イケメンエルフ+金持ち=無敵
「ヒールありがとうございます!」
「もう少しだけ耐えて下さい!」
ヒールを2回かけた所で、スケルトン2匹がこちらへ来たが、2匹ずつなら余裕でいける。
いつも通り風魔法を使い攻撃してから接近戦で、ダメージを受けずに2匹を倒す。早くあのエルフを助けないと。
しかし、PTメンバーに置いて行かれてから、大分時間が経ってるのに生きているとは・・・予想外ではあるが、来た甲斐がある。
残りの魔物が4匹になった途端に、何処からか取り出した短剣でエルフが反撃を始めていた。
HPも回復しただろうから、回避タンカーとして頑張ってもらおう。
俺は遠距離から風魔法を唱える。タゲもこちらに来ず、ただ魔法を撃つだけの簡単なお仕事だ。
残り2匹になった所でMPが切れてしまった。後は肉弾戦だな。
エルフの背後に居たスケルトンの後に回り、足甲の部分が当たる様側頭部へ蹴りを放つ。
蹴りを受け、横にぶっ倒れた所に杖を頭に振り下ろす。これでラスト1匹。
と、思ったらエルフが自分で止めを刺していた。
思いの外、あっさりと戦闘が終わったな。
「いや~助かりました。流石にダメかと思ってましたが、粘って見るもんですね」
「間に合って良かったです。色々話したいのですが、まずは外へ出ましょう」
また再POP(魔物が再度出現)して囲まれたら堪らないからな。
それにしても、このエルフの方は味方に置いて行かれたのに軽いな。余り気にしてないのか?意外と大物なのかもしれん。
地上へ戻る時にも当然魔物の居る小部屋を通るが、流石エルフファイター。
お互いダメージを受けないのでヒールの必要がなく、火力2人で行動してるようなものだから、リンクしなけりゃ余裕だな。
この人を入れ、ハクと3人PTなら1F最奥の部屋位まで余裕でいける気がする。想像するだけで楽しいPTになりそうだ。
ようやく外へ出る階段迄着き、登って行く。光が見えてきて少しほっとした。助けに行って死ぬとか、間に合わなくて既に死んでるとか格好悪いもんな。
「ハガネさん!!」
「心配かけてごめんな、ハク」
おっと。ハクが泣きながら抱きついてくる。内心バクバクだが、何もない風を装う。惚れられてると勘違いしてはいけない。
そんな勘違いをすれば、後で恥を恥をかくのは俺だし、ハクにも迷惑がかかるからな。
「おぉ!無事に戻ったか!」
「えぇ。この方が強かったので、何とかなりましたよ」
「ソロであんな奥まで行って助けて来るとか、どんなメイジなんだよ・・・凄ぇな」
「大体あの装備変だよね。なんで籠手に足甲?ファイターじゃあるまいし」
「強いんだろうけど、変わってる人だよね」
なんかエルフのPTメンバーがひそひそ言ってるな。変とか言ってるの聞こえてるからな!
「ワニさんすまなかった。あのままだと全滅すると思い、見捨てて逃げてしまった。一発ぶん殴ってくれても構わない」
「いえ。あの状況なら仕方がないですよ。助かったし、気にしなくて良いですよ」
仏みたいな人だな。普通なら金銭とか要求しても、おかしくはないと思うが。まぁ本人が良いって言ってるんだから、俺から言う事はない。
その後もワニさんへ4人は謝っていたが、穏やかに話が終わり帰って行った。一件落着だな。
さて・・・PTに勧誘してみるかな!
しかし、俺は女性に助けられ、俺が助けに行くのは男か・・・なんだかなぁ。
「貴方も助けて頂きありがとうございました。改めてお礼を。私はワイルド・ニート・ニーベルングと申します。皆様は親しみを込め、ワニと呼んでくれております。是非貴方様もそうお呼び下さい」
ワニって名前の時点で、この世界にも爬虫類の鰐が居るのかと思ったが、違うようだ。
親しみを込めてじゃなくて、長くて呼ぶのが面倒だからワニって呼ばれてるような気がする。
大体、頭文字取るならワニニだろう。呼びづらいからワニさんでいいが。
この世界に来て、初めての苗字と名前で分かれてる人だな(ハク以外の名前は知らないが)。
貴族とかそういう系なのかな。ボンボンか!金持ちめ!
イケメンで金持ちとか勝ち組だろ!よく見れば装備もNグレ最高級で回避+の軽鎧だし、短剣+弓迄持ってる。親に買ってもらったのか。ずるいぞ!
こっちは初期装備にゴールド0スタートだったのに・・・。
ワニさんは何も言ってないが、勝手に嫉妬をしてしまった。いかんいかん。
今はハクもいるし、装備だって整えたからな!負けてないぞ。
「ご丁寧にありがとうございます、ワニさんと呼ばせて頂きますね。私はハガネと申します。こちらは、私のPTメンバーのハクです」
「よ、宜しくお願い致します・・・」
ハクを紹介したが、人見知りが発動してるな。
「ハガネさんに、ハクさんですね。この度は重ねてありがとうございました」
貴族や執事とかがやりそうな礼とでもいえばいいのか、右の手のひらを胸に当てお辞儀をしてきた。礼儀作法なんて良く知らないが、育ちが良さそうだな。庶民には難しい。
「いえいえ、お気になさらず。そういえば・・・ちょっと気になったのですが、あの戦っている感じだと入口迄走ってしまえば、ワニさん一人でも助かったのでは?」
「考えなかった訳ではないですが、魔物を倒さず他の部屋に行き別PTの方が居たら、魔物がそちらにいき迷惑をかけてしまうので出来ませんでした」
「まぁ確かに・・・素晴らしい判断と回避力だと思います」
この人はお坊ちゃん+良い人なんだな。人の死が軽いこの世界で、他人を思いやれるとは素晴らしい。
ハクと相談して良ければ、この人を是非ともPTに加えたいな。
「では、私はこれで。それと、せめて食事位は助けて頂いたお礼としてお誘いしたいのですが、日が落ちる頃に宿の酒場で如何ですか?」
「ありがとうございます。喜んで御相伴に預からせて頂きます」
「それでは、また後程」
部屋に戻り、ハクとPTの件を話してみよう。
2人っきりが良いから嫌です!とは・・・言ってくれないだろうな。
そんな益のない事を考えつつ、始まりの村へ戻る事にした。