセウス座流星群の季節でもあります。
夏フェスで流星群が見られたら最高!
そう思って名付けました。
そのフェスのはじまりの物語を書かせていただけることになり、わくわくしています。
はじまりの物語、楽しんでいただけたら幸いです。