冒険者ギルドへ討伐報告
突発的な強制イベントがあったものの、漸く解放されザイオース城下町に入る事が出来た。
民衆からはやいのやいの言われたが実害はなく、通してもらう事が出来た。早く冒険者ギルドへ行き、オルフェン討伐の報告を終わらせ、宿で風呂に入りたい。
冒険者ギルド迄の道のりは、特に何もなくたどり着く事が出来た。
ここを出発して数日しか経っていないのに、凄い久々な気がする。あの時全員で帰ってくると話をしていたのに、大分人数が減ってしまったな・・・。いかんいかん、今更へこんでいる場合ではない。
まずは冒険者の義務を果たそう。
冒険者ギルドにはオルフェン討伐に参加した人達は居なかった。先に帰ってきているはずだが、やはり疲れて皆休んでいるのかな。まぁ気持ちは分かる。俺だって休みたいからな。
カウンターへ近づくと、俺を見つけた受付嬢が凄い笑顔になり、このカウンターに来いとばかりに手招きをしている。
特に断る理由も無いので、誘われるままその場所へ向かった。
「お帰りなさい!楽園の管理者、ハガネさんですね!姫様に求婚されたんですか!?」
何でつい先ほど街の外であった出来事を、冒険者ギルドのカウンター内にいる受付嬢が知っているんだ・・・。あんな内容を早馬でも使ってギルドに伝えてる暇人でもいるのか?
「ただいま戻りました。えっと・・・つい今しがたの出来事を、何故ご存じなのでしょうか?」
「それはですね~。今日の今頃には、オルフェン討伐の主催者であるハガネさんが戻ってくるはずだ、とギルドマスターが話しておりまして。英雄の凱旋ですからお迎えを出したんですね。で、事の成り行きを見守っていた冒険者が、帰って来た事と姫様とのやりとりを教えてくれまして。それで・・・ハガネさんは結婚して王族になるんですか!ハガネ様とお呼びした方が宜しいですか?今まで沢山口説き落とした楽園の管理者のハーレムメンバーの方たちはどうするんですか?修羅場ですね?訓練場の時みたいに、集団リンチを受けるんですか!」
いやいや、グイグイ来るな、この娘は。後、お迎えに来てた冒険者は、俺を置いてけぼりにして、噂話だけ持ち帰るんじゃないよ。何をしに来てたんだか・・・。
ゴシップ好きの受付嬢なのかな。今日が初対面のはずだが、噂話で俺の事を知っているんだな。
個人情報保護法とか、この世界にはない。無いが───いくら何でも色々と筒抜け過ぎでしょ。
「いえいえ、多分もの珍しさから姫様からそのような話を頂きましたが、私は平民。王族の、しかも第一王女様と婚姻など恐れ多いですよ。王様も承諾する訳がありませんので、私が姫様と結婚など御座いませんよ」
「え、平民なんですか?」
「ん、そうですよ?」
そう伝えるも、何か納得をして無いような顔をしている。何でだろうか。ああ、BとかAランク冒険者とかだと思ってるのかな?確かにBランク冒険者なら、男爵の地位と同等と言われているからな。
そうだとしても、ここ迄俺の個人情報を知っていて、冒険者ランクがCだって事を知らないとかあるのかな。
仮にAランク冒険者になれば、子爵の地位と同等だ。だが姫様には釣り合わない。子爵でも王族と婚姻関係を結ぶには足りないだろうなぁ・・・。最低限伯爵位迄上り詰めなければ、王族とは結婚出来ないと思う。
「あ、そっか。今帰ってきたばかりですもんね。お話はまだ伝わってないと。この後ギルドマスターと話をするんですもんね」
そうニヤニヤしながら受付嬢が伝えてきた。どういう事だ。確かにギルドマスターとはこの後報告の為に話すが、姫様との婚姻どうのこうのはついさっきの話だし、関係ないとは思うが。
「じゃあ、マスターが待っているので、ギルドマスターの部屋までご案内しますね♪」
「はい、お願いします」
何にしても早いところ報告をしてこよう。やる事を終わらせないと、ゆっくり出来ないからな。階段を上がり、ギルドマスターの部屋の前へ着いた。
受付嬢がノックをし、中へ声をかける。
「マスター。楽園の管理者ハガネさんをお連れしました」
「おう、入ってくれ」
中からマスターの声が聞こえ、受付嬢がドアを開く。
「お、英雄様じゃないか。良く生きて帰ってこれたな。討伐成功おめでとう」
「冒険者ギルドから沢山の御支援頂き、ありがとうございました」
実際冒険者ギルドの助けが無ければ食料の輸送や、ドロップ品の回収など、ここ迄スムーズには出来なかっただろう。その点についてかなり感謝をしている。ギルドマスターの権限で出来る限りの事を、この人は行ってくれた。恩を受けた事を忘れず、しっかり返していかないとな。
「今回の事はザイオース城下町のギルドマスターとして、とても鼻が高い。何せ何処のギルドですら、大型レイドボスと言われている相手は、放置が基本だ。それを今回、冒険者ギルドの全面支援で討伐を成功させてくれた。だから恩を感じる必要などないぞ。うちにも相応のメリットがあったからな。討伐メンバー募集費用の残りは成功のご祝儀で半額に。それの残った分はドロップの分配から引いておくから、支払いはいらないぞ」
「何から何まですみません。ありがとうございました。マスターに相談して良かったです。分配に関しては事前にお話ししたように、亡くなった方の分も等分にして、遺族に受け渡しをお願いしてもよろしいでしょうか」
「おう、その位任せて置け」
ありがたい。俺個人で家族を探して渡すのは現実的ではないから、受けてくれてとても助かる。
後はマスターに討伐開始から、討伐成功迄の道筋を伝えた。これで俺の主催者としての仕事は終わりだ。
「なるほどな・・・良くオルフェン相手にその状況で勝てたもんだ。一応先に帰ってきていた冒険者から、概要は聞いているが随分謙虚に話すものだな。どの冒険者もハガネの活躍を口々に伝えてきていたぞ」
「いえ、参加して頂いた皆様の強い心と協力が無ければ、到底討伐は出来ませんでしたので。私は皆に挨拶をして頑張ろうって言っただけですので」
「そうかそうか。うむ、報告は受けた。これで主催者の仕事も終了だな」
そう言ってくれたので、マスターにお礼を伝え帰ろうとしたのだが、呼び止められた。
「おいおい、まだ帰るのは早いぞ。これから討伐報酬の話をするから、もう少し付き合ってくれ」
まだ他に話す事があったかな?早く休みたいが帰る訳にもいかず、続けて話を聞く事にした。