魔物は狩る
俺は人並み以上にはゲームをやってきたと思う。
一時期などMMOにどっぷりはまり、危なく社会から消え去る所だった。
だから急な戦闘でもいける・・・わけがない!
そんな事を考えてる場合じゃなかった。
また顔面に向かって突っ込んでくるので、反射的に体を反らし横へ避けた。
もう一度頭突きを受けたら、心が折れてしまう。
某国民的RPGに出てくるウサギのように、角が生えてたら死んでたんじゃ?
逃げるか倒すか。
身体が軽いので何とか逃げれるかも・・・と、希望的観測が頭を過ったが、無理だろ。
野生の動物より早く走れる人間なんて、早々聞いた事がない。
持久力としては、マラソン選手とかなら一部の動物より優れてる場合もあるようだが、生憎運動など最近は全くしてない。
死にたくなければ、倒すしかないのか。
蚊とか小さい虫位なら殺した事はもちろんある。
しかし、意思疎通が出来る様な動物となると、経験がない。
別に肉が食えないとかではないが、自分で命を奪うというのは・・・。
そんな場合じゃない!また飛び掛かってきた。
反応が遅れ避けれなかったが、身体の前で手を交差し防御?は何とか間に合った。
ガッ!!!
・・・ドサッ
結果、また後頭部からぶっ倒れた。
腕と頭が、ジンジンする。
無理無理!!
選択の余地無し。
何とか起き上がり、ウサギを見つめる。
が・・・何の武器もない!
見渡す限りの草原で、木の枝も無ければ石すら見当たらない。
素手か・・・。
鍛えてた頃なら兎も角、最近持つ重たい物なんて、ビール樽ぐらいだぞ。
だが、やらなきゃ殺られる。
「・・・殺す」
自分に言い聞かす為にも、声に出し構えた。
ビビッて逃げたりしないかな~?と思ったがそんな気配はない。
コイツは今の所、顔に飛び掛かってくる事しかしてこない。
なら・・・。
ダッ!!
予想通り地面を蹴って、顔へ。
右足を下げ左へ避けつつ、足→腰→右肘へ力を伝え、全力で横っ面に叩きつけた。
「おらぁぁぁ!!」
「ピッ!」
変な声を出し、勢いそのままヘッドスライディングのように地面を滑っていった。
倒れて動かなくなると、そのまま光となり消えていった。
「エ・・・ヨワクナイ?」
こちらは決死の覚悟で挑んだのに、一撃?
いや、強いよりいいんだけど。
こうして、初勝利を飾る事が出来たが、安心したのも束の間。俺の身体も光に包まれている。
「え、勝ったのに俺も死ぬの?何故にっ!」
納得がいかない・・・。