番人の討伐が終わって
ブックマークが50人になりました。皆様、ありがとうございます!
暫く喜びを噛みしめていたら、漸く身体が動くようになってきた。いつまでもハクとセラに抱き留められているのは、流石に恥ずかしい。個人的にはとても嬉しいけど。
「ハク、セラありがとう。周りを見てきても良いかな」
「もう起き上がるんですか?気をつけて下さいね」
「なら私が護衛をしよう。オルフェンは居なくなったが、全ての魔物が枯れた訳でもあるまい」
ハクに起こしてもらい、セラに護衛をしてもらい、俺は周囲を確認しにいった。確認しなくたって、酷い状況なのは想像がつく。
何のスキルか分からないが、オルフェンの身体が光って周囲に広がり、甚大な被害を出していた。
爆心地である、オルフェンの居たであろう場所には何も残っていない。あるとしたら、俺の血の跡ぐらいだな。
そこを改めて確認し、良く倒せたもんだなと、まだ現実感がなかった。相手のHPが少なかったお陰もあるが、何処か信じられない。
人に見せる様な戦いなどする余裕も無く、思い返せばかなり酷い戦闘だったと思う。誰にも見られてないと思いきや、うちのアタッカー達とかには見られていたみたいだ。
中でもハンナがドン引きしていたのが印象的だったな。まぁ気持ちは分からなくは無い。ローブ着たヒーラーがレイドボスとタイマンしてるだけでもあれなのに、相手の目に手を突っ込んで叩きつけられながら魔法を撃ち込んでいるんだもんな・・・。
正直人としてどうかとは思う。もうあんな事はしない様にしよう。
歩き回っていると、やはり死んでる人も見える。だが───嫌な言い方だが、思っていたよりも死んでる人が少ない。
とも思ったが、俺が気絶している時間が長かったのか。胞子が先ほどは全て吹き飛ばされていたが、今はまた舞い戻っており胞子の海が元に戻っていた。
きっとこの中には沢山いるのだろう。その証拠にここから見る限りでは誰も見えないが、人が居るであろう場所に知人なのかしゃがみ込んでいる。
中には泣いてる人もおり、近しい人を失ってしまったんだな・・・。これは全て俺の責任だ。今後俺に対して何を言われようとも、受け入れる覚悟は出来ている。
もちろん討伐隊を結成し、ここへ来るのを決意した時には人を死なせるつもりなど無かった。
だが、この世界が甘くない事は、十分身に染みていたので死ぬ危険性は全員に良く伝えた。けど、伝えれば死なせても良い訳じゃない。
最悪の事態を何度も想像し、警戒はしていたが、その考えをオルフェンに上回ってしまわれた。俺の落ち度だ。
せめてもの慰めとして、討伐に成功した事だけが良かった・・・ぐらいか。
あ、そう言えばドロップアイテムはどうだったんだ?先ほどオルフェンの立っていた場所を確認したら、本当に俺の血の跡ぐらいしかなかったぞ。
まさか・・・何も出なかったのか?
もちろんゲームだって100%良い物を落とす訳ではない。毎回分配金額が前後する事など当たり前だった。それにしても、何かしらはドロップしていたが・・・この世界はそんな事迄厳しいのか?
募集に使った費用がまだかなり残っている。のは、通常の狩りで貯めて返済すれば良いとして、これでは参加者が得るものが無い。
経験値は入りレベルアップはしているかもしれないが、それだけでとても苦労に見合わない。初レイドボス討伐者!の肩書は手に入るだろうが。
何より死んでしまった人の家族等に、何も渡す事が無いと言うのは厳しいな。遺族がお金を欲しがってる訳ではない。
死ぬほどの想い───実際に死んでしまって、その人が残せた物が名誉だけでは・・・家族も浮かばれない。せめてお金でも良いから渡してあげたい。
人によってはそれで墓を建てたり、何かを購入し残したり子供に使ったり・・・。
借金してでも配るべきだな。それが主催した人間の努めな気がした。
今回討伐隊に参加してくれた人は100人位。今生き残っているのは・・・・・・見渡す限りでは60人前後だろうか。40人も死なせてしまったな・・・。
これからサポート組みが、馬車と共に迎えに来てくれるはずだ。行きは10台の馬車にぎゅうぎゅう詰めだったが、帰りは広々としちゃうなぁ。
嬉しいが申し訳ないのが、うちの血盟員は誰1人として欠けていなかった。オルフェンの班に攻撃の時に、俺の声に誰よりも早く反応し、地面に伏せ防御態勢をとっていたそうだ。
俺が参加してる人達から、もっと信頼を勝ち取れていたら、ここ迄の人数が死ななくて済んだのかも知れないな。
もし、今後もレイドボス討伐の主催を行う時に、俺の信頼度はどうなのだろうか。
今回討伐はした。成功する事が出来た。事実だけを見ればそうなるだろう。そこだけを切り取れば信頼を勝ち取り、俺の名前で主催をすれば人も集まり、指示が通りやすく討伐に期待も高まるだろう。他のレイドが居るかどうかは知らないが。
ただ、被害は甚大だ。下手をしたら死神や虐殺者とか、そんな2つ名が俺についたとしてもおかしくはない。その時にはとてもではないが主催者など出来ないだろう。
人は集まらないし、もし集める事が出来たとしても、指示が通るとは思えない。
そんな事を考えつつ歩いていると、ギンナルさんに呼び止められた。