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野宿は嫌いだ

 心を落ち着かせて、改めて周囲を確認する。


 2匹は完全に俺を狙ってるが、右手から出てきた1匹はハクを狙ってるな。

 今はハクがWS(ウィンドストライク)を撃ち込みつつ、杖を振り回してけん制しているが、そろそろ押し込まれそうだ。

 ヘイトを取りに行くか。ハクが襲われたらこのPTは終わりだからな。


 

 俺にヘイトが向いてる2匹を放置し、右手へ走る。

 ハクを狙ってた奴の目の前に出て、WSを放つ。そのまま接近戦に移行する。


 杖を取り出し、相手の前に出てる足を薙ぐ。しかし、足を上げてあっさりと避けられてしまう。

 ただ、バランスを崩した所へ片足を引っ掻けて、背中からからタックルをかます。八極拳の鉄山靠(テツザンコウ)という技のモドキだ。


 この技は人間ならいいダメージを与えられるのだが、モフモフの毛に阻まれ吹っ飛ばしただけで終わってしまったな。

 だが、倒れてくれれば十分だ。飛び上がり、杖を真下へ突き出し、顔面へ。1匹目は何とか倒せたな。

 ハクが魔法をしっかり当ててくれていたお陰だな。


 しかし当然の如く、背後から2匹が迫って来ていたが、片方はハクが魔法でけん制してくれた。ナイスだ!



「ハガネさん!!」



 頭の位置を横薙ぎで狙って来ていたので、そのまま前方へ倒れこみ転がる。でんぐり返しだ。意外と有効だから、馬鹿には出来ないんだぞ。


 

 直ぐに立ち上がり、空振りした奴の懐へ身を低くしながら潜り込み、立ち上がる勢いそのまま、肘で鳩尾を打ち抜く。

 今度は裡門頂肘(リモンチョウチュウ)モドキだ。八極拳を習った事はないが、武術好きな仲間に教えてもらったのだ。何が役に立つかわからんね。

 肘の衝撃を受け頭を下げたので、次は掌底で顎を打ちあげる。相手の身体が伸びあがった所へ、腹に向け胴回し回転蹴り。

 そのまま、倒れた相手に馬乗りになり、顔面へWSを叩き込む。これで2匹目。


 あぁ・・・後1匹居るのにしゃがんだらダメだな・・・連携が上手く入りそうで、ついやってしまった。

 近づいてきた残りの奴に、思いっきり側頭部を蹴られて吹っ飛ぶ。

 吹っ飛んでる最中にハクからはヒールが飛んでくる。やるなぁ。


 転がりつつも痛みが和らぎ直ぐ立ち上がった時には、ハクがさらに魔法で追撃を入れていた。

 ヘイトがハクに移るんじゃないかと冷や冷やしたが、まだ俺に向かって来る。好都合だ。


 

 左手を前へ出し、右手を腹の横へ。上段からの振り下ろし攻撃をして来たので、左手で上段受けをして攻撃を流す。

 相手の体勢を崩した所へ右正拳突きを。顔へ命中するはずだったのだが、此奴大口開けやがった!

 当然俺の右手はオオカミの口の中へ。

 まずいまずい。また手が無くなる。慌てて詠唱を始めるも、口が閉まる方が早い。やってしまった・・・。


 と、その時背後からハクの魔法が命中して、オオカミの動きが止まった。ナイス!!

 詠唱が終わり口内へ風魔法を放った。頭が吹き飛び、大分グロテスクな事になってしまった・・・。

 ともあれ、これで本土の初戦闘は終わりだな。


 

