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コンビネーションはずるい

 小さな岩山の隙間でPKを迎え撃つ。流石に前後から同時に襲われるのは辛い。

 どちらにせよ格上を2人相手にする時点で、辛いも何もないのだが。戦える限り、頑張ってみよう。

 ヒューマンファイターがローグ、エルフファイターがエルブン スカウト、だな。どちらも短剣・弓を使う軽装備の戦士職だ。PKの代表職でもあったな。ソロで十分戦える職業だったからかね。

 こっちはPT職のヒーラーだが負ける気はない。勝負に絶対はないからな。

 戦闘開始だ。


 いきなり後ろにいるスカウトがスタンショットを放ってくる。こんな場面でスタンにかかったら、即死コースだ。喰らうわけにいかない。

 体捌きと手甲を使い、スタンショットをいなす。

 いなして正面に向き直ると、ローグがモータルブローをかましてくる。クリティカルヒットしたらこちらも即死だ。

 顔へ向かって打って来たので、ヘッドスリップで避け、左手で弾き右手で顎を狙う。所謂クロスカウンターだ。

 綺麗に入れば言う事無しだったが、あちらも頭をずらし避けられてしまった。


 ローグがバックステップし、少し距離が出来たと思ったら即スカウトが矢を放ってきた。

 矢は俺の身体を狙い飛んで来たので、軸をずらし避ける。が、流石に距離が近い。脇腹を少しえぐりつつ後ろの岩に刺さる。

 痛みを感じる間もなく、再度ローグが突っ込んできた。短剣で勢い良く胸を突いてくる。当たり前だが殺す気満々だな。

 手甲で叩き落とし、そのまま手を跳ね上げバラ手で目を狙い打つ。が、ローグが短剣を持ってない手であっさり防ぐ。

 そのまま手のひらを相手に向け防いだ手を掴もうとしたが、再びスカウトから矢が放たれてくる。

 今度は左足の太もも辺りに飛んできたので、慌てて膝を上げ足甲で受け流す。上手く受け流す事は出来たが、そんな不安定な体勢を見逃してくれる訳もなく、ローグが水面蹴りを打ってきた。

 残った軸足を刈られすっ転びそうになったが、側転の要領で片手を地面へつき、回転して逃れる。立った所にまた矢がくる・・・避け切れず右肩をかすめる。

 

 

 まずいな、これは。全然攻撃の間が空かず、たまに反撃出来ても全く意味を成していない。その上じわじわダメージの蓄積が。何とかしないと。

 ここで殺されて、復活をする気はない。ハク達には死んだ事がばれなくても、こいつらに遺品を持って行かれたら死んだ証拠が残ってしまう。

 その時にどういう影響が出るのか良く分からない。出来る限り魔物以外に死んで復活するところは見られたくない。

 何よりPKに負けるのは、物凄い腹が立つ。やられてなるものか。


 

 と、気合を入れたものの手詰まりだ。常にスカウトが合間を縫って矢を放ってくるし、ローグはそこ迄深く追撃を仕掛けて来ない。

 何とかローグにまともな一撃を入れたいが、攻撃を避けるの前提で攻めて来ているのでどうしても避けられる。

 そうして気づいてみれば、こちらは血まみれだ・・・セルフヒールをかけようとするも、必ず邪魔が入り詠唱が終わらない。

 血を流し過ぎたせいか、段々と足元が怪しくなってきた。仕方がないので・・・こちらは喰らうのを前提で動くか。急所だけでも外せば運が良ければ生き残れる。

 どの道このままでは、ただなぶり殺しになるだけだ。まだハクのエンチャントが残ってるうちにあがいてみるか。



 そうと決まれば、反撃だ。WSの詠唱を始めると相変わらず嫌なタイミングで矢が飛んでくる。今までは必至に避けていたが、腹に飛んで来た矢を避けもせずそのままローグへ突っ込む。

 当然矢は俺の腹を抉り貫通するが、お構いなしにローグの腹へ右手をあてがいWSを放つ。普段なら避けられただろうが、矢を避けもせず攻撃してきたので少し驚いたのだろう。

 ローグの反応が鈍り、こちらも脇腹を抉る事に成功した。ここで逃がしたら何もならない。WSを放った右手でそのままローグの服を掴む。

 寸勁の要領で抉った脇腹へ追加攻撃を放つ。当然の様に矢が飛んで来てるが無視だ。左肩に矢が突き刺さるが気にせずローグを狙う。


 くぐもった声を出し、ローグが蹲る。ここでこいつは仕留める。下がった後頭部へ思い切り振りかぶり鉄槌を放つ。直撃し、地べたにローグがうつ伏せに倒れる。

 また矢が放たれ、今度は右太ももを貫通していく。歯を食いしばり、足を振り上げローグの頸部に踵を落とす。骨の折れる音がした。とりあえず、1人倒したな。

 スカウトに向かいだすつもりで、身体の向きを変え走り出そうとしたが膝が折れてしまった。そこへ再び矢が飛んで来て俺の右肩を容赦なく貫いてくる。



 んん・・・力が入らない。ちくしょう。あいつ迄倒して勝利なのに、立ち上がれない。

 悔しいなぁ・・・ここでスカウトを倒しておかないと、またハク達が狙われる事もあるし、何より俺が復活した場合またPTを組んでも良いものか身構えてしまう。

 こんな所で倒れたく───ない!気力を振り絞り立ち上がろうとするも、スカウトが力を溜めてダブルショットを放とうとしてる所だった。

 まずい。せめて防御位はと顔の前で手を交差し、くるであろう衝撃に備える。その時だった。



 風切り音と共に、スカウトへスタンショットが命中する。スカウトは見事にスタンにかかり、目を回している。



「ハガネさん!ご無事ですか!」



 おぉ・・・まさかのワニ。何でこんな所にいるんだ。その上なんて良いタイミングで現れる奴だ。



「ちょっとお待ちを。今仕留めます」



 ワニが目を回してるスカウトの背後に回り、モータルブローを放つ。見事クリティカルが出たようで、そのままスカウトは倒れた。

 いや、助かった。流石に勝てない所だった。ワニにお礼を言わねば。

 そう思うも声が出ない。あれ、目の前が暗くなってきて、ワニが何かを言ってるのも聞き取れない。

 早くヒールを・・・ダメだ・・・意識が・・・・・・。


 そのまま俺は意識を失い、助けてもらったのに死んでしまった。

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