エルフ=金髪碧眼美少女☆
クエストを受けウェアウルフの討伐に向かったものの、厳しい状況だった。
夕方まで時間いっぱい狩りをしたが、結果11匹しか狩れなかった。
いつぞや狩ったウサギの様にかなり離れて2~5匹の集団で生活している事と、草原と違い木がある為遠くから発見出来ず、発見しても5匹に突っ込んだら、こちらが死んでしまう。
2~3匹の集団を見つけるまでうろつき、それから狩りをする為ペースがとても悪かった。
ウェアウルフの防御力はそこまでないが攻撃力が高く、こちらがローブ装備だけの為、被弾するとヒールの回数が増える。
ヒールを大量に使う為、MP休憩の時間が必要になり狩りをしてる時間が短くなってしまう。
ワニの様にヒラヒラと避ける事が出来れば良いが、俺では受け流すのが精一杯だ。
仲間を見つけないと、ここで暫く暮らす事になりそうだ。別に何日迄に城下町へ行かなければならない訳ではないので、のんびりやってもいいのだが個人的に狩りは効率良くやりたい。
モヤモヤして、楽しめないのだ。
アリアさんに相談して、お金を払ってでもPTメンバーを見つけよう。
どうせならハクと上手くやれそうな女性冒険者が良いが、そんな贅沢が言える程気持ちに余裕がない。前衛ならある程度の人物迄は、許容して参加してもおう。
まずは3人PTになって、PTの経験値取得ボーナスをもらわねば。
そんな事をハクと話しつつ、ギルドへ向かう事にした。
「新しくPTメンバーに迎えるとしたら、ハクはどんな人が良いとかあるかな?」
「私は───出来れば女性が良いです。男性よりは早く打ち解けられると思うので。それと・・・将来ハガネさんと私と上手くやれるような人だとなお良いです」
その将来はPTメンバーとしてなのか、私生活においてなのかはわからないフリをするが、希望はわかった。
丁度そんな人がPTを探してると良いなぁ。
ギルドに着き、ドアをくぐろうとしたところで───男の大声が聞こえてきた。
「もう一度言ってみろ!!」
「何度でも言うが、お前ら如きに私の剣は捧げられん」
「この・・・もう我慢ならねぇ。ちょっと痛い目見せてやる!」
「・・・そんな事が出来るのか?」
そう言われ、余計に男達がいきり立つ。完全に挑発してる様にしか聞こえんな。
周りの野次馬から漏れてくる話を聞くと、どうも5人PTの男達が女性の見た目が良いからか一緒に呑もうと誘った様だ。
それだけで女性が怒ってたらアレだが、お酌をさせてその後宿を取るから来い・・・と高圧的に大人の誘い迄した所で、先ほどの発言をしたみたいだな。
それを聞いて女性を見る───なるほど、誘いたくなるのが分かる程の美貌だ。俗に言う金髪エルフ騎士ですね。同じく宿へ誘いたい!
金髪碧眼美少女の一言で十分容姿を伝えられる。ファンタジー好きには堪らない。
長い金髪をポニーテールにしており、胸元の赤いリボンが目をひいている。それにあの顔だ。
数人の男に絡まれたら怖がってるのが普通だと思うが、どちらかと言えば挑発的な笑みをしている。もしかして、自分から絡まれにいってるわけじゃないよな?そんな好戦的な人ならあの笑顔もうなずける。
装備は・・・フルパーツではないが重鎧をつけているから、多分エルブンナイトだろう。剣と盾が見当たらないが、宿にでも置いてあるのかな。エルフの盾職とか、凄くPTに誘いたい。
その上で、将来ハクと3人でうまい事いけば・・・その時、何故か目の前の男達からではなく、横から殺気を感じた。
恐る恐る横を見ると、笑顔の美少女がいた。
「・・・・・・見惚れてるんですか?」
「いや、早く助けなければと義憤に駆られてるところだ」
「へぇ・・・後で少しお話しましょうね」
「お、おぅ・・・」
あれ、この美少女めちゃくちゃ圧力あるな。綺麗な顔が台無しですよ、お嬢さん。
この後の事を考え恐怖していたが、そんな場合じゃないな。
ハクを後ろに下がらせて、エルフの騎士へ声をかける。
「今晩は。どうみても多勢に無勢なので、お手伝いをさせて頂きますね」
「む、すまない。ただこの様な男共なら、何人居ても問題ではないが」
「では見学させて頂き、少しお手伝いを致します」
「わかった。助力を感謝する」
いや~近くで見るとさらに綺麗だな!!流石男女ともに美しいと言われるエルフ様。素晴らしいです!
