お手伝いのありがたみ
これは死ぬかもだが、死中に活あり。諦めなければ、何とかなる時もある。
痛みをこらえ腕を上げ、追加で現れたゴブリンに魔法を放つ。腹に命中し、一匹がのたうち回る。その間に近くへ来た奴が棒を振りかぶる。
左手で受け流そうとするも、力が入らない。仕方なく頭を傾け、肩で受ける。
「痛ッ!」
痛みを感じ視線を下げると、狼がぶら下がっていた。
ゴブリンの攻撃を受けてる間に、狼が脇腹へ喰らいついてきたのだ。肘の攻撃では力も入らない為、痛みをこらえ喰いつかせたまま詠唱し、顔面へ撃ちこむ。
腹の肉を食いちぎりながら吹っ飛び、光になった。出血の量がヤバい。
あ・・・後頭部へ棒の一撃を受けてしまった。狼に気を取られて、無防備なところへ受ける事になった。あまりの衝撃に、目の前がチカチカする。思わずうずくまり、頭部を守る。
すかさず右腕に狼が来て、俺の二の腕から先を持っていった。木の籠手も一緒に。
「あぁぁぁぁぁぁ!」
声を出した所で何もならないが、あり得ない程の痛みに我慢が出来なかった。
その間にもゴブリン2匹から袋叩きにあう。
このまま死ぬまで殴られたくない。
気力を振り絞り、左手一本で正面のゴブリンにタックルをかます。馬乗りになり、左手を口の中へ突っ込んだ。
「ウィンドストライク!!」
口内で魔法を放つと、ゴブリンの頭部が四散する。後1匹ずつ。
段々考えるのが億劫になってきた。血を失い過ぎてるせいか、目の前がどんどん暗くなっていく。
また狼が駆けてくるのが見える。先ほど引きちぎられた右脇腹へ再度食らいつかれた。
「ぐぅぅぅぅ・・・」
痛い処ではないが、この機会を逃すわけにはいかない。狼の顔面に魔法を放ったところ、先ほどの狼と同じく俺の肉を引きちぎりながら飛んでいく。
あぁ・・・魔力もこれで尽きたな。せめてヒール分を残せば良かったか・・・いや、それでは倒せなかった。後1匹。
その瞬間に正面から押し倒される。喉元への嚙みつきだな、これは。俺片腕だけど、どうしよう。
とりあえず左手で噛みつきを受けたものの、何も出来ない。木の籠手がミシミシと鳴ってる。
左手もなくなるのは嫌だなぁ・・・。何処か他人事のように考えていた。
その時だった。
「ヒール!」
凛とした声と共に、暖かな光が俺を包んだ。どうやら誰か来てくれたようだがそちらを見ている余裕はない。なんといっても、未だにゴブリンが上に乗っている。籠手に喰いついたまま離してくれない。
でも、腕に力が戻ってきた。
・・・まだやれる!
ブリッジの様になりゴブリンの態勢を崩し、右へ転がりゴブリンへ馬乗りになる。
首を真上から締めつけ、叫んだ。
「魔法を!!」
「はい!」
伝わるか不安だったがすぐに詠唱を始めてくれたが、早くしてくれると助かる。
いかんせん片手だし、HPも全回復には程遠い状態だ。ゴブリンが下で暴れ続けており、抑えるのが難しくなってきた。
「いきます!」
素早く後ろへ転がり、離れた瞬間に魔法がゴブリンへ命中する。
「ギィー・・・」
最後の1匹も光になり消えてった。
はぁ・・・ようやく終わった・・・。経験値も魔石もうまいが、片腕と釣り合うかは何とも言えないな。
冒険は出来たが代償がでかすぎた。助けが入らなければ、間違いなく死んでたし。
お礼を言わなきゃ。
俺は声のした方へ視線を向けた。