オルフェンとの戦い その3
あれからセラにずっとメイン盾をしてもらい、ひたすら全員でオルフェンのHPを削り取っていた。
予想通り残り4本の腕の内、また2本の腕が地面に落ちた。全員で総攻撃をしているお陰ではあるが、眷属に比べたらそこ迄オルフェンのHPは多くないのかも知れない。
オルフェンの腕が2本になり、攻撃パターンが減った為か、多少なりともセラは受けるのが楽になった様だ。それでも被弾は増えているが。
「セラ、その調子で頼む!」
「任せておけ!」
声にも張りが戻ったな。今の雰囲気であれば、もう少し時間をかければ討伐出来そうな雰囲気だ。PT全体に活気が戻ってきた。
しかし、この世界は甘くない。厳しい世界という事を、何度目か分からないが、再認識した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何故かオルフェン後方にいる、アタッカー集団から叫び声が上がる。叫び声と言うより悲鳴に近い。俺はセラと共にオルフェンの正面側にいるので、良く見えない。
「ギンナルさん!何がありましたか!」
「腕・・・そう、オルフェンの千切れた腕が眷属になって、4匹出てきた!!!」
な・・・そんな事があるのか。千切れた腕が再生とかしただけでも驚くが、それが眷属になるとか・・・くそっ!そんな設定ゲームじゃなかったぞ!!
と言うか、この疲労困憊の状態で、眷属が4匹も湧くだと!眷属は当然倒さなければ、アタッカー達がやられてしまう。だが、そちらに戦力を割けばオルフェン討伐に、さらに時間がかかってしまう。
そんな事をしてる間にセラが死んでしまう。考えが纏まらない。しかし、何か指示をしなければ、このまま壊滅してしまう。思考も足も動かなくなっていると、セラから声がかかる。
「ハガネ、あちらへ行って来い。私はこいつとまだ遊んでいられる」
息も絶え絶え、何度も血が流れその度にヒールで回復し、鎧や盾は欠けているところが目立つようになったセラが、そんな事を言ってくる。
分かったよ・・・俺も自分のやるべき事をやってくるよ。ありがとう。
「はーさん!ここは私とレナさんで何とか耐えます!行ってきて下さい!」
「そうです!任せて下さい!」
MPがカツカツの癖に、ユイとレナが俺を送り出そうとしてくる。お言葉に甘えさせてもらおう。
「皆、頼む!行ってくる!」
俺はそう皆に声をかけ、オルフェンの背面へ向かった。
そこ迄遠い距離ではないので、すぐ現状の確認は出来た。そこは阿鼻叫喚だった。
何の準備も無いまま、急に眷属が出てきたので、アタッカー達は右往左往していた。漸くパラディン、テンプルナイト、シリエンナイトが眷属3匹のタゲを取り終わり、少し安定した所だった。
だが、眷属は4匹存在している。1匹フリーの眷属が、人混みの中を縦横無尽に動き回り、手近な者を人とは違う腕力で、かたっぱしから跳ね飛ばしている。
パット見だが、既に10人以上は死者が出ている。それと、生きてはいるだろうが、うずくまり戦線から離れようとしている者も少なくない。これは・・・撤退も視野に入れないとダメかもしれない。
俺は一先ずうずくまり、まだ息のある者へヒールをしながらギンナルさんへ近づく。
「ハガネさん、任されてたのにゴメン!タゲ取りが間に合わず、被害を出してしまいました」
「いえ、何とか立て直してくれただけでも感謝です」
盾3人にはヒーラーがついているが、とても追いついている様には見えない。俺もヒールに参加したい所だが、そんな場合じゃないな。何とかあの3人には耐えてもらおう。
暴れまわっていたフリーの眷属へ向かい走りだす。目の前で死者がどんどん増えていく。いい加減止めないとダメだ。
俺はWSを放ち、こちらへ注意を向ける。幸いなのか、まだ誰も攻撃を仕掛けて無かった様で、直ぐにヘイトがこちらへ向いた。
眷属が真っすぐにこちらへ向かってくる。
「俺が1匹受け持ちます!その間に他の3匹を倒して下さい!このままじゃ討伐も撤退も出来ない!!」
眷属の攻撃を捌きながら、アタッカーPT達へこいつらを倒す様に伝える。ここが正念場だ。これ以上動けない者が出たら、どうにもならなくなる。まずはこいつらを倒してしまおう。
眷属の攻撃を捌きつつ関節を狙い打撃を入れ、時間稼ぎの為にも眷属を投げ、立ち上がる迄の時間を稼ぐ。直撃を受けなければ俺は死なないが、眷属を倒す事は俺一人ではほぼ不可能だ。
あの人数で攻撃して、あれだけ倒す間に時間がかかったのだ。ソロで倒すなら、これから一撃も喰らわず、明日まで攻撃し続けて倒せるかどうかなので、現実的ではない。
今は、他3匹を倒してもらう時間が稼げれば良いと割り切り、眷属の攻撃を捌いていく。その間も近場にいる者にはヒールをかけていく。結構辛いが、セラに比べたら余裕だ。
早く倒して、オルフェンへの攻撃を再開するか、状況によっては全滅する前に撤退指示を出すかしないと、討伐出来ずただ全滅するだけになってしまう。
敵討ちに来て返り討ちになる上、参加してくれた人達をこれ以上死なす訳にはいかない。