もっと良く見ていたかったが、男達が来てしまった。
何故かエルフ騎士ではなく俺の方に4人、エルフ騎士に1人の男が向かっている。
何で俺の方がこんなに多いのか。皆様、怒ってらっしゃるし。馬鹿にした様にとらえられてしまったか。まぁ実際してるんだけど。
女性に対して、あんな態度をしてはいかんよ。
まず男1が顔に殴り掛かってきた。左手で内側へ捌き、背中側に回りつつ横っ腹に掌底を打ち込む。
「ぐふっ・・・」
変な声を出しながら、男1は前のめりに倒れた。
すかさず左側から男2が顔へ殴り掛かってくる。こいつら何でみんな顔を狙うんだろう。そんな大振りじゃ当たらないし、人数いるんだから同時に攻めてくればいいのに。
冒険者といえど、酒が入ればただの酔っ払いだな。
顔をそらしつつ、左手を添え相手の拳を流し、右手でアッパー気味の掌底を顎へ入れる。
「がはっ・・・」
少し後ろに飛びつつ、後頭部から床へ落ちた。凄い音してたけど、大丈夫かな。大丈夫じゃなくても構わないが。
男3がチャンスと思ったのか、後ろから羽交い締めをしてきた。それは・・・悪手だと思うけど。
踏ん張りながら抑えてるので、足を大きく開いている。急所ががら空きだぞ。かかとを後ろに振り上げ急所へ一撃。すぐに手が離れ、男3は沈み込んでいく。
「げぇっ・・・」
男4は様子を伺ってかかってこない。慎重というよりは、ビビったな。
そんな中チラリとエルフ騎士を見ると、男5がうつ伏せで倒れていた。やっぱり強いんだな。
男4も横目でそれを確認し、逃げるか迷っていた。ただ、お仕置きが必要なので、俺の方から近づいて行く。
スタスタ近づくと、男4は慌てて殴り掛かってきた。また顔狙いだし・・・。確かに一撃入れば倒せるだろうけど、捌いてからとか他の攻撃当ててからじゃないと当たらんぞ。
この世界は剣の技術は磨かれてるが、素手はダメだな。まぁ基本魔物と戦う為と、戦争時に鎧を着た相手と戦う為だから、発展しなかったのだろう。
素手だって、鎧通しというロマンにあふれる技があるんだぞ。今度使ってみようかな。
あ、男4は男2と同様に倒したので省略。
床へ男5人が転がってる絵は嫌だな。テーブルとか壊さなくて良かった。弁償するのは大変だからな。
「ふむ・・・貴方は中々強いな。少し手合わせをしないか?」
そう言いながら、目の前にエルフ騎士が来た。
え、お礼とかじゃなく、開口一番挑戦してくるとは思っても見なかったな。いや、断るけど。
「いえ、騎士様には敵いませんので、控えさせて頂きますよ」
ギャラリーからブーイングが起こる。酒のつまみに観戦してるようだな。不満があるなら自分でやってくれ。
「そう言うな。私とやろう!」
ん~色気の無いお誘いだ。俺は再度固辞をしたが───何故か殴り掛かってきた。おいおい。
様子見なのか腹を狙って来たな。身体の軸事ずらし、左手で押さえつけるように下へ力を流し捌いて、再度距離をとる。
この人グーで殴って来てるし、力もかなりこもってたぞ!ガントレットがついている手で殴ってくるとは、危険な人だな。受けていれば、男達と同じように蹲っただろうな。
「おぉ!そんな風に綺麗に避けれるのか!凄いな!ではこれはどうだ!」
追撃のローキックを放ってくる。蹴りを使える人はこの世界だと珍しいな。ただ鉄の足甲を装備してるから、受けたら俺の足折れるぞ。
相手の右ローキックに合わせ、俺は左足を少し上げる。足の裏でストッピングしたりするとエルフ騎士が痛いだろうから、相手の蹴りに合わせて足を引きつつ下方向へ力を逃がす。先ほど手でやった事と意味としては同じだ。ただそんな事をされた事がなかったのか、エルフ騎士はバランスを崩し転んでしまう。
「失礼しました。大丈夫ですか?」
そう声をかけると満面の笑みだ。何か嬉しい事でもあるのか?
「今のは凄いな!自分が何をされたのかわからないぞ!もっと色々見せてくれ!」
そう言って再度襲い掛かってくる。え~・・・まだやるの?最初からお断りしてるのに、聞く耳持たないな。その尖がった長い耳は飾りですか。そうですか。
仕方がないので、怪我をさせないように押さえつけるかな。
しかしその必要はなかったようで、エルフ騎士の足元に風魔法が放たれ、ギルドの床に穴が開く。
どうやら、ハクが我慢出来なかった様だ。
「それ以上ハガネさんに攻撃をするなら、今度は当てますよっ!」
右手を前に突き出し、エルフ騎士にそう告げる。
周りの女性が勇ましい人ばかりで、嬉しくなっちゃうな・・・。
これ、床の弁償いくらかかるんだろうか。
そう言えば…初めて女性を助けたな!必要なさそうだったけど。
これは惚れられて将来二人目の嫁に・・・な訳ないか。殴り掛かって来るような人だもんな。
セラの画像をのせました。