 ちょっと・・・というより、かなり強いな。このままだとすぐ死ぬ気がする。早く港町へ行って、その後城下町へ。

 装備をまともにしないとダメだ。新しく購入した籠手も足甲も既にダメになってしまった。



「ハク、ありがとう。ずっと助けられっぱなしだったよ」

「いえ、いつも敵を引きつけて、私を守ってくれてありがとうございます!」



 いい笑顔でお礼を言われると・・・なんか恥ずかしいな。

 気にしないで、と軽く流し再び港町へ向け歩き出す。



 PTとしての連携は十分な練度になったが、如何せんこのままペアはキツイ。

 港町で誰かファイター系の仲間を探してみよう。ワニの様な心強い奴に出会えると良いんだが。



 その後テントも無いまま野宿したが、幸いにも夜間に襲われずに済んだ。

 と、言うのも、道沿いに開けた場所があり、そこで商隊が休憩してたから、ご一緒させてもらったんだ。

 護衛の冒険者も居たので、仲間に・・・とも思ったが、ちょっと高圧的な態度で困ってしまった。男3人のファイターのみのPTだったんだが、ハクを気に入った様だ。

 絶対領域は無敵だからな、仕方ないとは思うがこいつらにはやれん。



「よお、お前らはメイジ二人で旅をしてるのか?そんな弱そうな男じゃあんたも不安だろう。こっちのPTに来ないか?」



 誰が貧弱な坊やだ。少しイラっとして反論しようとしたが、その前にハクが口を開く。



「ハガネさんは強いですよ。少なくても、貴方達みたいな人より強いです!」



 何か怒ってますね?ハクさん。俺が馬鹿にされて怒ってくれるのは嬉しいが、挑発するのは良くないぞ。ろくな事にならない。



「こいつが?ローブのちびが俺らより強いとか、笑わせてくれるな。いいぜ、じゃあ素手で勝負してみようか。剣を使ったら、殺しちゃうからな」

「いいですよ!ハガネさんが、負けるわけないですから!」



 おいおい。良い訳ないだろ。何で俺がこんな奴と戦わなきゃならんのだ。

 冒険者が護衛してる商隊の方々は、遠巻きに見ており我関せずだ。だが興味はある様で、皆ガン見してるが。



「じゃあお兄ちゃん、少し遊んでやるからかかってきな」

「すぐ倒しますよ!一発も食らいませんから!!」



 俺の意思は・・・ただ、こうなってしまったら今更ごめんねもないだろう。仕方がない。組手を思い出して、やってみるか。

 だた、相手を怪我させたくはないので・・・怪我をさせない技をちょっと試してみるか。



「では、行かせて頂きます」



 俺は普通にスタスタと歩いて近づいた。男は馬鹿にしたような顔で見ている。負けるとは思ってないだろうからな。

 間合いに入って止まると、怖気づいたと思ったのか不用意に顔面へ殴り掛かってくる。

 こいつ、俺を怪我させ無い様にとか、思ってくれてないのか・・・。なんだかなぁ。


 不用意に突き出された右手を相手の内側に入りつつ右手で捌き、相手に背中を向ける形で回転し左肘を鳩尾へ軽く入れる。

 息を詰まらせ硬直してる間に、伸びきった腕をつかみ背負い投げの様に地面へ叩きつける。もちろん頭から落とさないようには注意した。

 


「うっ・・・」



 息が詰まったところで、背中から落とされたからかなり苦しそうだ。俺がやったんだけど。



「流石ですね!ハガネさん!」



 ハクが手を叩いて喜んでる。そんなに好戦的な人だったっけ?俺が馬鹿にされたせいかな。

 遠巻きに見ていた人達も、おぉ~、とか感嘆の声を出してる。いやいや、止めてくれても良いんですよ。



 倒れた男の仲間は大分驚いていた。まさかやられるとは思ってなかったんだろう。ただ、このままだと追加で襲われそうだ。俺は別に戦いたい訳ではない。



「すみません・・・威力が高くて、思ってたより強く叩きつけてしまいました。流石護衛してる様な冒険者ですね」



 俺は大人だからな。相手を褒めて、丸く収めよう。



「こいつ・・・調子に乗りやがって!今度は俺が行く!」



 あれ・・・挑発したみたいになってしまった。おかしいな。もうお腹一杯なので、遠慮したい。



「2人同時でも負けませんよ!!」



 ハクは俺を殺したいの?どれだけの自信があるんだか。後、戦うの俺なんですけど、あまり怒らせないでね。



 見事に挑発に乗り、2人とも襲いかかってくる。仕方ないか。

 

 流石にPTを組んでるだけの事はあり、魔物より連携が取れてるな。ちゃんとお互いが邪魔にならない位置取りをして近づいてくる。

 同時に来られると困るので、いつもの様に片方の影に隠れる位置に移動する。

 手前の男が殴り掛かってくるのは避けつつ前に出て、男の影から後ろの奴を狙う。

 

 後ろの奴の横へ行き、足をかけ肩を掴み背中から倒す。自分に来ると思ってなかったのか、抵抗なく倒せたな。背中を地面に打ちつけむせている。

 その間に先に襲い掛かって来た方が後ろから殴り掛かってきた。最初の奴と同じで、内側へ避けそのまま肘を入れ同じく投げ飛ばす。

 こうして3人は仲良く地面でむせている。殴られなくてよかった。



「ほら!見ましたか!ハガネさんは強いんです!」



 やめなさい。流石にこれ以上は戦いたくない。



「素手なら私の方が慣れてるだけですよ。剣を持ったら、とても敵いません」



 この人達も、軽い気持ちで襲いかかってくるのが悪い。俺が弱かったら殴られる上に、ハクを連れてかれてるかも知れないからな。少しは反省して欲しい。



 その後3人PTは流石に気まずかったのか、もう絡んでくる事はなかった。早くここを離れたい・・・。

 不安なまま、少し離れた場所で寝る事にした。

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