村でやる事
そのまま天に召されるかと諦める気持ちになっていたが、どうも違うらしい。
先程迄顔やら、後頭部やら、腕やら痛かったのが、嘘みたいになくなってる。
「どういう事?」
神父に会った時から、ずっと混乱しっぱなしだ。
わけがわからないよ。キュップイ
突っ立ったまま考え始めたら、可愛いウサギさんが2羽こちらに近づいてきた。
よし、村へ行こう。
俺は脇目も降らず、全力疾走した。
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始まりの村
木の柵に囲われてる村へ近づいたら、頭の中に村の名前が流れてきた。
気持ち悪っ。誰だよ、この声。
始まる処か、ここに来る前に人生終わりそうだったじゃないか。
それにしても全力疾走したが、全く息が切れてない。
若い頃を思いだすなぁ。
一人でブツブツ言いながら村へ一歩を踏み入れた。
と、思いきや村人Aに棒を向けられ止められた。
「待て!通行証も見せずに村へ入るな!」
なるほど。自警団とかなのかな。
ごもっともな事を言ってる。村人Aが正しいのだろう。
しかしだよ?自分の名前すら把握出来てないのに、そんな事言われたって困る。
持ってません!と言って大丈夫かな。
でも嘘は良くない。子供だって知ってる。
お天道様に顔向け出来ない事はしない!
誠実な俺は返事をした。
「・・・落としてしまいました」
そこには汚い大人がいた。
「まぬけな奴だなぁ。まぁ、この数年こんな村で事件なんてないからいいんだけどさ」
じゃあ言うなや!
「とりあえず、手をこっちに」
良くわからんが、右手を出した。握手?
「いやいや。右手出してどうするんだよ。左手出して。まだ若そうだが、ぼーっとしてるな」
若そう?目の前にいるのは20前後の青年だ。
お世辞・・・いらんわっ。
村人Aが呆れた顔で俺の左手を、変な板へ乗せた。
「ハガネか。変わった名前だな。職業はメイジ・・・っと。杖はこれからか。あっちに売ってるよ。犯罪歴は無いみたいだから、今回は無しで入っちゃいな」
あら、良い人だった!
何か凄いメモられてるのが不安になる。通行証ないからかね。
個人情報流失ダメだよ!
ハガネって俺の事なの?変な名前(笑)
色々話したいが、この人の気が変わらないうちに・・・。
「ありがとうございます!」
礼をしつつ、そそくさと村へ入った。
さて、ようやく一息つけるな。
木陰に座り、ちょっと色々情報整理しよう。
・俺はハガネ。
・職業はメイジだ。
・ここは始まりの村。
以上
「ぬわーーっっ!!」
思わず、我が子の前で燃やされたような声が出てしまった。
実際は子供なんて居ないけど。それに嫁さんもいないし、彼女もな。
・・・悲しくなってきた。
情報整理も何もないな。何もわからん。
メイジってゲームの職業か?
まずはゲームと思って考えてみるか。やる事も無いし。
ん~、神官にメイジとして頑張れって言われたなら、転職でもしてたのかな。
神殿外のウサギは魔物か。魔物って事なら、光になって消えてもおかしくない。
何か石ころみたいのも落ちてたから拾ったし。
そうすると俺が光ってたのはレベルアップ的な?
あんな弱いので上がるなら、多分転職したてでLv1→2になったんだろ。
LvUPで回復する仕様なのは良いね。
しかしステータスとか自分で見れないのか・・・さっきの板で名前、職業、犯罪歴が分かると。
うん、ゲームだなこれは。
ゲームとしてはありきたりな設定だからそれは良い。
ただ、俺がここに来るまでにゲームをしていた記憶もなければ、こんなリアルなVR?は知らない。
こんな凄いのがあるなら即買いしてる。
一応考えてみたものの、あまり進展はなかった。
やる事もなく、ぼーっと周りを眺めていたら何処かで見たような気がしてきた。
デジャヴ?
いや、見てるな。何処でだっけ・・・。
懐かしい・・・・・・あ。
これ二十歳の頃にやってたMMOだ。